第12話 ボディービル大会

 アオイは、タクロウのボディービル大会の見学に行くことになっていた。道を歩いていると、何故か後ろからマルコスがやって来た。


「なんでマルコスがここに?」


「アイ ノ チカラ ダ」


 マルコスは自分につけていたGPSをタカコからもらって、それをアオイにこっそりつけてアオイの行動を逐一観察するようになっていた。


「ドコ イク ノカ?」


「今日はタクロウのボディービルの大会なんだ。絶対見に来るように頼まれたんだ」


「ボディービル ガ スキ ナノカ?」


「嫌いじゃないよ、筋肉の付き方とか人体描く参考になるしね」


「アオイ ワ エロ オンナ シカ カカンダロ?」


「まあ、まあ、そうだけどさあ」


「イカナクテ ヨクナイ?」


「良くない。良くない。約束したから」


「アソコノ ホテル ニ イコウ」


 マルコスはラブホテルを指さして、言った。


「行かないよ、俺の話聞いてた?」


「なんで、ついてくるんだよ?」


「タクロウ ト ウワキ シナイカ ミハル ンダ」


「タクロウは友達だってば」


「ジャア ワタシ ワ アオイ ノ ナンダ?」


「友達?」


「キス シタ、 シ、 オシタオサレタ シ、 エロイコト シタ。 ソレデモ トモダチ カ?」


「確かに、しました。友達でいいんじゃないでしょうか?」


「ワタシタチ ワ ヤリトモ デワ ナイノカ?」


「ヤリトモではないです。多分、もうああいうことはしないからです」


「ナンデダ?」


「なぜなら、私には理性があるからだ」


「リセイ?」


「トコロデ、タカコ トワ ワカレタ。コレデ ワタシ ワ オマエ ダケ ノ モノ ダゾ」


「ダカラ ヤラセロ」


「俺の話聞いてた?」


「ナゼ ヨロコバナイ?」


「そりゃそうだろ」


「コンド ワタシ ワ ニホンゴ キョウシツ イク」


「なんで?日本語上手いじゃん」


「ワタシ ノ アイ ガ タダシク ツタワラナイ カラ カナシイ」


 マルコスはさりげなくアオイの手をつなごうとしたが、アオイにサッと手を離され拒否されてしまった。


「アオイ ワ ヘンタイ ダカラ オンナ ノ ワタシ デナイ ト ダメ ナンダ」


「確かにパツキンマル子はかわいい、ごめんね」


「クッソー」


 会場は大きいコンサートホールのようだった。舞台ではマッチョな男たちがパーフォーマンスをしていた。


「せっかくだから前の方の席に行こう」


 アオイとマルコスは前から3番目の端の方の席に座った。


「キレてる!」


「いい血管出てるよ!」


「仕上がってるよ!」


「デカいよ!」


 会場のあちこちから聞こえてくる合いの手は、ボディビル大会の会場の雰囲気を盛り上げていた。


 マルコスが眉間にしわをよせて、真剣に聞いてきた。


「ハンサム オウジ ヨリモ アナタ ワ アアイウ ケダモノ ガ スキ ナノカ?」


「好きじゃないよ」


「ジャア ワタシ ガ スキナノカ?」


「パツキンマル子は好きだよ」


「ヤッパリ ヘンタイ ダ」


「男はみんなパツキンマル子が好きだよ。俺の理想だ」


「シカタナイ ナア ツギ ワ パツキンマルコ デ デート シヨウ」


「パンツ モ エロイ ノ ハイテヤル」


 アオイとマルコスがコソコソ話してる間に、いつの間にか表彰式になった。出場者達が全員ポーズをきめながら舞台に並んだ。


「オーーーー」


「ヒューーーーー」


 会場は歓声と拍手で、興奮状態になっていった。


 司会が10位から順に名前を読み上げ始めた。最後1位か2位で2人残され、タクロウともう1人が前に出された。


「発表します。優勝はエントリーナンバー77番、タクロウ選手に決定いたしました。」


 表彰状を受け取り、会場を後にするのかと思いきや、突然軽快な音楽に変わって、会場は真っ暗になった。しばらくして舞台の真ん中に立っているタクロウにスポットライトが当てられた。


