第18話

ソウは道を歩いていた。

 前から青の服を着た少年が歩いてくる。ソウと同じくらいの背恰好だ。

 二人はすれ違う。

(あいつ人間じゃないな)

(あの人、人じゃない)

(なにしてるんだこの町で)

(なにやってんだろ、こんなところで)

 二人の距離は離れていった。

 ソウは立ち止まった。

 道に植えられた木を見上げて、木の肌に手を伸ばした。

 ぶーん

 トラックが通り過ぎると、黒い排気ガスが尾を引いて漂っていた。

「ゴッホ、ごほ、なんだこれえ」

 ソウは苦しそうに咳き込んだ。

 また木を見上げる。

 ソウが地面に目を落とすと、木の根元に木の柄に銀色の丸い金属がついた何かがあった。

 ピザカッターであった。

「なんだろこれ」

 ソウはしゃがんでそれをジーと見ていた。

 どこを歩いても何かが転がっている。あきかん、瓶、ビニール袋、段ボール、服、食べ物、タバコの吸い殻、そんな物がいたる所に落ちている。

 ソウはしゃがんでゴミをしばらく眺めていた。

 道だけではなかった。川を見ると、ゴミが浮いていたり、ヘドロが溜まっている。

 ソウの目の前でゴミを川に投げ捨てる男がいた。

 ペットボトルがぷかぷかと水面に浮かんでいる。

 少年の目から涙が流れていた。





 歩いていると、道の脇で土いじりをしているおばさんがいた。

 ソウがだまって花を眺めていると、そのおばさんが話かけてきた。

「綺麗でしょ」

 おばさんは笑顔だった。

「うん、好きなの? お花」

「ええ、こうやって世話をして花が咲いてくれると、嬉しくなっちゃうのよね」

 ソウとおばさんは花を見てニコニコとしていた。

 その時だった。

 クラクションを鳴らし、凄い勢いで車が迫っていた。

 このままじゃ二人に突っ込んでる。

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