第29話
男は信也を見て言った。
「あんた、とんがり帽子さんだな」
「何があった」
「精霊が我を忘れちまった。とくにきっかけはなかったようだが……」
「どうするんじゃ」
「あんたらが手伝ってくれるなら、四方から結界をはって押さえ込んでみようかと思う」
「押さえ込める確証はあるのかい」
「何もやらないよりもましだろ」
「確かにそうじゃな、放ってはおけないからの」
「熊谷は向こう、ヘレルはここから反対側を頼めるか」
「どうすればいい?」
とヘレルが聞いた。
「ほとんど、こっちでやるから、適当に合わせてくれ」
「うむ、それでお前は飛べるのか」
「信也、枝分けてくれ」
信也が杖を折って熊谷に投げた。
ヘレルに掴まっていた熊谷は枝に乗って宙を浮かんだ。
「よっしゃあ、行くぜええ!」
ヘレルと熊谷は勢いよく飛んでいった。
「ソウ! どうしたと言うのですか! 私です! 正氣に戻ってください! ソウ! 返事をしてください!」
精霊の少女の声は、虚空に響くだけだった。
皆が所定の位置につく。
「我ここにそなたらに願う、我ここにそなたらに誓う、我が目前にいる者を束縛する鎖とならんことを」
魔法の鎖が四方それぞれにジャラジャラと音を鳴らしながら伸びていった。鎖は伸び続け、中心を取り囲むように球体の形状になった。大きな球体は一氣に縮んで樹木は魔法の鎖でがんじがらめになった。
「わぁぁ、おじさんこんなこともできるんだ。凄いね」
と萌が信也の後ろから言った。
「俺だけの力じゃないよ、皆の協力があるからできるんだ」
「押さえ込めたか?」
と信也が独語したあと、樹木から蔦が伸び魔法の鎖を覆っていった。
「く、っそ。きつ」
「どうしたの?」
「鎖ちぎられそう」
「ええ! 頑張って、おじさん!」
ギリギリと鎖は植物の力に押しつぶされていく。
「頑張ってる!」
ブツン
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