 タクロウはなぜか踊り出し、会場全体がパッと明るくなった。先ほどのマッチョな選手たちが金髪のカツラをつけて頭には天使の輪をつけて、白い天使の衣装を着てタクロウの後ろに並んで踊り出した。会場にいる全ての人が立ち上がり始め、軽快な音楽に合わせて手をたたきながら、リズムに合わせて横揺れをしはじめた。また、数人のマッチョな天使が会場にゾロゾロとおりてきた。


(これはフラッシュモブというヤツでは?)


 そして、何故かアオイがスポットライトを当てられた。会場のみんながアオイに注目した。


 アオイは恥ずかしさで顔を両手で隠した。マッチョ天使が数人でアオイを担ぎ上げ、アオイは舞台の真ん中まで連れていかれた。


 マルコスは驚いて、ポカーンと口を開けたままになっていた。


 アオイが真ん中に立たされると、踊っていたタクロウとマッチョ天使達がピタッと静止した。


 マッチョ天使の1人がマイクをタクロウに持たせた。タクロウは驚いて目を見開いているアオイをジッと見て、話し始めた。


「優勝したら、告白しようと思っていました。はじめて会った時からずっと好きでした。付き合ってください」


「オーーーーーー」


 会場から拍手と歓声が上がった。


「良く言った!」


「頑張った!」


「カッコイイ!」


「キレてる!」


「デカいよ!」


「断る奴はいない!!」


「お似合い!!」


「もちろんオーケー!!」


 会場やマッチョ天使達から、応援の言葉や掛け声がかけられた。


 マッチョ天使の1人がマイクをそっとアオイに渡した。


 アオイは小声で震えながら答えた、というよりは、会場の雰囲気で言わされたといっても過言ではない。


「俺で良ければ、よろしくお願いします」


 タクロウはアオイの方に駆け寄り、両手でアオイの頬をつかんで、真正面からブチュッとキスをしてきた。タクロウの唇はポッテリと分厚いので、マルコスとも違う独特な感触に不思議さを感じた。


(キスって人によって感触が微妙に違う)

(唇ぶあついからなあ、タラコに包まれている感じ)


 アオイがキスについて個人差があることに思いをよせている間に、タクロウのキスがドンドン濃厚になっていくことに気づいた。タクロウの舌がアオイの口の中で動き回っているのだ。


 びっくりして、アオイはタクロウをおしのけた。


「ごめん、おれもう息できないから」


 アオイは下を向いて、気まずそうに言った。


「俺こそごめん。でも嬉しかった」


 タクロウは嬉しそうに目いっぱいの笑顔だった。


(ヤバイ、これ絶対断れないヤツだ・・・)


 アオイは、ほんとにほんとに気まずくて、タクロウの顔が怖くて見れなかった。



 数日後、部室でマサキがアオイに詰め寄って来た。


「これはどういうことだ?」


 マサキはノートPCをアオイの目の前に突き出した。


 それを見ると笑顔のタクロウがでていた。


「そうそう、大会で優勝したんだよ」


 アオイが説明した。


「その下だよ、その下」


 アオイが画面を下にスクロールしてみると、なんとそこにはタクロウとアオイのキス写真がのっていた。


「なんでーーーー?」


 アオイはその場のノリと雰囲気でああいうことになってしまったが、その事については深く考えていなかった。


 マルコスにはさんざ罵られ責められたが、アオイの中では終わったこととしていた。


「ウワキモノ ヤリチン ウラギリモノ サギシ ヘンタイ ノロッテヤル ユルセナイ」


 マルコスは呪文のように大きな声で唱えながら部室にやってきた。


「マルコス、アオイがゲイニュースにでてる」


「シッテル、 カレハ ウワキモノ デ ワタシ ヲ モテアソンデ ステラレタ」


「なんで俺がでてるんだ?」


「お前、タクロウがゲイ界のプリンスだって知ってるのか?

