第10話
リン
鈴のような音がして、ソウの手が光る。まるで、木の声を聞いているかのようだ。
「そっか、そうなんだね」ソウは涙を拭いた。
「これが外の世界の自然なんだ、少し前まではこの森に多くの生き物たちが住んでいたのに、住処を追われてしまったんだね。君も、なんだね」
ソウは熊の体を撫でる。熊はソウの頭に顔を寄せた。
「もっと見て欲しいって?」
ソウは熊の背中に再び乗り、禿げた山を歩きだした。
ヒューーーーーーーーーー
草原についた。
風が吹くと緑色の葦が波打ち、太陽の光を反射して体の一部を白くしていた。
草の海だ。風が心地良い。
「ここはいいね。僕の住んでる森にはない景色だ」
少年は熊から降りて草を摘み、ブーーーーーーと草笛を吹いた。
草で熊の鼻をくすぐってやると熊はくしゃみをしていた。
「あはははは、ごめん、ごめん」
進んで行くと、ちらほらとゴミがあった。藪の中に電子レンジ、冷蔵庫が捨てられて、子供が乗るようなプラスチックの玩具の車が、苔むしてぽつねんとあった。
見下ろすと人の住む町が見える。自然の緑など殆ど無い。人工物が立ち並び黒と灰色がずっと向こうまで広がっている。
「緑が全然ないや、こんな所でどうやって生きてるんだろう」
どんどんと山を下っていき、熊とソウは人の住む場所まで降りていった。
もう、自然の音は殆ど聞こえない、代わりに車の音がよく聞こえてくる。
なにやら、人々が騒がしくしていた。
ソウはなんで人間達がこちらを見て、うるさくしているのか、さっぱりわからなかった。
一匹と少年はそのまま町を進んで行った。
路の角を過ぎる。
パン!
乾いた音が鳴った。
ソウは耳を抑えた。
「いったい何?!」聞いたことの無い響く音になんだか胸騒ぎがした。
熊がどっと倒れた。
「うわあ」
少年は転がり落ちる。
「いっててて、どうしたの?」なぜ倒れたのだろうと、ソウは不思議に思った。
ソウが熊に目を向けると、熊の頭部から血がドクドクと流れていた。
痙攣している。
「だいじょぶ!?」
熊の傷をみた。血が、溢れている。
「なんで……」
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