第24話 迷宮街 二

 ――――――俺達は砂漠の迷宮街に囚われた。


 ――――だが、今回は決してミスをして、魔法をかけられたわけではない。俺もクロエルもシャルも、封印魔法にかけられるを若干予感していた。そりゃあ、こんな怪しそうな街なんて、聖域以外の何物でもないだろう。


「やっぱりか。少し予想はしていたんだがいざ封印魔法にかけられると、それなりに緊張感が走るな」


 クロエルの顔は戦闘態勢の時の顔だった。しかし、一方シャルの方はというと―――。


「 いや〜、ついに来ちゃったね~」


「そうだな。来ちゃったな」


 呑気そうだ。俺も含めて。


「お前達。もうちょっと緊張感を持たないか」


「いや、分かるんだけどさ。そんな緊張したって良いことないって。どれだけ緊張しようと、死ぬ時は死ぬんだからさ」


 俺はあくびをしながら眠そうに語る。それを見たクロエルは頭を抱えながら、なんとも呆れた顔をしていた。


「……まぁ、いい。もし何かあっても私は知らないからな」


「ハイハーイ。分かってるって。それに、今の俺は前みたいに弱くない。多少は戦える。もしかすると、今なら仮面にも――――――」


「それはない」


 クロエルは遮るようにツッコむ。でもまぁ、現実はそうか。いくらなんでも仮面のやつには勝てない。なんせ、仮面はクロエルよりも強いんだから、まず、クロエルに勝たないとな。


「そういえばさ、俺ってこの三人の中で一番弱いまである?」


 俺はふと思った。今はこんなことどうでもいいことくらいは分かっているのだが、一応聞いてみたくなった。


「そうだな」

「そうだね」


 二人はさも当たり前かのように言った。………ちょっとまて、よくよく考えれば、俺はいくらなんでもシャルには勝てるんではなかろうか? 確かにあいつはクロエルと同じくらい化け物じみた身体能力をお持ちのようだが、逆に言えばその程度。なんの魔法を使うかは分からないが、どれだけいい魔法を使おうと、クロエルの未来視できる魔法を使えば、ぶっちゃけなんとかなる。

 ―――――――――これはいけるのではなかろうか?


「おい。シャル。ちょっと待て」


 俺は立ち止まって、歩いているシャルに後ろから声を掛ける。


「ん?なに?」


「俺と………タイマンはれや!!!」


 俺の言葉が、叫びが、こだまして街全体に鳴り響く。そして、その発言に驚きを隠せない人が二人。


「………お兄ちゃん? 何を言ってるの?」


「……お前。………クズだな」


 どうやらクロエルは俺の思っていることが分かるらしいので、俺のことを落ちているホコリを見るような目で見てくる。正直胸が痛い。

 ―――――だが、俺は!例え誰かにクズ呼ばわりされたとしても、俺の信念を曲げることはできない!したくない!


「………いいよ。でも、やるからには本気だよ?」


「 いいぜやってやる。お前の可愛い面をグチャグチャにしてやるぜ――――」


 正直ニヤケが止まらない。いくらなんでもこんな幼女に負けるはずがない。負けたら全裸でこの街を歩いてやるぜ。




 ―――――二分後。日差しが素晴らしい砂漠の街に、神のようにたたずむ男が一人いた。


「今日もいい天気だな………」


 太陽の光は俺の二つの太陽を照らしており、隙間を突き抜ける風が心地よい。






「……………ボロボロ負け負け」








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る