 あいつは、ゲイに人気の要素を全てかね揃えているんだ」


「ゲイに人気の要素?」


「マッチョな体

 笑顔がかわいい

 タンクトップ

 包容力のある人柄」


「あいつが初めて大会で優勝した時、ボディービル業界じゃなくて、ゲイ業界が震撼したんだ」


 マサキが熱く語った。


「そうなんですか?」


(そういえば、会場は女装したおっさんと異様に化粧の濃い女性ばっかりだった気がする)


 ゲイニュースを読んだマサキによると、タクロウはSNSで事前に自分のファンにもフラッシュモブの協力を頼んでいたらしく、会場全体が仕組まれていたことが分かった。


「マサキさん、どうしよう」


 ゲイニュースでは、フラッシュモブの動画も公開されていたので、それを見ていたマサキはつぶやいた。


「すごいね、手が込んでるね」


「まあ、ここまでされたら、しょうがないんじゃない。付き合うしかないよね」


「ことわれないよね。あいつのファン怖いよ。みんな女っぽいけど体はしっかり男だからね」


「ユルセナイーーーーー」


 キーーーっと、マルコスは悔しがっていた。


「1カイ ヤットケバ ヨカッタ」


「マルコス、アオイとはやるなよ。やったらタクロウのファンに殺されるぞ」


「クヤシーーーー」


「マサキさん、どうしよう」


「ほんと、お前ってさあ。そういうとこだよ。ハッキリしないとこだよ、そこにつけこまれたんだよ」


「マサキさん、見捨てないで」


「大丈夫だよ。タクロウはかなり大当たりだから。乗っかちゃいなよ」


 部室のドアが開いて、噂のタクロウが入って来た。


 両手いっぱいの虹色のバラを持って、筋肉でパツパツになった白いタキシードを着てやってきた。


「今度は、へんな男がきた」


 作業場を部室の端っこにおいやられたまま、聞き耳をたてていたシショウが言った。


「コノ ドロボウ ネコ ガ!!」


「クソヤロウ キタネーゾ」


「アオイ ワ オレノダ」


 マルコスが挑発してきたが、タクロウは余裕の笑顔で一切気にもしなかった。


「これ渡そうと思って」


「ありがとう」


 アオイはなんか申し訳ないような気がして、下を向いたまま答えた。


 タクロウは、はにかみながら虹色のバラをアオイにそっと渡して帰ろうとしたが、はたと振り返ってアオイに伝えた。


「今日夜8時に家に行くから」


 部室のドアを閉まったとたん、マルコスが怒り出した。


「ワタシ ノ ソンザイ ヲ ムシ サレタ。 

 ワタシ ガ ミエテナイ。

 クヤシイ クヤシイ。

 マッチョ ナ ヘンタイ ニ トラレタ」


「いいんじゃない?マルコスと違って紳士だし、真面目だし」


「モウヤメテ」


 マルコスは耳に手を当てて聞こえないようにした。


「まあ、そうですねえ。いいヤツだけど・・・」


「とりあえず、やっちゃえよ」


「多分無理だと思うけど・・・」


「大丈夫じゃない?キス出来たんだし。嫌じゃなかったんだろ?」


「確かに、嫌ではなかったです」


「モウヤメテーーーー、 ワルイユメ ダ」


 マルコスは叫んだ。


「まあまあ、どうせマルコスは傷心で他の女とやっちゃうんだろ?」


「コノママダト ヤッチャウ タカコ ト ヤッチャウ

 タイヘンナコト ニ ナルヨ

 アオイ、 トメテ!!」


「言っとくけど、他の女とやってる場合じゃないぞ、このままいけばアオイは間違いなくやられちゃうね。アオイは絶対に断れないから。このまま勢いで流されて後はいっきに合体するしかないね」


