第11話 タカコ暴露される
トッシーの暴露系動画チャンネルで、タカコが暴露された。
タカコの夫は有名IT会社オプティ社長、タカコはタワマンの最上階に住み、日々上品な奥様として並々ならぬ努力をしていた。つい先日までそのストレスをマルコスにぶつけて発散していた。が、ついに、不倫を暴露されてしまった。
「見たい、聞きたい、知りたい!!
なんでもしゃべっちゃうよん!
お姉系暴露系チャンネルのトッシーだよん。
今日もみんなやっちゃてる?
うん?
うん?
あっそう」
「今イケイケ会社オプティの社長。不倫しまくってるって?
そんなのは知ってるよね。有名だもんね。
でもねえ、奥さんもやってんのよ。
相手、知りたいよね?
うふふふん」
「相手は音楽系動画で有名なインフルエンサーよ。
パツキンの天使の歌声。
前からあやしいと思ってたのよ。
動画サイト主催のパーティーがゴールドホテルであって、パツキンの方が奥さんをナンパしてきたのよねえ。
私見たのよ。
そしたら、2人で会場から消えたのよ。
多分あそこ行ったんだと思う。
ヤリ部屋!!
旦那の社長のヤリ部屋!!
有名よ。
ゴールドホテルの最上階の角部屋」
トッシーはお得意の早口でまくしたて、いっきにしゃべりにしゃべっていた。
「それでねえ。
ついに証拠動画を入手したの」
そこで流された動画は、タカコ行きつけのバーで2人がキスしたりハグしたりしていた。
緊急会議ということで、マサキから招集がかかった。会議は何故かフィギュア同好会の部室で行われた。そのおかげでシショウとブッチャーは部屋のはじにおいやられて部室の隅っこでフィギュア作りをさせられていた。
「タスケテ」
マルコスは涙ぐんでいた。
「タカコは夫に責められ窮地に陥り、マルコスに復縁を迫って毎日会いにくるようになってストーカー通り越し、もはや鬼になったとマルコスが言ってて」
マサキが簡単に説明した。
「なんでヨーコさんは来てないんですか?確かマルコスさんのSNSが炎上したって、言ってたけど」
アオイはマサキに尋ねた。
「ヨーコは、これはマルコスの知名度UPになるんじゃないかと、ピンチはチャンスなどと口では強気なことを言っているが、現状どうにもならないから現実逃避中。死んだ目をしていた」
マサキはしばらく頭を傾けてうーーんと考えてから、「おっ」と名案を思い付いた。
「アオイに女装させて、マルコスと写真に写っているのはタカコとは別人だということが証明できればいいんじゃないか?」
さっそく、マサキはタカコに連絡を取ろうとしたら、部室のドアがバターンと開いた。なんと、タカコが入って来たのだ。
「ナンデ ココニ イル?」
「何回同じこと言わすのよ、あんたにGPSつけてるって」
「また、ヤバイ女きた」
聞き耳をたてていたシショウがボソリといった。
タカコは入ってくるなり、怒り狂いながら愚痴りまくった。
「今まで、社長夫人としてそれらしく振舞ってきたのに、ママ友からは白い目で見られ、嫌味まで言われるし。自分も遊びまくっているくせに、夫からもうるさく監視されるようになったし。義理の母にもうるさく言われてもう怒りでパンクしそうなのよ。マルコスに逃げられるわ。やってられないわよ。死んでやる」
タカコは椅子を蹴ってまた暴れそうになったので、アオイが後ろから羽交い絞めしたら、逆に逆上してしまった。
「この泥棒ネコめーーーーーよくもマルコスを奪ったわね」
「男のくせに、このヘンタイオカマ野郎」
「モウヤメテ」
マルコスとマサキもタカコの腕をつかんで止めに入った。
「このパツキン、あまえなんぞ、見た目がいいだけのヘタクソがあーーーーー」
シショウとブッチャーが自作のフィギュア達や作業道具をテキパキとまとめて、部室の外に避難したのを確認してから、マサキとアオイとマルコスは部室の外に逃げた。同好会のメンバーはドアの扉をおさえて、タカコがでてくるのを阻止した。
