第15話 日本語教室

 マルコスは最近、家の近くに外国人向けの日本語学校を見つけたので、そこのマンツーマンレッスンで日本語を勉強するようになった。


 GPSを使って、帰宅途中のアオイを見つけたマルコスが誘ってきた。


「ニホンゴ ノ ガッコウ ニ イク。 アオイ モ ツイテ コイ」


「マルコス、日本語上手だから行かなくていいんじゃないの?」


「デモ ナゼ ワタシ ノ アイ ガ ツタワラナイ?

 イケメン ハンサム ナノニ オカシイヨ

 ニホンゴ ノ モンダイ ダロ?」


「そうじゃないと思うよ」


「ジャア アオイ ガ ヘンタイ ダカラ カ?」


「変態じゃないよ」


「ジョソウ シタ ワタシ ニ アソコ ガ タツ アオイ ハ ヘンタイ デショ?」


「まあ、そうかもしれない」


 日本語学校のマンツーマンレッスンの部屋で2人は待っていると、メガネをかけた優しそうな女のユキエ先生がやってきた。


「マルコスさん、こんにちは」


「センセイ、 コンニチワ」


「こちらは、誰ですか?」


「ワタシノ カレシ ノ アオイ デス」


 ユキエはぱあーっと明るくなって嬉しそうな顔をした。


「あー、あなたがアオイさんですね?あなたのお話はマルコスさんから聞いています」


 どうやらこの教室はテキストや教材を使って日本語を教え込むという感じではなく、楽しく日本語で会話して、その都度正しい日本語を教えていくというスタイルだった。


「キョウ アオイ ニ ラブソング ヲ カイテ キマシタ。

 マチガイ ガ ナイカ カクニン シテ クダサイ」


「そうなの、アオイさん、良かったですね」


 すると、マルコスが歌い始めた。


「キョウ アサ コーンフレーク タベテ

 キミ ノ コト ヲ カンガエタ

 コーンフレーク ニ マザッタ

 キミ ヲ ミツケタ

 ソンナ モウソウ バカ ミタイダ

 キミヲ タベテ ミタイ

 チイサクナッタ キミヲ

 アタマカラ マルノミ シタイ


 キミノナカニ シンニュウ シタイヨ

 キセイチュウ

 キミノ ココロニ スミツヅケ

 シンゾウ ヲ ツキヤブル

 キミノ ノウ ヲ

 センノウ シタイ

 センノウ シタイ


 パラサイト

 キョウモ アシタモ パラサイト

 パラサイト キミニ イツデモ パラサイト


 キミノ ノウ ヲ タベ タイナ

 キミノ カラダ ヲ スイツクシ

 トカシテミタイヨ

 キミノナカニ ハイッテサ

 キミトヒトツニナリタイナ

 ボクハ キミノ キセイチュウ」


 マルコスの声量はハンパなかったので、フロア中に響き渡った。そして、ほかの教室の生徒達も「なんだなんだ」と大勢見に来た。


 歌い終わると、見に来た生徒たちが歓声と拍手を送った。


 ユキエは感動して涙を流し嗚咽していた。


「ほんと素敵ね、アオイさんはどう思われましたか?」


 アオイはずっと首をかしげていたが、胸に手を置いて嬉しそうに答えた。


「今まで見たことも聞いたことも無い発想だよ。こんなに意味が分からない手紙を見たことが無い。感動したよ。心打たれた」


 マルコスはアオイに素直に褒められたので、赤くなって照れながら、歌詞を書いた手紙をアオイに渡した。



 マルコスを連れてアオイは家に帰ると、リビングにいたマサキにこのことを報告した。


「今日、マルコスが作った歌を俺に聞かせてくれたんだけど、すごく良くてビックリしました。ちなみにこの手紙はマルコスが作った歌詞が書かれてます」


 アオイが珍しく人を褒めたので、どんなものか興味を持ったマサキが手紙をヒョイと取り上げた。


マルコスが慌てて取り返そうとした。


「マサキ ワ ダメ ダヨ」


マサキはフムフムいいながら、興味深く読むと、マサキは答えた。


「はい、採用」


「くだらなくておもしろいよ、ルイパイセンにアニメーションつけてもらって、できたら配信しよう」


「クダラナク ナイヨ シンケン ニ カイタヨ

 ツウカ ウタワナイカラ

 コレハ トップシークレット ダ」


「でももう俺見たし。もうトップシークレットじゃないから」


「アオイもお返ししないと駄目だろ、マルへの感謝の気持ちを込めて絵を描いてあげなよ」


「はいはい、分かりました」と言って、サラサラとクロッキーブックに描き出した。


「マルコス、できるまで見ちゃだめだよ」


「エーーー、アオイ ノ カイテル トコ ミタイ ノニ」


 マサキがマルコスをおさえつけてる間に、アオイは部屋の隅に行って、コソコソ続きを描いた。


「はい、出来たよ」


 それは、マルコスの顔をした天使が歌っている絵だった。


「エッ コレ ワ ナンテイウカ」


 マルコスがしどろもどろに答えた。


「オンナ ダヨ」


「オンナ ジャナイヨ

 ダッテ ツイテルカラ」


 マルコスとアオイは以前にも同じ会話をしたことを思い出しながら、笑いあった。


「はい、採用」


「すごい、かわいいよ。これシショウに見せて、次の新作フィギュアのデザインに推してみる」


 マサキはマルコスの手紙とアオイのクロッキーブックを持って、出かけて行った。


「俺たちの作品、またマサキさんに取られちゃったね」


 アオイがそういって、微笑んだので、マルコスもなんだか嬉しくなって、2人は幸せそうに笑いあった。

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