第22話 いつものオチ

 ―――――俺は、死んだのか。――――――っていうくだりは何回目だろうか。

今まで何度もこんなことを繰り返してきた。だが、今回はいつもとは違う。なぜなら、雲に届くくらいの高さから叩きつけられるように落ちたのだから。さすがに俺の体は今頃ぐちゃぐちゃに―――――――。


「………ねぇねぇ。お兄ちゃん。早く起きてよ」


 シャルの声が聞こえる。――――ということは俺はまだ死んでいないようだ。どうやらまた生き残ったらしい。


「………お兄ちゃん。……お姉ちゃんが」


 お姉ちゃん。あぁ、クロエルの事か。ていうか前も思ったけど、いい加減お兄ちゃん呼びはやめろよ。お前の方が何十倍も年上なんだから。

 俺は砂浜に倒れている俺の重い体を引き起こし、シャルの方を見る。


「ん……。よいしょ!! ……あぁ。なんだ? クロエルがどうかしたのか?」


 シャルは泣いていた。なぜなんだろう。――――と思ったが、すぐに原因が分かった。


「……死んでる」


 きめ細やかな砂の上に、それ以上の綺麗な肌をした顔と腕と足がついている体が―――――落ちていた。


「…おい!起きろよ!お前はこんなところで死ぬたまじゃねぇだろ?!」


 俺は疲れ切って上がらない足をなんとか引きずりながら、手でハイハイをして、クロエルに駆け寄る。


「おい!おい!…嘘だろ………」


 クロエルは全身の骨が抜かれたようにだらっとしており、何度呼んでもうんともすんとも言わない。

 俺はクロエルの体を残った力で持ち上げようとするが、持ち上がらない。


「くそ……」


「お兄ちゃん。たぶんもうお姉ちゃんは………」


 ――――――――シャルも俺と同じことを思っていたようだ。クロエルは、恐らく、死んで―――。


「ふわぁぁぁぁぁ――」


 女の寝起きのあくびが聞こえる。どこから? ―――――ここからだ。


「……ん? どうしたんだお前達。なぜそんな泣きそうな顔をしている?」


 クロエルはスラっとした声で寝ぼけた顔で訊ねてきた。


 ……死ねよこいつ。

 俺はつい先ほどまで死んでほしくないと本気で思っていたが、今は逆。ほんとにお前死ねよ。俺の心配返せよ。いや、ちょっとこの落ちはなんとなく想像してたんだけどさ。でもさ。


「お前。………とりあえず土下座しろ」


「うん。しゃざい!」


 俺とシャルはまたもや同じことを考えていた。


「なんなんだお前達。私に喧嘩を売っているのか?」


 こいつ。よくもまぁそんなセリフを堂々と言えるな。ていうか察しろよ俺たちの半泣きの顔とこの状況をさ。


「……ま、いいや。お前が元気ならそれでいいよ」


 別にここでこいつを責めても仕方ない。というかむしろ感謝するべきだろう。俺もあの勝利に貢献したが、こいつの魔法と剣技がなければ、勝てなかった。そしたら今頃俺の体は穴だらけになっていただろう。


「…?」


 クロエルはハテナ顔をしていた。だが、その顔は、むかついたと同時になぜか安心感があった。


「とりあえず。もうすぐ日も暮れるし、今日はこの海で寝るか」


「えー、寒いよー」


「そうだな。ここで寝るのは愚策だ。朝起きたときに風を引いてしまう」


 俺は少し納得がいかなかったが、この二人の意見に従い、海から離れて、遠くに見える砂漠方面に向かって俺たちは歩き出し、途中、いい感じのジャングルに入り、そこで休むことにした。

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