第9話 過去の因縁は、萌芽する
「ああっ? 何だと。野郎がお前の他に婚約者だぁ。おまえら、付き合っていたんじゃないのか。あぁんっ」
伶菜のお父さんは激怒した。
まあ、事情を知らないでの、突っ走りだが。
「いや、あんときだって、別に付きあうとは言っていなかったし。手を出したのはお父さんでしょ」
「うっ。そりゃダチだって言っても、強いには越したことはないだろう。あいつは強かった。ちと入院をしたおかげで、工事が遅れて、施主に謝ったんだ。大損だ」
顎をさすりながら、お父さんは思い出す。
「それで、やつとは付き合うのか?」
「うーん。一応そのつもりだけれど、なかなか、あの二人の間に割り込むのも、本当は気が引けるのよね」
竜一さんは悩む。
お父さんの名前は竜一さんなんだよ。身長一八〇センチ位の大工さん。
俺の名前が竜を司るので、悩んでいた。負けたので余計に。
「だが、おめえ。りゅ竜司のことを、そのぉなんだぁ。好きなんだろう?」
「そりゃそうよ」
「むう。何とかしてやりたいが。難しいな。殴り込んですむなら簡単なんだが」
「やめてね」
娘から、奥さん。鏡子さんの血を引いているのを確信する。何かを感じた竜一。
「おう。今は、
「なに? 地球表面から謎の力?」
「ええ。そうです。上位の方々の使う力。多分その放射だと思われます。データは軍が握っておりますので、まだ詳細は取れておりません」
面倒な事になってきたようだ、少し、あの方々に情報を回して、助力を願うのが良いのかもしれんな。
そうして、叱られる羽目になる。
アンガ=ロス教授は、頭を抱える。
「私は、あなた様がたのことを……。ことを思い。良かれと……」
「それが浅はかと言う物。例の論文は我らも見た。その上で脅威にならぬこと、そしてその発想を元に、輪廻の根幹を制御し、再び現世に戻る道も、すでに発想を得た」
そう説明をされ、さらに上位の者達の知の深さを垣間見る。
「おぬしは、浅はかな発想で、力あるものを屠った。そちらの方が重要だ。職を解くから、ゆっくりとするがいい。そして、その者が輪廻の壁を越えたのであれば、贖罪の方法を考察することだな。貴様は、セクスタプレト。じゃとすれば、もういい年だろう」
「くっ。はい。ありがとうございます」
教授は、自身の未熟さを賢者達に暴露し、褒められるどころか職を失うことになった。
さらに、やつに対しての贖罪をせよと。
意識外の攻撃だったが、優秀な軍人なら避けろよ。
そんな理不尽を考える。
そして翌日。
大学に行くと、すでに教室と、自身の部屋は閉じられ、荷物はホールに積み上げられていた。
「なっ。なんじゃこれは?」
当然、考えられない仕打ち。
壁の案内板からも、自身の名前が消えていた。
事務局に向かう。
おっ。事務局長のソロネを見つける。
色々なことを手伝わせていたのは、この男。
「おっおい、ソロネ」
呼び止めると、思いっきり睨まれる。
「どなたでしょうか? 部外者の立ち入りは禁じられております。それに、何故か私も昨日付けで役職がなくなって、単なる職員となっておりますので、これからを思案しております。いいえ、私だけではなく一件に関わったものすべて。裏の組織は昨夜の内に潰されたようですし、どこかに姿を隠さねばなりません。では、急ぎますので。失礼」
そう言って、そそくさといなくなってしまう。
元教授は、重要なものを山の中からより分けて、残りは家に送って貰う様に依頼をする。
家は、まだある。
情報を見ると、クレジットも全額。
そのままあったが、賢者の言った弁済という言葉を思い出す。
「これは、行動を起こさないと、わたしは?」
それに、元事務局長ソロネの言った、裏の組織が潰されて。姿を隠さねば……
「やばい。やばいぞ。どうしてこんな事に。じゃが、伝えてなくともあの方達は気がついておった。ひょっとして、輪廻の流れの中に干渉をして。まさか、あの方達が……」
アンガ=ロスは、何とか伝手を使い、星間宇宙船を一隻入手をする。
そこ以外は、潰れていた。
そして、用意されていたかのように、丁度良い感じの宇宙船と、人工生命体の助手を入手した。
宇宙船の操作用だと言ったが、このモデルはオプテミウム。最新で最上位。さらに特殊なカスタマイズが行われているのも見て取れる。
それに何より、所有者登録を拒否された。
「失礼ですが。あなたでは、マスターになれません」
「なっ」
「ご命令を」
驚く教授など、ほとんどアウトオブ眼中である。
「くっ。宇宙船の準備をして、あるところへ向かう」
「あるところとは、どちらでしょうか?」
「何故聞く」
「目的が分からなければ、準備の予定が立ちません」
「ぬうぅ。地球だ」
「正解でございます」
「なっ」
答えを聞いて確信をする。
「賢者様の掌か」
これからの残り。人生をかけて贖罪をせよと言うことなのか。
教授。いや元教授アンガ=ロスは、賢者による。ざまあ計画の渦中に、己がいることを理解する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます