第50話 ノエル記者の詰問
「アーネス!」
「うお、びっくりした」
呑気に礼拝堂の長ベンチで考える人のポーズをしていたアーネスに喝をいれると、彼は全くびっくりしていなさそうなトーンでそう言う。
「アーネス!」
「なんだよ、2回も叫ぶなよ」
くそっ、二回連続で叫べば多少は驚かせられるかと思ったけど、流石にダメか。
ま、意地になってごり押しを続けるより、さっさと本題に入ってしまった方が良さそうね。
「院長さんはどこに行ったの?」
「ん、ああ。ちょっと出ていったよ」
「なんで!?」
なんてこった。予想外の展開だぜ旦那。
さっきまで驚かせようとしてたやつが驚かせられちまったよ。
確かに順番待ちの表明はしてなかったけど、そんな重役みたいな早上がりの仕方するとは思わないじゃん。
いや、間違いなくこの治療院の重役ではあるんだけど、それはそれ。
まだまだ日も高い時間帯じゃないの?
「なんか、俺の身体について調べてくれるらしい」
「アーネスの身体?」
あー、なんかアーネスって不思議な身体してるんだっけ。
元日本人からすると不思議ばっかりな世界だったもんでお姉さん忘れちまってたよ。
てなると今はアレかい? 結果が出るまで待合室で待っててくださいって感じのやつかい?
「なんか取りに行ってるだけだから、そんなに時間はかからないってさ」
「あらそうなの」
だったら都合がいいね。
ノエルちゃんは丁度アーネスにも聞きたいことがあったんだ。
膝に頬杖立ててる場合じゃありませんよ。
これからノエル記者の質問攻めが待ってますからね。
「ねえアーネス」
「なんだ?」
「同年代の女の子襲ったことあるって本当?」
私がそう聞いてみると、アーネスの頭が頬杖から滑り落ちた。
そのまま前のベンチにごっちん。
額が赤くなっちゃったわ。
「お前には関係ないだろ……」
「関係あるよぉ!」
当たり前だろ!
そんな噂立ってるやつがお姉ちゃんの隣にいていいと思うなよ!
どうせお前はお姉ちゃんにしか興味ないから私は大丈夫だろうけど、人のお姉ちゃんたぶらかそうとしてるならただじゃおかねぇぞこら!
そんな感じのチクチク言葉を次々ぶつけてみたら、アーネスの肩がどんどんベンチの下の方へ埋まっていってしまった。
最後の方なんて椅子からずり落ちるんじゃないかってくらい埋まってしまっている。
首の角度を変えたらそのまま股下を覗き込めるんじゃないだろうか。
「……だからだよ」
「ああん!?」
あら、いつの間にか語気がカタギじゃなくなってきてしまっているな。反省反省。
それにしてもだから、ってなんだろう?
気を抜くと女の子襲っちゃうからお姉ちゃんで矯正しようとしてるとか言うんじゃないだろうな。
「これからもレーダの傍にいたいから、今調べて、直そうとしてるんだろ……」
「え」
あ、そっか。
女の子を襲ったなんて噂が立ったのは、その身体のせいなのか。
それは……なんだか悪い事を言ったな。
……ていうか、随分イケメンなこと言いやがって。
「それ、お姉ちゃんの前で言ったらプロポーズになっちゃうよ?」
「えっ、そうなのか!?」
そうなのかってなんだよ。
ひょっとしてもう似たようなこと言いました、なんて言うんじゃないだろうな。
ちくしょう、お姉ちゃんが羨ましくなってきた。
こんなにウブな美形男子をたぶらかしちゃって、本当に罪な女だね……
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