p3


 こんなにも力強く、まんまるなものが、あるんだ。


 電車の窓に、指のはらをぺとっとくっつける。

 ほぼ同時に、トンネルに入った。目を輝かせた自分の顔が映っている。

 もう一度首を持ち上げ、黒い景色の向こう側に、あのふうせん雲を描く。


 あれは、積雲せきうんというのだろうか。積雲、なのだろうか。

 「積雲」といったら、底が大気でこすれたみたいに平らで、黒くて、その上に乗っかっている胴体がとにかく自尊心過剰なイメージ。

 周囲を見渡せばあちこちに同族がいて、それぞれが競い合うように背伸びして発達して、最後にはみんなくっついて狂暴化しちゃう。

 ぴっとして、がっとした。

 そんな積雲は、向こうに確かにいっぱいいた。




─────────────

 積雲 せきうん

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る