第13話 絵(1)

「その絵は、アイツが描いた絵だよ」、


「松原、よく気がついたな?」と。


 俺は松原へと告げ、尋ねる。


「俺自身も、その絵が壁に張ってあること自体も忘れていることが多々あるのに。松原、お前はよく気がついたな」


 俺が部屋の壁──。


 それも四隅に張られているアニメキャラクター風の、女性の顔の絵なのだが。


 この場にいる者達──。


 松原以外は、俺も含めて全然気にもしていなかった絵のことを。


 松原は自身の両目で捉え、口に出したから。


 俺が松原の観察力を褒め称えると。


 あいつはいきなり、『そうか。あっ、ははは』でなく。


「ごめん、新作悪かったよ。変な事を俺はお前に聞いてしまったな。本当にすまない」と。


 松原は俺に対して深々と頭を下げ謝罪をしてきたから。


 俺は松原に、「気にするな」と、笑いながら告げ。


「松原、頭を上げてくれ」と嘆願もした。


「新作?」


「ん? 何だ、秀樹?」


 俺には頭を深々と下げている松原に対して。


 俺は頭を上げてくれと嘆願をしていると。


「絵が未だ部屋に張ってあると言う事は。新作、お前は、未だ彼女の事を気にしていると言うか? 未だ想っているのか?」

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