第47話 聖印克服計画
「ふむ、聞き込みか」
なんでも、お姉ちゃんは一村中をめぐって、アーネスの信頼回復のため、いろいろやっていたことがあるらしい。
最近は割と家にいるけど、一時期はずっと外に出てしまっていたから、かなーり寂しかったのを覚えている。
「つまり、そのとき一緒にいた人がいればお姉ちゃんの評判も聞き込みやすいでしょ?」
「なるほどな」
もちろんそれは、アーネスのことだ。
アーネスの外出にお姉ちゃんあり。
お姉ちゃんの外出にアーネスあり。
一時期はそんな感じの関係だったと聞き及んでいますよ大将。
まったく、人のお姉ちゃんをたぶらかしちゃって……
「なんだその変な顔」
「変じゃありませんー」
おっと、本当にこの身体は表情に感情が出やすいみたいだね。
気を付けないと。
「まあ、どこから回る? 行きたいところがあったら言っていいよ」
「行きたいところか……そうだな……」
お、何かいいとこの心当たりがあるのかしら。
アーネスはその手を顎に当ててなにやら考え始めている。
まあ、私は外に出たことないから、この辺は任せちゃっていいだろう。
さあ、この村にはなにがあるんだい。
「だったら……治療院に行ってみたい」
「いいじゃん!」
そうかそうか、この世界結構ヨーロッパ風だもんね。
そりゃ教会っぽいところには人が集まるでしょう。
なかなか賢いじゃないのアーネスくん。
流石、前世入りのスーパー女児が認めるだけあるね。
「ん? どうしたの?」
あれ? なんかアーネスの赤い目がキリッっとしてるぞ。
何、治療院ってそんななんか覚悟決めないといけない場所なの?
え、だとしたら怖いんだけど、大丈夫?
「いや、なんでもない」
「そ、そう」
なんだろう、ただカッコつけただけなのかな。
だとしたらちょっと笑っちゃうけど。
ま、話したくないなら深堀りするもんじゃごじゃーせんわね。
***
ノエルの申し出はいい機会だった。
ここ数日でダイアーさんから聞いた話では、王都ではやはり、妖精神の信仰が盛んらしい。
そしてそれは、レーダと俺が目指す、学園内部でも同じことなのだそうだ。
それはつまり、王都に出てから妖精神の聖印を見る機会が増えることを意味する。
本当に王都で暮らしていくのなら、俺は聖印に対する謎の恐怖心を克服しなければならないのだ。
と、思っていたのだけれども。
「どうしたの?」
「え、いや……うん」
治療院の入口で、屋根の上に設置された、四つ輪の聖印。
今までは目に入らないように、フードで視界の上のほうを隠していたりしたけれど……
「なんともないんだけど」
何故か、聖印を見ても何とも思わない。
別に怖いとも思わないし、気持ち悪いとも思わない。
むしろ、怖くないことが気持ちわるいくらいだ。
本当になんともない。
「ならいいじゃん」
「いや……」
そういう意味じゃない……
ってまあ、説明するのも難しいんだけど。
いや、事情をしらない奴に説明するの無理だなこれ。
諦めよう。
「おや? 君は……アーネスくんかい?」
なんだ? 俺の名前を呼ぶ人なんて珍しい。
そう思って振り向いてみたら、思わず。
げっ、という声を上げてしまった。
「神官のおっさん……」
レーダと俺が出会った日以来か。
首から聖印をぶら下げた、やけに俺のことを気にしていたやつ。
しばらく会っていなかったけど、いざ出くわしてしまうと異様に気まずいな……
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