第17話

もう一度、ソウはスーパーの中に入った。また見たくなったのだ。

 買い物をしている人達が、買い物カゴに物を入れている。

「みんな同じカゴ持ってる……」

 何度見ても、食べ物がズラリと並んでいるのを見るのは不思議だった。

「こんなに集めるのは大変だろうなあ」

 ソウは店内を散策することにした。

 他に何が待っているのかワクワクした。ここは見たこともない食べ物でいっぱいだ。

 顔を向けると、通路の向こうで人間の子供が靴を脱ぎ床に這いつくばって泣いていた。親らしき人間が困っているのが目に入った。

「かーってかってかって!」

「無理言わないの」

 ソウは子供の前の棚を見た。

 なんだか分からないがカラフルな物が並んでいた。

「なんなんだろこれ」

 ソウは手に取って眺めてみたが、さっぱりよく分からなかった。匂いを嗅いでも、なんの匂いもしない。

「これ欲しいの?」

 ソウは子供に話しかけた。

 子供はソウを見てから、再びだだをこねだした。

(欲しくなかったのかな……)

 通路を歩きながら、ソウは袋を開けた。中にはお菓子とキャラ物のカードが入っていた。

「なんだこれ?」

 匂いを嗅いでみても、おいしそうな匂いはしなかった。

「この紙はなんだろう、キラキラしてるけど」

 ソウが矯めつ眇めつ眺めていると人間に話しかけられた。

「ちょっと君、何やってるの、まだそれ買ってないよね?」

「え、買う? ごめんなさい、これ開けちゃだめだったの? はい、返す」

「ちょっと、返すって言われてもねえ」

 人間の大人は、腰に手を当てて、なんだか怒っているような顔をしていた。

(どうしよ……)

「あ、すいません、うちの子が勝手に。お金払うんで」

 ソウが後ろに目を向けると、背の高い青年が、ペコペコ頭を下げていた。

 いったい誰なんだろうか。

「困りますよお」

 二人はレジの方に向かっていった。


 青年が会計を済まして、店内を探しても、先ほどの少年の姿は見当たらなかった。

「あいつ、精霊かなんかだろ、どこいったんだ……まあいいや」

 青年は野菜を手に取った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る