第3話魔法
「あー、酷い目にあったのじゃ。本当にレオは……」
アクア様からアクアの魔法を貰って早速使ってみたが、初めての魔法で加減が分からず魔力枯渇で意識を失ってしまった。
それ自体は大した事では無いのだけれど、僕が半分精霊になりかけているだとか、そのせいで異常な量の魔力を持っているだとか、ちょっと意味の分からない事態になっていたりする。
「僕のせいじゃないですよ。アクア様が早速、魔法を使って、どこまで球が大きくなるか試せって言ったんじゃないですかー」
「ワシはそんな事言ってないのじゃ!レオが勝手にやったのじゃ!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「そんな事よりお主の事じゃ。何とかせんと、この世界の水自体が変わってしまうからのぅ」
「何とかしてください。僕はまだ死にたくありません!」
「ワシだって死にたくないわい!お主と混じり合うと言う事は、今のワシと言う存在の死と同義なのじゃからな」
「アクア様、要は僕の体の中から、飲んだ泉の水を外に出せば良いんですよね?」
「お主……ワシが思っている事を言おうものなら……張りたおすぞ……」
「……ごめんなさい」
アクア様に生理現象で水を体の外に出す提案しようとしたのだが、張り倒される未来しか見えない。
ここは一度仕切り直してアクア様に改めて聞いてみた。
「アクア様、どうしましょう?」
「そうじゃな。まぁ、こうなっては答えは1つしか無いんじゃが……」
「何か方法があるんですか?」
「うむ。このまま放っておけば、お主の魂は徐々にワシの魔力に溶けてしまう。であればワシ以外の魔力でお主の魂を満たせば良いのじゃ」
「すみません。アクア様の言ってる意味が全く分かりません」
「要は他の精霊の加護を貰えば良いって事なのじゃ」
「他の精霊の加護……それって他の精霊の試練を越えて魔法を覚えるって事ですよね?」
「その通りじゃ!まぁ、良く分からんが1000個も覚えれば問題無いじゃろ」
「1000?? それってサウザンドマスターになれって事ですか?」
「そうじゃ、そうじゃ。さんざんのマルターじゃ!」
「何ですか、そのこっぴどくやっつけられた国税職員みたいな名前は。サウザンドマスターですよ。アクア様も前は普通に言ってたじゃないですか……もぅ」
「そんな事はどうでも良いのじゃ。レオよ。お主は世界を回り精霊の加護を貰わねばならん。もし失敗したら……」
「失敗したら……」
「最悪は世界中の水が変質して世界が終わるのじゃ」
「ゴクリ……因みに最悪じゃない場合はどうなるんですか?」
「運が良ければアクアレオと言う精霊獣に生まれ変わり、世界を破壊しつくすはずじゃ」
「どっちにしても世界の危機じゃないですか!」
「その通りじゃ!」
どっちにしても世界がヤバイ。僕は肩を落としてこれからの自分の人生を想像したのだった。
「まぁ、そうは言っても1年や2年でどうこうなる事は無いはずなのじゃ。先ずは世界を旅するためにも魔力の使い方を教えてやるのじゃ」
「僕に断る権利は無いんですよね……」
「世界を滅ぼしたいのなら、何もしなくても良いのじゃ」
「すみませんでした。よろしくお願いします、アクア様」
こうして僕はアクアの魔法を覚えた事で、世界中の精霊から加護をもらいにいく旅へ出る事を強制されてしまった。
僕がサウザンドマスターに憧れていたのは確かだ……でも僕が願ってたのはこんな強制イベント的な旅じゃなかったんですが!
僕がアクアの魔法を覚えて、魔法の使い方を習いだしてから2年が過ぎた。
「レオ、お主も15歳になった。魔法の腕も及第点じゃ。そろそろ精霊の加護をもらう旅に出ても良い頃じゃろうて」
「旅ですか……僕に出来るでしょうか?」
「出来なければ世界が終わるだけじゃ」
「グッ……」
「まぁ、アクアレオになって、勇者に討伐される事になってもワシは少ししか恨まん。気楽にやると良いのじゃ」
「しっかり恨んでるじゃないですか!それに僕は討伐されたくないですよ!」
「それなら気合を入れて精霊の加護をもらう事じゃな。ワシの魔力に馴染んだお主ならば近づけば精霊の気配が分かるはずじゃ」
「……分かりました。バアちゃん達に話したら旅に出る事にします」
「ああ、頑張るのじゃ。そしてさすらいのアクターになるのじゃ!」
「何ですか、その旅する役者みたいなのは!サウザンドマスターです。わざと言ってますよね? アクア様!」
「そんな事はどうでも良いのじゃ!行け、レオよ。立派な魔法使いになるのじゃぞ」
「……分かりましたよ、もぅ。行ってきます、アクア様」
「うむ!」
こうして僕は15歳になった事で世界中の精霊から加護をもらう旅に出る事になったのだった。
「ただいまー」
「今日はやけに早いね、どうしたんだい?」
「聞いてよ、母ちゃん。アクア様から言われたんだけど………………」
僕は母ちゃんに、アクア様から精霊の加護を貰う旅に出るよう言われた事を話した。
「………………と言う事で、アクア様からサウザンドマスターになるために、旅に出るように言われたんだ」
「本当かい!父ちゃんが帰ってきたら沢山褒めてもらわないとね!今日はご馳走だよ、母ちゃん腕によりをかけて作るからね」
何故か母ちゃんに喜ばれてしまった……解せぬ。
僕は家の裏手で掃除をしているバアちゃんに話しかけてみた。
「バアちゃん、アクア様から旅に出ろって言われたんだ……」
「そうかい!良かったのぅ、レオ」
「……」
「どうしたんじゃ?嬉しくないのかのぅ」
「分からない……」
「……レオ、そこに座りんさい。ほら、はよぅ」
僕は言われるまま切り株に腰掛けると、バアちゃんは諭すように話し出した。
「レオはサウザンドマスターになりたいんじゃろ?」
「……うん」
「だったらもっと喜んでほしいのぅ。レオの父ちゃんも母ちゃんもレオがサウザンドマスターになれるよう、この5年の間、毎日アクア様へのお供えを欠かさなかったのじゃから」
「えっ、あのお供えって僕のための物だったの?」
「そうじゃ。父ちゃんも母ちゃんも、勿論アクア様だって本当の事は言わんじゃろうがな」
「僕のために……5年も……」
「レオは小さい頃からサウザンドマスターになりたいって言い続けておったからのぅ」
「……父ちゃん、母ちゃん……僕、旅に出るよ。それで絶対にサウザンドマスターになって帰ってくる!」
「そうか、そうか。レオならなれるじゃろうって」
「うん!」
こうして僕は精霊の加護をもらう旅に出る覚悟を決めたのだった。
レオの覚えた魔法 1
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