第11話 男と女と剣と
―――――――うみゅー。
―――――――グガーっ。
ある山の中で、青年と美少女の眠っている声が聞こえる。
「グガッ!グガーっ!」
「うーん。……うるさいよぉ」
レガンのいびきにクロエルは半分目が覚めるが、まだ寝ぼけていて、キャラが崩壊していた。
「グガァ!!」
レガンはひときわおおきなイビキをあげて、寝返りをうち、右手をクロエルの顔に乗せる。
「うー、止めてよ、お母さん。………お母さん。…………お母さん?」
クロエルはあり得ない現象で目が覚めた。いないはずの母親が自分と一緒に寝ている。それはおかしい!と思って、上半身を起き上がらせて、辺りを見渡す。
「………え?」
ボーっとしている。というよりも頭が高速回転しすぎて、手足が動かない。――――――しかし、すぐ隣に頭が茶色の男が寝ていた。
「―――――ギャアァァァァァァ!」
クロエルの悲鳴が天まで届くほど鳴り響く。そしてその声は茶髪の男のアラームとなった。
「―――なんだ?! なにがおきた?!」
レガンは体ごと飛び起きて、クロエルの目の前に立つ。―――――そのままニ、三秒経つと、クロエルは衝撃的なブツを目にする。
「――――あ、ああ、ぁ」
クロエルの顔は吹き出る火山のように真っ赤になっていた。理由は、レガンが立ったとき勃っていたのだ。
「あ? なんでそんな顔してんだ?」
レガンは赤いクロエルに疑問を抱くが、視界の真ん中にクロエルの顔があると同時に視界の下の方にはムクっているあれがあった。
「あ、いや、これは、その……」
レガンは必死で手で隠す。しかし、そんなことはもう遅く。クロエルの脳裏には服越しでもあれが伝わったのだ。――――だが仕方ない。男の志は寝起きに勃つものだ。
「お前、殺す」
クロエルは鬼神の顔でゆっくりと立ち、腰にある刃物に手をかけようとした。
「待てって、これは不可抗力なんだ。朝にあれが勃つのは付加効力なんだ」
だが伝わらない。こればっかりは女と男の境目だ。というかむしろクロエルはより怒りと恥ずかしさが徐々にエスカレートし、本格的に剣に手をかける。
「問答無用!」
「ひぃ!お助けを!」
―――と、レガンは目を瞑る。だが、いくら待っても何も来ない。恐る恐るレガンが目を開けると、そこにはさきほどの感情が嘘だったかのような顔をした少女がいた。
「………無い」
「え?」
「剣が………」
クロエルは震えた声で、額から冷や汗をかき、少し体を震わせていた。
「母の剣が無い!!!」
そう。この時ようやく気づいたのだ。恐らく命と同じくらい大事なドロシーの、母親の形見の剣が無くなっていることに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます