第6話 女性の啜り泣き(5)

 俺は大変に不満のある声音で、親父とお袋へと尋ねつつ。


 部屋の扉のチェーンロックをイライラしながら開け始めると。


 玄関の外から。


 パタパタと、人が走り出した音が俺の耳へと聞こえてきた。


 だから俺は慌ててチェーンロックを外し、玄関の扉を開け、白い寝間着……。


 そう、いつもそんな薄着の容姿で、俺の許までくるけれど。


 良く警察に職務質問をされないな、と。


 女! 良く、そんな薄着の、妖艶な格好でここまできて。


 良く変質者達から痴漢! 凌辱行為に遭ったりしないな、と。


 俺は思いつつ、部屋の扉を開け、勢い良く、部屋から飛び出ると。


俺に嫌がらせをする女性は、もう既に階段の出入り口付近にいるから。


 俺は女の背に向け。


「お、おい! お前! ちょっと待てよ」、


「お前は一体誰なんだよ?」


 俺は深夜の零時が回っていようがお構いなし。


 そう、近所迷惑になろうとも白装束の女の背に向け、俺は叫ぶのだが。


「し、新作?」


 親父が呻り、吠える俺に声をかけるから。


「ん? 何、親父」と。


 俺の真横で様子窺がっていた親父さまへと声を返せば。


「し、新作……。お前の目には、何が映っているんだ?」


 親父は自身の顔を真っ青にさせ、震えつつ、俺に尋ねるから。


「俺?」と。


 俺は少し驚いた顔をしつつ、親父に応えると。


「今、階段の入り口まで走って逃げ、階段を降りていった女の後ろ姿を見ていた。そしてそいつの背に怒声を吐いていたけれど。父さんにも見えただろう? 寝間着姿の女性の後ろ姿が?」と。


 俺は首を傾げつつ、親父に尋ねれば。

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