タカコはドアノブをガチャガチャしてドアを開けようとしたが、無理だと分かったのか、それを諦めて、部屋にあるもの全てにあたりちらし、15分間くらい暴れに暴れた。
「また、ヤバイ女きた」
シショウがため息をつき、ブッチャーがコクコクうなずいた。
マサキが首を傾けてから、パッと何かを思いつき、アオイに話しかけた。
「アオイあのさあ、あのイカレタ女のデザイン画描いてみてよ?」
「えっ?」
アオイは隣の部室から紙と色鉛筆を借りてきて、スラスラと描き始めた。長い髪の毛が逆立ち、激しい怒りの形相をした、巨大な武器を持ったセクシーなタカコのデザイン画が出来上がった。右下に「破壊女王怒髪天タカ子」と記載されていた。
「はい、採用!!」
マサキはシショウにそのデザイン画を渡した。
「これ、次回新作フィギュアのデザインです」
「悪女バージョンいいねえ、ブッチャー君見てくれ。素晴らしいねえ」
ブッチャーも喜んで拍手した。
タカコが疲れて、おとなしくなったのを確認してから、メンバー達は部室に入った。
マサキは、さっき思い付いた案をタカコに説明した。それから、マサキ・タカコ・アオイ・マルコスで、不倫の事実をもみ消す作戦を練った。
タカコはさっそくトッシーに電話した。
タカコ: 「ちょっとあの件について説明したいんだけど」
トッシー: 「何の件かしら?」
タカコ: 「しらじらしいわね、私の事暴露したでしょ!!」
トッシー: 「あっそうだったあ」
タカコ: 「弁明する気はないの、あなたの動画に出演させて欲しいのよ。で、本当のことを話したいのよ。絶対あなたの動画の視聴者数は爆上がりになるわよ。だって、天下のオプティ社長の妻が顔出しであんたの動画に出演するんだもの」
トッシー:「そうねえ、悪くないわね」
タカコは、トッシーをタカコの夫の会社の会議室に呼び出すことに成功した。
隣の会議室で、アオイはタカコの服を着せられて、タカコに念入りに化粧とヘアセットをされた。すると、アオイはタカコそっくりの長身美女に仕上がった。
「すごい、どっちがどっちだが、見分けがつかない」
マサキは驚いていた。
「タカコ ガ フタリ イテ コワイ・・・」
マルコスは怖がっていた。
「オッパイ ワ ツイテナイ?」
マルコスはアオイの胸をいきなりつかんだので、アオイはビックリしてマルコスを押しやった。
「やめろよ、イタイだろ」
「ヒンニュウ カワイソ」
マルコスは、アオイをからかってクスクス笑った。
「男だから貧乳なのはあたりまえだ」
「ブラジャー ツケロ ヨ」
「つけないよ」
「ツケロヨ カワイイヨ ニアウヨ」
「ふざけるな!」
「ちょっと、あんたたちイチャイチャしてるんじゃないわよ。ちゃんと指示通りやりなさいよ!!失敗したらあんたに一生付きまとってやる!!それからこのあんたのお気に入りのこの男との仲を絶対に邪魔してやるから!!分かってるんでしょうねえ?」
嫉妬と緊張感のないマルコスに完全に頭にきたタカコは、マルコスの首を両手でつかんで鬼の形相で今にもキレそうな低い声で言い聞かせた。
「ワカッテマス」
マルコスは恐怖で震えながら答えた。
トッシーは動画撮影スタッフを連れてやってきた。動画撮影スタッフはトッシーの双子の兄のカツオでトッシーと顔が瓜二つだった。タカコはその2人のことを「オカマの双子」と陰で揶揄していた。
トッシーは手をたたいてからタカコに言った。
「もう言ってるけど、これはね、ライブ配信だから、世界中にリアルタイムで配信されちゃうけど、どんなことになっても恨みっこ無しってことでいいわよね?
じゃあ、ビデオまわしていいかしら?」
タカコは深くうなずいて了承した。
「分かってるから、はじめてちょうだい」
またトッシーのウザイ最初のあいさつがはじまった。
「見たい、聞きたい、知りたい!!
なんでもしゃべっちゃうよん!
お姉系暴露系チャンネルのトッシーだよん。
今日もみんなやっちゃてる?
うん?
うん?
