第5話 女性の啜り泣き(4)

(じゃ、女は外だな?)と思い。


 扉に付属している小さな穴から、扉の向こうの様子を窺う。


(あっ! いた!)


 俺が玄関の扉の穴から、外の様子を窺うと。


 自身の顔が、髪で覆い隠れほど長い髪をした女性が、俺の玄関の前で、やはり体操座りをしながら啜り泣きを漏らしている様子が。


 俺の片方の瞳に映るから。


 俺は後ろを向き──声は出さないが。


 家の親父に、声を出さずに。


『女がいた! いた!』


 俺は玄関を指さしながら、親父にジェスチャーも加えつつ、口パクで告げると。


 家の親父は一重で、目が細い癖に。


 自身の両目を大きく開けながら。


「うん、うん」と頷く。


 だから俺は親父へと。


『じゃ、開けるね』と。


 やはり先程と一緒で、口パクで告げると。


 俺の部屋のドアの鍵をカチャッ! と、できるだけ音を出さないように心がけながら回すのだ。


(よしよし、未だ部屋の外! 玄関の前から女の泣き声がする。だから今回は開けても。俺に悪戯をする女には逃げられないはずだ)


 俺はニヤリ! と、薄ら笑いを浮かべつつ、自身の脳裏で呟けば。


 ガチャン! と、激しい音を出しながら。


 俺の部屋の扉を開ける。


 ガシャン!


 ガシャ、ガシャ。


「……ん? あれ、可笑しい?」


 俺は独り言を漏らせば。


「何で扉の裏側に着いているチェーンロックが掛かっているんだ」と。


 俺は開かない扉をガチャ、ガチャと金属音を出しながら、不満を漏らせば。


「父さんか、母さん。俺の部屋の扉にチェーンロックを、もしかして掛けた?」


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