第28話
サラは大丈夫だろうか、ソウはただそのことばかりが頭にあって、気がせいていた。信也によると、あの魔法使いは、悪いことをする人間ではないとの話ではあったが、人間の住む世界を見てきたソウは、気が気ではなかった。森を進みながら人間の世界を思い出していた。
なんで、あんなに、自分勝手なんだろう。
自然が泣いているのが見えないのだろうか。
他の生き物の氣持ちを感じないのだろうか。
動悸。動悸。動悸。
なんだか、意識が――黒く。
バリバリバリバリ
急に森は暗くなった。空も曇天へと移り変わっている。
鳥たちが一斉に騒ぎだし、飛び立っていった。
サラととんがり帽子の魔法使いは耳をすませる。
「これは何がおこっておる」
「森が騒いでいます。一体……これは」
「お前さんの兄君が戻って来ていたことと関係あるのかい?」
「わかりません、ただ、こんな胸騒ぎは初めてです」
サラは衣の胸の辺りを握りしめた。
「なにか、来ます!」
サラと男は暗い森の奧に目を遣った。
かなり速いスピードで何かが飛んでくる。
「人か?」
「なにか言ってますね」
に……ろ――
「ん?」
何を言っているのか分からなかったので男は目をこらした。
に・げ・ろ
男は本を宙に浮かべてそれに飛び乗った。
「乗りなされ」
男は手を差し伸べ、精霊の少女はその手を取った。
二人はぐーんと高く上がった。向こうの方に超巨大な樹木がどんどん大きくなっているのが目に入る。
「なんじゃあれは」
「ソウ……」
「な、あれが?」
「怒りと力に飲み込まれています……一体なにが」
こっちに向かっている二つは、木の枝に追いかけられていた。枝がめまぐるしく、伸び続けている。突然岩が出現して木の枝を押しつぶした。
とんがり帽子の魔法使いとサラがそれを見ていると、二つは二人の近くで止まった。
「お前さんは……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます