第25話

「倒れた木がか?」

 ヘレルはソウの言葉を訝しむ。

「そうだよ」

 ソウは口をとがらせて言った。

「すまない、気をつけよう」

「もう」

 ソウはむくれている。

「ふんふんふふーん」

 萌は上機嫌で森を歩いている。

 信也は一番後ろを歩きながら、息を切らしていた。棒きれに体をあずけている。

「ねえ、少し休憩にしよう、もー歩けない!」

 信也以外の一同はふり向いて、もと来た道を戻った。

「おじさん、もっと普段から運動したほうが良いよ」

「分かってるんだけどね、難しい」

「魔法以外だらしないんだよな」

 と熊谷が小言をもらす。

「あー、はいはい、分かってます」

「人間ってたいへんだね」

「そのようだな」

 信也はどっかりと地面に腰を落ちつける。

「それで、あとどれくらい歩くの?」

「二時間くらい歩くかなあ」

「ええ、そんなにあるのー!」

 信也は脱力して地面に転がった。

「魔法使えよ」

 熊谷が信也に言った。

「いや、俺だけ使うのも」

「変な意地張るな」

 萌がしゃがんで虫を眺めていると、カサカサと目の前の藪から物音がした。

「なに?」

 萌がじーと物音のする方を見ていると、角が顔をだした。

「虫さんの角?」

 カブトムシの角だ。しかもかなり大きい。

「わあ、大きいのね、あなた」

 萌はカブトムシの頭をそっとなでた。

 それから萌はカブトムシに乗って森を移動することになった。

「俺も乗せてくれないかな……」

「嫌だって」

「そ、そっか」

 信也は相変わらず息を切らしていた。

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