第31話

 木のハンマーが二人をぶっ飛ばした。

 とんがり帽子の魔法使いは木に引っかかる。

「あたたた」

 男が身体をさすりながら目を開けると上の方の枝に本が挟まっていた。

「彼女はどこいった?」

 周りを見回すが精霊の少女の姿は何処にも見当たらない。

 目を本に戻して手を伸ばすが、もう少しのところで届かなかった。

「んーもう少し」

 そのとき、木の鞭が向かってくるのが目に入った。

「うおお!」男はバッと腕を上げてそれを防ごうとした。

 そして、

 木の鞭が水に吹き飛ばされた。

「おや?」

 水が飛んできた方に目を向けるとサラがいた。男はほっと息を吐く。

「助かったわい」

「それよりも早く本を!」

「だあああああああああああああああ、なんじゃこりゃあああああ」

 熊谷の乗っていた棒の先が折れた。

「どわああああああああああああ!」

 とんでもない数の木の実が空を切り裂く音と共に熊谷を襲っていた。

 木に回り込んで避けるが、木の幹を貫通して来るものまでいる。

「嘘だろこれええ! しゃれになんねえって!」


 お前らみたいな人間が自然をめちゃくちゃにして、自分たちのいいように汚して、いなくなれええええええ!!


 精霊の少年の声が森中にこだまする。

「俺は人間じゃねえぞ! ふざけんなって!」

 超巨大な樹木の近くまでやってきた。

「ソウ! 静まりなさい! 何があったというのですか、いつもの優しいあなたに戻ってください!」

 樹木が裂け、そこから少年が姿を現した。いつもとは姿が変わり、角は大きく禍々しく、髪は白く、目の色は赤黒くなっていた。

「サラを……サラを返せええええええ!」

 少年の腕が木となり、サラに向かって伸びていった。

 サラは水を操り、龍と化した水が木に激突。が、龍は木の勢いに押し負けていく。

 木の腕がサラに迫り来る。

「きゃああああ」

 とんがり帽子の魔法使いはサラを庇うように抱きしめた。

 サラは男の服をギュッと握りしめる。

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