あっそう」
「今日はオプティ社長の奥様が来てます」
「こんにちわ」
タカコは満面の笑顔でカメラの方にあいさつした。
「なんかごめんなさいね
あたし、暴露しちゃってえー」
(全然謝る気ないくせに)
タカコは内心ムカっときたが、怒りをぐっと抑えた。
「どう、旦那さん怒ってないかしら?」
(メッチャ怒ってますけど!!)
タカコは再度怒りをぐっと抑えた。
「ゼンゼン大丈夫!!うちは夫婦円満です」
「そうなの?」
「不倫OKってこと?」
「公認不倫?」
「お互いに干渉し合わないってこと?」
意外な反応にトッシーは質問責めにしてきた。
「ちょっと待ってて、本人連れてくるから」
「本人って誰?ちょっと聞いてないんだけど」
タカコは会議室をでてから、マルコス・アオイ・マサキを連れてきて、マサキを真ん中にタカコの隣に彼らを座らせた。
「えっ?えっ?何これどういうことなの?」
「紹介するわね、こちら天使の歌声さん。その通訳さんと天使の歌声さんのお友達」
タカコはどや顔で彼らを紹介した。
トッシーは不倫の追求をしようと勇んできたのに、想定外の事態に頭がパニックになりそうになったが、それならそうと真相を追求しないといけないと思い何とか理性を保とうと試みようとした。
タカコはビデオの方に行き、カメラにアップになってキッパリと断言した。
「不倫はしていません!!」
「ビデオにうつってたのは、私ではなく、天使の歌声さんのお友達です」
「でも、ゴールドホテルでのナンパしてきたのは何なのよ?」
「あれは、天使の歌声さんのお友達と私が似ているから、間違って声をかけて来ただけ」
どうやら、フェイクニュースを伝えてしまったことにどうごまかそうか、とか、いろいろトッシーに頭でグルグルまわっていたが、トッシーはプロ根性でなんとか仕切り直さないといけないと自分を奮い立たせた。
「じゃあ、これで誤解も解けたとこだし、帰らせてもらおうかしら」
タカコたちが、席を立とうとしたら、トッシーが待ったをかけた。
「天使の歌声さんは、そのお友達とはどういったご関係なのかしら?」
すると、通訳役のマサキとマルコスはコソコソ話しをしてから、マサキが答えた。
「友達です」
「キスとハグしてたけど?」
再度コソコソ話してから、マサキが答えた。
「したかもしれない」
トッシーは、マルコスの目を凝視して聞いた。
「ほんとにお友達?」
するとマルコスはコクコクとうなづいたので、すかさずトッシーは追求してきた。
「あれっ、日本語分かってるわよねえ?」
すると、マルコスは手をブンブンふって、「分からない」ことをすぐにアピールした。
「やっぱり分かってるじゃない」
今度はトッシーはアオイの目を凝視して聞いた。
「あなた、天使の歌声さんとは友達?」
すると、今度はアオイとマサキがコソコソ話し始めた。マサキはアオイの声で男であることがバレると思ったので、直接トッシーと話さないように指示していた。
「あなたは、どう見ても日本人よね?」
「恥ずかしがりやなので」
マサキが答えた。
リアルタイムでコメントが来ているのをカツオが読み上げ始めた。
「トッシー、やばいよ、コメント欄荒れてるわよ。
『なんだよ、トッシー、ガセネタかよ』
『ツリだと思ったわ』
『オプティ社長の奥さん、かわいそう。いい迷惑だわ』
『トッシー、最低』
『なんでも暴露すればいいってわけじゃないだろ』
『でっち上げたもん勝ちかよ』
『嫌いだわー』
『謝れ!!』」
「トッシー、謝罪だ。謝罪だ」
カツオがとっさに謝罪の指示を出し、謝罪後に動画配信ストップを指示した。
「この度は、間違った内容の動画を配信してしまい、申し訳ありませんでした。タカコさんとタカコさんのご家族の皆様にご迷惑をおかけしましたことを、心から謝罪申し上げます」
トッシーは頭を深々と下げた。
結局、タカコとマルコスの不倫疑惑は間違いだということは証明された。トッシーは間違い動画を配信してしまったことへの謝罪緊急対応に追われて、マルコスとアオイの関係はこれ以上追求されることは無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます