第二章 宇宙人来襲

第10話 秘密裏に行動

「なぜ、亜空間に入らない?」

 教授が気になったようで、聞いてくる。


「情報によると、痕跡を残すとまずいそうでございます。恨みを買った組織があるそうですね」

 そう言われて思い出す。

 潰された組織。


 関わった者達はどうなったのか知らない。だが、直接関わっていなかった者達構成員はどうなった?


 組織が潰され、わしが原因だと、そんな情報が流れれば。

「あぁー。そうだな。痕跡は残せない。通常空間をゆっくりと急いでくれ」

「はい。承知いたしました」


 そう言って、パイロットシートへ着座する彼女。

 ビクッとなったのは、機体とリンクをしたからだろう。


 全方位を視認しながらのオペレート。

 幾ら加減速を行っても、内部空間の重力は下方へ一Gに固定されている。

 これは場における原子核の中間物質を電気的にコントロール? いや、電位? ともかく力の向きをそろえるコントロールを行っている。


 そのため、宇宙船内部では物質に掛かる、加減速の変化を気にしなくていい。


 そのおかげで、内部では驚異のスピードで移動していく宇宙船を気にしなくていい。ゆっくりと思考の中に、没することが出来る。



 賢者達のことだ、すべてを見通すことが出来るのに、あの事故は起こってしまった。わしの思うとおりにだ。


 彼らの思うとおり。


 だとすれば。

 彼女、マイリとか言うランクツインの娘が、彼の安全のため、試作品でも作れば装備をさせるだろう。

 その結果は、どうやって判断をする?


 そうだ、実験と理論は良い。

 実証事件で、実験動物の脳波や魂を比較? 

 有意差など、出やすまい。


 そもそも実験動物で、確実に転生体だと、どうやって判断をする?

「あっいや。私の考え。その根本が間違えている可能性がある」


 論文を読んで、我らドラガシメルという種族の中で輪廻を繰り返すものだと、安易に考えてしまった。賢者達の脅威にはならないと言う言葉からすると、それ以外が圧倒的だと思った方が正解なのだろう。


 この宇宙。違う生物まで含めて、転生の可能性は無限だ。

 我らが出会っていない生命体まで、存在する可能性がある。


 だとすれば、賢者として何をしたい?


 私が馬鹿な計画を試し、脅威にはならぬ別の種族への転生。

 そして、意思の疎通が出来ればなお良し。


 よく分からない技術を持って、それが造られるまで待つ。

 おバカなわしが手を下し、その後、結果が出るまで、わしは泳がされていた?

 結果が出たから、確認をせよと?

 ストンと、何かが納得が出来た。


 そして、この黒髪黒目のオプテミウム。

 人工生命体として、製造をするのにもそこそこの年数は掛かる。

 いきなり、大人のボディを作っても動かせないからだ。

 基本OSが何か分からないが、知識と、振る舞い。

 教育レベルはかなり高度だろう。


 教授は知らなかった。

 一般的な、人工生命体。

 それと、最上位種は全く違うことを。

 賢者達が器を変え、長生きする方法を模索し、ほぼ形となっていたこと。

 死の間際には、もう意識の拡散が始まり、なかなか完全体での移動が出来なかった。そこに、彼女の研究。

 

 特殊なエネルギーで、魂の拡散を防ぐ。

 あの事故の時、木星上で彼らの遺体は回収をされた。


 いや彼の遺体と、保護された彼女。

 彼女の魂はスキャンされ残されていた。

 オリジナルと、スキャン後のクローン。幾つもの実験がこの十数年で行われた。


 そして、シグナルのキャッチ。

 賢者達は、己達の幸運を喜んだ。

 さすがに、摂理を曲げて転移先までは、影響を与えることは出来ない。

 だが、地球での新人類で、上位者の能力発動シグナルと言う明確な証拠。

 すぐに計画を、開始した。


 彼は元々の可能性として、上位種に進化する予兆を持っていた特別種。

 今回の事故で、あっさり死ぬとは思っていなかった。

 事故の報告が入ったとき、リアルに『死んでしまうとは情けない』と数人の賢者が叫んだ。


 ********

 

 そして本人は、困っていた。

「あっ。ほらほらもう九時半を過ぎた。送っていくから、みんな帰ろう」

 部屋に遊びに来て、牽制をしあい、帰ってくれない女子達。


「試験勉強は、毎日少しずつすれば良いから」

 そう言って、みんなを部屋から押し出そうとする。


「むう。そうね。イシ○ワ。ボ○マ帰るわよ」

 こんなことを言うのは、伶菜。アニメの影響だ。


「だれが、ボ○マよ。せめて、サ○トーかト○サにして」

 背の高いまどかが答えるが、一番背が高いのは伶菜だ。


「あれ? 誰か忘れている?」


「ああ。そうね、りゅうじー」

 話を振っておきながら、雑に返事を言って、伶菜が抱きついてくる。


「ちっ。泣き虫バ○ーね」

 まどかが、思いだしたようだ。

 結局みんなとハグをする。


 送っていくとなると、すぐお近くは、彩だ。

 隣だからな。


「ちぇぇ。ずるいぃ」

 わめく奴を放置して、次は伶菜。


 送っていくと、竜一さんがでてきた。

「おう、竜司。悪いな。だが、最近調子くれてるようだなあ?」

「いえいえ。そんな事はありませんよ」

「そうか。なら良いが、うちの娘が夜泣きをするんだ。うげっ」

 脇腹に、伶菜のボデイブローが刺さる。


「父さん、つまんない嘘を言わないで。竜司君お休みぃ」

「ああ。お休み」

 竜司達を見送ると、伶菜は竜一お父さんを片手で引きずって家へと入る。



「あそこのお父さんて、いつも怖いね」

「あーまあ。いい人だけどね」

 横に並ぶ竜司を見て、まどかは考える。


「ねえ、竜司くん。こっちの公園を突っ切れば」

「遠回りだよな」

「あっいや。そうだけど。もう」


 そして無事配達を終わった。


 帰って、自室のドアを開けると、再配達の奴が戻ってきていた。

「お帰り。みんなを送ってきた?」

「彩。お前は何をしてるんだ?」

「うん? きちんと、着替えとパジャマを持って来たし。お泊まり会。まさか、いや?」

 ぐっ、その聞き方は卑怯。だが理性が。



「いやじゃ無いが、この年だから良くはないだろう?」

「へへっ。婚約者」

「ああ、そうだな」


 すると、いきなり顔を真っ赤にして、ふわっとスカート翻し反転する。

「あっ、お風呂行ってくるね」

 そう言って、勝手を知っている、うちの階段を降りていった。

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