第17話 国際アートビエンナーレ

 レイコ(マサキの彼氏)が神妙な面もちでアトリエに来ていた。


「君達の作品が国際アートビエンナーレのヤングアーティスト部門に出展が決まった」


「まさか我々フィギュア同好会の作品が世界中に知れわたってしまうなんて、感動だ」


 シショウは目に涙をためて、感激した。


「はっ、フィギュア同好会の作品?」


「これは、ジョンレジェンドの作品だ」


 レイコがヤレヤレという感じで、答えた。


「なんだそのジョンとかいう名前は」


「これは我々チームの作品だ」


シショウとブッチャーが抗議した。


「チームとか、ダサすぎ。いいかい、アーティストは1人だけだ」


「じゃ、我々を代表してシショウで」


 マサキが言うと、フィギュア同好会のメンバー全員がどうぞどうぞと手のひらの先をシショウに向けた。


「そうか、困ったなあ。みんながそういうならしかたがない」


 シショウは嬉しそうに照れ笑いをした。


「これだからシロウトは困る。こんなむさ苦しいおっさんでは話題にならないんだよ。もっとミステリアスでカリスマ性のある唯一無二の存在感がある人でないと。そうだ衣装はエッツに頼もう。出来るだけ目立つ奇抜な格好にしてもらおう。いいかい?ファーストインパクトが大事でそれが全てと言っていいだろう」


「そんな特別な人間はいるのかなあ?」


 マサキがため息をついた。


「いた」


レイコはなんとマルコスの方を指さしていた。


「そもそもアートの歴史で日本人が前面にでてきたことはめったにない」


「君たちは、ジャパニーズアートの分野になるんだよ。アート界のオプション、おまけになってしまう。なんているか、いわゆる、浮世絵、書道、日本画、漫画、アニメなんかから派生してくる仲間とされてしまうんだよ」


「君たちは現代アートとしなければならないのだ」


「現代アート?」


メンバー全員ポカンとした。


「ちなみに君達はマルコスに雇われたスタッフということで同行してもらう」


「マルコスは出来るだけ男だか女だとか分からないようにしてもらおう」


「いいかい、アアトは虚構なのだよ。盛ったもんがちなのだよ」


 エッツにマルコスの衣装とスタイリングをまかせることになった。エッツは銀色のカツラをマルコスにかぶせて、真っ黒でタイトなスーツを着せて、何故か裏地が赤の黒いマントを羽織らせた。顔は白っぽいファンデーションを厚く塗られ、サングラスをかけられて、ぱっと見、ドラキュラのようだった。


「いいねえ、アンディー・ウォーホルっぽいねえ」


 レイコは嬉しそうだった。


 マルコスは美術系の連中に振り回されて、ほどほど嫌気がさしていたが、今回が一番くだらないしバカげていると思っていた。

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