第30話

 魔法の鎖の残骸がボロボロと落下してゆく。

「ダメだったか」

 その直後、熊谷とヘレルのいる方角から、雷撃と爆風が放たれたが、樹木は一部を損傷したあとにたちまち再生していた。


「だめだったようじゃな」

「私が話かけてみます。もっと近くまで行ってもらえますか」

「つかまっちょれ!」

 二人の乗っていた本は凄まじい速さで、樹木に近づいていこうとした。

 そこに木の太い枝が迫る。

 避ける。迫る。避ける。

 ときにはサラが水を操り、枝を退けた。

「おじさん! 来るよ!」

「掴まってろよー!」

 目の前にねじれた木の腕が来る。

 避けてもすぐに左から、右左右左上下叩きつけるように上から。

 避けて避けてまた避ける。

「わああああああああ!」

 萌は悲鳴を上げた。

 続けざまに四方八方から木。

 バリバリバリと細かい枝が二人に当たった。

「きゃああ!」

 萌が体勢を崩して、乗っていた棒にぶら下がる。

「上がれるか?!」

「おじさん、助けてー!」

 信也が手を伸ばして、萌の手を掴もうとした。

「掴まれえええ!」

 萌の手が宙を切った。

 少女が落ちた、落ちた、落ちた。

「萌!」

 木が三本同時に信也に向かってくる。

「あー! もう!」

 魔法で木を吹き飛ばした。

「萌は?!」

 萌の方に目を戻すと萌は翅を生やしてふわふわと飛んでいた。

 信也はその姿を見て、ふーと息をついた。だがうかうかしている間など無い。

 信也は急いで飛んでいって萌を抱えた。

「掴まってろってだから言ったろ」

「危機一髪だったね」

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