第14話
男は帽子のつばを下げる。
「今では毎年、もの凄い数の生物達が絶滅しておる、悲しいことじゃ」
「哀れですね」
サラの声音はもの悲しげだった。
ガサガサガサと、大樹が梢を揺らした。
とんがり帽子の魔法使いは、上を見上げる。
「なんじゃ!?」
「彼が目を覚ましたようです」
「彼?」
梢が揺れ、大きな影が地面に降りた。
その動きはとても軽やかだった。
大きな体、うさぎのような耳、ふさふさの白い毛、大きな口、何もかもを切り裂くような爪を持っていた。
それに続いて二つ、ミニチュワ版のようなモノが続いて降りてきた。
「上位の精霊か!」
サラは立ち上がり、その毛を撫でる。
「おはよう」
精霊はにんまりと笑顔をみせた。
「とても優しいのですよ」
「そ、そうか」
大きな精霊はとんがり帽子の魔法使いの近くによって、鞄を嗅ぎだした。
「ん? どれ、これでも食べるか」
男は鞄から干し柿を取りだして三体の精霊に放り投げた。
ぽい、ぽい、ぽーい
精霊達は柿を受けとり、目で確かめ匂いを嗅いでから、口の中に入れた。
尻尾をブンブンと振ってそれからピョンっと飛び上がり、大きな精霊は息を吸い込んだ。
「ンがアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
地響きが鳴ったようだった。
「ほほほ」
男は鳥肌が立っているのを感じた。
それから精霊達は何処に向かうのか森の中に消えていった。
「お前さんも一つどうだい」
男はサラに干し柿をポイと放り投げた。
サラは受け取り、固い表情でそれをまじまじと見つめた。見たことのない食べ物に幾らか緊張しているようだった。
「人間界の食べ物は口にあわんかな」
「どうでしょう」
意を決したようにして、小さな口で一口かじる。
「あら、甘くて美味しい」
と、緊張を和らげた声で言った。
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