第11話
顔を上げると、人間が銃を持っていた。
「……なんてことを」
猟銃を持った人間はこちらに近づいてくる。
「ぼうず! 大丈夫か!」
ソウは目を赤くして涙を流していた。
「なんで……なんでこんなことするの!」
人間の男は驚いて立ち尽くしていた。
「なんでって……」
ソウは熊の傷口に手を触れる。血が止まり、傷が治った。
熊の目がパチリと開く。
そして、立ち上がった。
「うわああああああ」
人間の男の叫び。
熊の唸り声。
人間の男は顔面を粉砕されて倒れた。
「ああ、やめて」
ソウは熊をなだめる。
「ここは君のいる所じゃないみたい、もう森に帰るんだ。僕はもう少し、ここを見てみたいから、氣にしなくて良い、さ!」
熊は駆けだしてゆく。
ソウは悶絶している男に寄り添い、顔に手を触れた。顔の傷はみるみると治っていった。
「うう」男は気を失っている。
「ごめんね、でも、彼を傷つけたあなたも悪いんだよ」
ソウはその場から離れることにした。
背を向けて歩き出すと、「そこの少年! 待ちなさい!」と後ろから大きな声が聞こえてくる。チラリとふり向くとなにやら人間が追いかけてきていたが、ソウはそれを振り切った。
ソウにとってここは不思議な場所だった。人間ばかりいて、店の中に入ると果物や野菜が山のように積まれ、お金でやりとりをしている。人工の光。整地された歩きやすい道、車、自転車、バイク、バス、工事現場の音、騒音、テレビ、ゲームセンターから漏れてくる音、人間達の立ち話、子供達のはしゃぎ声、こんな大きな音は森の中には存在せず、生き物の中で一番うるさいのは人間なのではないだろうかと思った。
「こんにちは」「ニャーン」塀の上を散歩する猫。「ワン!」犬が繋がれている。
首は苦しくないのだろうか。
橋を渡りながら、流れている川を見た。
ドブ川だった。水の底が見えないくらい黒く濁っている。
どうなっているのだろう。
サラが見たら、きっと泣くんだろうな。
僕が見ても、こんなに悲しいんだから。
サラ、大丈夫かな。
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