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 でも、ふうせん雲は違った。

 競わずつるまず、悠々ゆうゆうとひとりぽっちで浮いていた。

 この雲を、表現するなら、何と言おう。

 ぽこぽこ。

 もあもあ。

 ずんずん。

 みゅんみゅん。

 

 空間が広くなった音がした。

 トンネルを抜けたみたいだ。明るくなった空に雲を探す。ふうせん雲は目の先にいた。

 でも、もはや、ふうせんではなくなっていた。

 上へ伸びて、傾いてしまっている。

 やっぱり積雲だったのか。

 積雲。

 まだ、ふうせんの面影おもかげはあるけど、自分の表情がこわばっているのを感じる。

 あの雲がこれ以上崩れる前に、止められないだろうか。




─────────────

 悠悠 ゆうゆう

 面影 おもかげ

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