「心の準備が出来てないんですが・・・」


「そんなものはいらんわ」


「アノ ヘンタイ ベヤ デ ヤラレチャウ ノカ」


「あっ、フィギュアはどかそうか?」


 マサキは気を利かせて言った。


「なんでですか?」


「あれじゃあ、ちょっと雰囲気が良くないよ」


「ヨケイナ コト ヲ イッテ シマッタ」



 夜7時ごろになると、エッツの衣装を着てバッチリメイクしたマルコスとヨーコがアオイの家に押しかけて来た。


「うわっ、パツキンマル子が来た」


「ワタシ ノ カワイイ スガタ ヲ ミレバ、 アオイ タクロウ ト ヤルハズ ガ ナイ」


 マサキが追い返そうとしたが、マルコスに加勢を願いされたヨーコが説明し始めた。


「マルコスに協力を頼まれたけど、マルコスには悪いけど、ほんとはイケメンゲイカップル動画をとらしてもらいたいと思って。絶対バズるから交渉させてくれない?」


「確かに、タクロウはすでにゲイ業界では有名人だから、さすがはヨーコ。金の亡者だねえ」


 マサキはヨーコのアイデアに感心した。


「ウラギリモノーーーー」


 マサキは騒ぐマルコスをおさえて自分の部屋に連れていった。


 すると、今度は小声でマルコスに言い聞かせた。


「いいか、俺の部屋のベランダからアオイの部屋に行けるんだ。つまり、ベランダからアオイの部屋をのぞけるんだ。だから静かにしろ」


「アオイ ガ ヤラレル ノヲ ユビヲ クワエテ ミテロト? コノ オニガ!!」


「意外とアオイの方が喜んじゃってるかもよ」


「ヒイイイイイイーーーーーー」


「ほんと鬼畜だよね」


 マルコスは叫ぶと、ヨーコはマサキの発言にドン引きした。


 3人はベランダにでて、アオイの部屋の窓にかかったカーテンの隙間から覗き込んだ。


「マサキ メ アオイ ノ ヘンタイ オモチャ ウゴカシタナ」


 アオイの部屋の美少女フィギュア達は、マサキが気を利かして開いている部屋に動かしてしまっていた。


「あれがあったら、気が散ると思って」


 しばらくすると、タクロウがやってきた。タクロウは白いタキシードから着替えてきて、いつものタンクトップでやってきた。


「アイツメーー、 マッチョ ヲ ミセビラカシ ヤガッテ」


 マルコスが悔しそうに言った。


「あー、マルコスはガリガリだもんね」


 ヨーコはマルコスの痛いところをついてきたので、マルコスのイライラが募った。


「アーーーー、ムネ ガ クルシイーーーーーー

 ワタシ ワ ビョウキ ダアーーーーー」



「フィギュア無くなったんだ?」


 タクロウが気まずそうに言った。


「そうなんだ、マサキさんが持って行ったんだ」


「そうか、良かった」


「良かった?」


「何か、怖かったから。人形の視線がちょっとね」


「ああ、なるほど」


「部屋かなり広くなった気がするね」


「そうだね」


 フィギュアを取り除いたら、ベッドとテレビしかないひどく殺風景な部屋になってしまった。


 しばらく、ぎこちない会話が続いた。


「下のリビングに行こうか、やることもないし」


 アオイが部屋を出ようとすると、タクロウに手をひっぱられた。


「やることならあるから」


 アオイが振り返った瞬間、タクロウにギュッと抱きしめられた。


「あっ」


 タクロウはアオイの両肩を掴んで体を引き離した。すると、タクロウは怒ったような真剣な表情でアオイを見ていた。


(何で怒ってるんだろう?)


