第15話
夜になると、そこいらに咲いている小さな花から光の雫が零れ宙を漂っていた。
上を見ると満天の星、後ろを見ると、光が鼓動するように大樹を包んでいる。いや、この光は大樹から発せられていた。
(光る木か、なんと神秘的な)
「こちらへ」
男はサラに手を引かれるまま大樹の近くにいった。
「手を少し近くから、かざしてみてください」
「こうかね」
「目をつむって」
とんがり帽子の魔法使いは言われた通りにした。
すると、とてもあたたかなモノを感じた。
「おう」
身体にあたたかいモノが流れ込んでくる。
目をゆっくり開けると、
樹の明滅していた光が手に渡っていた。
パっと手を離す。
「こ、これは」
「木のエネルギーがあなたに少し流れたのです」
「なんと温かい」
男は手の平を見ていた。
まだ、少し温かい。
「そっちの岩の壁にも同じことをしてみてください、そこの淡く光っているところ」
「うむ」
男は同じようにした。
すると、
今度は、冷たくて鋭いモノが身体に流れ込んできた。
「ほお」
思わず男は息を吐いた。
「まったく別物じゃ……だが、どちらも力強い」
「はい、当たり前ですけどね、別の物ですから、けど、面白いでしょ?」
「ああ、なんだか元氣になったわい」
男は、サラに力こぶを見せた。
サラは可笑しそうに微笑んだ。
「あなたには、特別に教えましたが、むやみやたらにやってはいけませんよ、木や石のエネルギーを奪うことになりますから」
「少しだけ分けてもらうか……」
「欲しい、欲しいと取り尽くしてしまったら、それは死んでしまって、永遠に分けてもらえなくなりますからね」
「感謝、感謝じゃ。ありがとう」
男は樹と岩に身を寄せてお礼を言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます