3-1

砂漠の旅は思った以上に体力を消耗するようで、砂漠に着いたときには「あちぃ、あちぃ!!」を連呼していたテオも汗だくになりながら黙って歩いており、エルムは僕たちと会う前の旅で慣れているようでテオよりは軽い足取りで進んでいるが、やはり暑さで汗だくになっている。

「テオ、大丈夫?」

「・・・お、おー・・・なんとか・・・」

「フェルは大丈夫そうだね・・・」

「・・・・問題ない」

そんな状況でも、こちらを気遣ってくれる余裕もあるエルムに、テオは汗だくの額を腕で拭っており、その仕草が妙にセクシーだった。

「あと、どれくらいで街に着くんだ?」

「この調子だと明日にはつけそうだし、少し休憩しようか?」

「・・・・だな」

ちょうど、近くの岩場を見つけたエルムの言葉にテオは気が抜けたのか、ぐったりと肩を落として乱れ掛けていた息を整える。日陰に入ると若干だが暑さが和らぎ、二人は岩を背に座り込んで大きく凭れかかりながら鞄から取り出した水を少しずつ飲んで口を潤している。

「ふはぁ・・・生き返った・・・」

「うん。前の時にも覚悟してたけど、やっぱり砂漠の旅は辛いね」

「てか、この格好熱すぎるだろ・・脱ぎてぇ・・・」

「脱いだらだめだからね」

「分かってるよ」

全身を肌で覆った布にテオは顔を顰めながら言うが、エルムの話だと砂漠で肌を晒して歩くのは自爆行為以外の何物でも無いらしい。おかげでテオの生肌を見られる機会が減った事が僕としても辛い限りではあるのだが、それでテオが大やけどをしてしまっては辛いので我慢だ。

「それにしても、エルムはともかく、フェルも平気そうですげぇな・・・」

「うん、フェルも砂漠は初めてって聞いたから辛いだろうなって思ったけど、全然平気そうだもんね」

「・・・・熱いのも寒いのも慣れている」

隠しボスなので属性攻撃無効だから、多少の暑さや寒さなら感じるが、度を超した暑さや寒さは攻撃と捉えられるから、正直に言うと温い程度の感覚しか感じないのだが、二人を見てると相当に体力を削られているのが分かる。

砂漠にいる間ぐらいは僕が料理当番を肩代わりするぐらいのサービスはした方が良いかもしれない。




砂漠を旅した感想は、砂漠での旅を舐めてましたの一言に尽きる。昼間はメチャクチャ熱いし、夜はメチャクチャ寒いしで、砂漠にすんでいるという人たちを心から尊敬したほどだ。

エルムが砂漠に向かうと聞いて、色々と買い足してくれていた時には本当に感謝の一言しか無かった。

しかも、分け前の報酬はパーティーで皆で使う資金にしようと提案してくれた時には天使なんじゃ無いかと思ってしまったほどだ。旅では暑さ以外のトラブルは特になく進み、夜には俺はエルムの指導の下に魔力操作の指導を受けている。

「うん。そのまま体内の魔力の流れを手のひらに集めていって・・・」

「ん・・・・」

全身を流れる熱を感じながら、それを手のひらに集中したり、また身体全体に巡らせたりするんだけど、これが思ったよりも神経を使い、ちょっと気を抜くと熱から体の外に逃げて行ってしまい、身体の内に留めるだけでも疲れる。

これを魔術師は呼吸をするのと同じように行っていると小間使い時代に聞いてはいたが、実際に聞くのとやってみるとじゃ大違いだ。

「あ・・・くそ、また抜けちまった」

「ふふっ、でも昨日よりは魔力の巡りも早くなってるし、少しずつで大丈夫だよ」

「・・・テオ、ファイト」

「おう!!」

「そういえばフェルは魔法って使えるの?」

フェルはエルムの質問に人差し指を一本立てると、青色の炎で指先を燃やす。

「えっ!? 上級火炎魔法?・・・嘘っ、フェルって魔法も得意なの?」

「へへっ、俺の相棒はほかにも・・・」

「・・・破壊力だけに特化した魔法なら得意だな」

他にも召喚魔法とかも使えると言いたかったのだが、フェルはそれを遮ってしまう。どうやら、召喚魔法に関しては秘密にしたいみたいで、どうしてなのかは分からなかったがフェルの意思を尊重することにした。

そのあとも俺はエルムの指導の下に魔力操作の訓練を行い、攻撃魔法は雷が得意で、回復魔法が主に使える光魔法に関する適性があるという事が分かった。

「ってことは、これからは俺も誰かが怪我したら回復させてやれるって事だよな!!」

「回復魔法は難しいから、相当に訓練しないと厳しいけどね」

「うへぇ・・・」

「・・・パーティー全員が回復魔法使えるのか」

「あっ、フェルも使えるんだね」

「・・・・まあな」



道具屋で買った結界石を使い、今日は全員が就寝を取れる中で今日は新しい発見がいくつかあった。

ちょっと残念だったのが、フェルが回復魔法も使えるというのを知った時だ。

パーティーとしては、回復手段が多いのは良いの事ではあるのだが、フェルが怪我をした時に治してあげたいと思ってしまい、自然とそう思っていた自分に胸が熱くなった。旅の時に自然とフェルを目で追ってしまう自分にも気づいてて、それがなんなのか分からないほどにボクも鈍感なつもりはないんだけど・・・・

「でも、フェルっていつもテオの事ばっかりだからなぁ・・・・」

フェルを見ていると、その視線は常にテオに行っていることに気づく。

ボクのように使命がある訳ではない筈だけど、力と引き換えに寿命を失ったフェルが、どうしてそこまでテオの為に頑張っているのかは良く分かってない。

「男同士の友情って奴なのかな・・・・?」

そういえば初めて二人と出会った時、全裸のテオを抱きしめていた。

もしかしてそういう関係なのだろうか・・・? 

その時のことを思い出して今度は頬が熱くなるのを感じながら悶々としてしまう。そうなったら、テオはボクにとっては恋のライバルって事になるが、同時に守るべき勇者でもある訳で、ものすごい複雑な三角関係っぽい。

当の本人であるテオが一番無自覚っぽいのが何とも言えないけど。

「まあ、その時はその時だよね」

たとえどんな関係になっていくにしても、二人とは良い友人でいられる気がするし、深く考えないようにしながらボクは布団の中で眠りについた。

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