 アオイは不思議に思って、タクロウの目を見つめた。


 タクロウは首を右側に傾けて、アオイの左の頬に優しく手をあてて、キスをしてきた。


 案の定、タクロウの分厚い唇は独特の感触だった。アオイにとって、それはまるでタラコに口を挟まれたような妄想をつい考えてしまうほど、不思議な感覚だった。


 そして、やっぱり、タクロウの舌がアオイの中をかき回してきたので、びっくりして再度アオイはタクロウの肩を押しやって、それを阻止した。


「ごめん」


 アオイは下を向いて気まずそうに言った。


「舌はダメだった?」


「なんか。口の中で得体のしらない生き物が、動き回っている妄想にかられて、駄目なんだ」


「なんか、アオイらしいね」


 そう言うと、タクロウはクスクス笑いだした。


 それから、タクロウはタンクトップを脱いで、自慢の肉体を見せつけてきた。


「なんか、すごいね」


 アオイは、しみじみと日本一のタクロウの体を褒めた。


「触ってみる?」


 筋肉で胸をピクピク動かしながら、タクロウは自信満々に胸をはって言った。


「いいの?」


「もちろん」


 アオイは、興味本位でタクロウの大胸筋を丁寧に触ってみた。


「すごい、動くね」


 アオイは感動して、調子にのり、思わず大胸筋全体をこするようにさすってしまった。


「あっ」


 偶然アオイの指がタクロウの乳首に当たって、タクロウの声がでてしまった。


「ごめん、わざとじゃないんだ」


「わざとでも、いいのに・・・」


 一瞬にしてエロい雰囲気になってしまい、アオイはとまどってしまった。


「もっと触って」


 タクロウの呼吸がハアハア苦しそうになってきているのが、分かった。


「でも、何か苦しそうだし・・・」


「そう苦しい。だから胸をおさえて、お願い」


 タクロウはアオイの利き手をとって無理やり自分の胸に触らせてきた。


「もっと、しっかり強くもんで」


「こんな感じ?大丈夫?」


 アオイはこんな状況になると思っていなくて、言われた通りに行動してみた。


「いい感じ、ハアハアハア」


 タクロウはベッドの上に行き、ドサッと横になった。


「救急車よぶ?」


「そんなことしなくて良いから、こっちきて胸をさすって」


「でも呼吸もあらいし、これヤバイって?」


「大丈夫だから」


 タクロウはアオイの両腕を掴んで自分の上に無理やりのせた。


「タクロウ、大丈夫か?」


 アオイは慌ててタクロウから離れようとしたら、タクロウに右手を掴まれ阻止された。


「ごめん、興奮してるだけだから」


「興奮?」


「ほんとごめん、もう駄目だから」


「駄目って何が?」


「息ができない」


「呼吸困難?」


「それからすごい痛い」


「痛いの?」


「つまり・・・イキそうってこと」


「イキそう?」


「アオイ、ごめん、それちょっとさすってくれる?」


 タクロウが異常に勃起した自分の男性器を指さしたので、アオイはなるほどと思った。

 タクロウは涙目になって懇願してきたので、このまま放置するわけにもいかないので、快諾することにした。


「分かった、任せろ」


 アオイは両手でいつも自分がやっているように、タクロウのを丁寧にさすってあげた。


「あっあっあっあっあーーーー」


 タクロウは1分もたずに全てを吐き出してしまった。タクロウはものすごいスッキリしたが、それ以上になんとも情けない気持ちになってしまった。


 タクロウは興奮し勃起しすぎて動けなくなり、見るからに経験の浅いアオイに、助けてもらうという結果になり、自分にがっかりしてしまった。


 タクロウの方が経験豊富だか、個人プレーで腕を磨いてきたアオイはスゴイスキルを発揮し、タクロウが思い切りいったことで良い仕事をしたという達成感のある自信に満ちた表情をしていた。アオイは自分よりもはるかに強靭な肉体を持ち性格も男らしいタクロウを満足させることができたことに信じられないといった誇らしさを感じウキウキしていた。



 窓の外でマルコスはつぶやいた。


「タクロウ、 カワイソウ」


「どうしたのかしら?ちょっと、私、男じゃないから分からないんだけど、あんなことってあるの?」


「アイツ ドーテー ダ。 バージン バージン」


「まあ、はじめての時はあんな感じだよ」


 マサキはタクロウに同情した。


「でも、まさか、あんな頼りないアオイにリードされちゃったら、立つ瀬ないわ。

 あいつ、絵上手いし器用だもんな。そりゃ上手いよなあ」


「なに、それ褒めてるの?」


 マサキとヨーコは声を上げないように口をふさいで爆笑した。


「アナタタチ サイテー」


 心底タクロウに同情していたマルコスは、マサキとヨーコを非難した。

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