第7話 ちゅら場。美らとも書く

 とりあえず、まどかをなだめる。

 頭をなでなでと。


 すると、首をひねりながら帰ってきた二人が、それを見つけると、怒り始める。

「なにをしているのよぉ。私もぉ」

「まどかずるい。私もぉ」

「「へっ?」」


「私は、竜ちゃんの婚約者。だから良いのよ。どうして伶菜も?」

「えっそりゃ。竜司くんが好きだから」

「えっ? 聞いてないよ」

「言ってなかったもの」

 そう言って、むーとにらみ合い。


 つい、後頭部を押したくなるよね。

 当然チュッと、二人がキス。

「「ふえっ」」

 なんか、ふたりとも変な声が出た。


「何をするのよ?」

「仲良く、しろ」

「むぅ」


「で、でで。まどかは?」

「なんだか、俺のことが好きらしい」

「「はっ」」


「好きらしい。じゃないわよ。どうして、そんな事に。何か能力を使った?」

 何で俺を見る。


「いや違う。好きだって思ったのは、中学の時だし」

 まどかが暴露をした。

「えっ」

 


「そうよ。何度も言ったじゃ無い」

 伶菜が参戦。


「へっ?」

「私たち、何度も竜司君が好きって言ったよね。それなのにいきなり婚約。ずるいわよ」

 そう言うと、目が泳ぐ。


「いや好きって、ライクでしょう?」

「「ラブよ!!」」

 二人そろって告白。


「おおう。ありがとう」

「えー。あれ? 私が悪いの?」

「「そうよ!! 勝手にバランスを崩すな。良いわね」」

「えっでも。正式にお家で決めたし。わたし竜ちゃんに下着姿を見られたし」

 彩がそう言うと、二人の目が説明ぷりーずと訴える。


「あーこいつ能力が発現をして、うちに見せに来たけれど、周りは可燃物だし、服まで燃やして、消して、その時服を脱がした」


「「事故じゃん」」「竜司君。無罪」

 二人がビシッと、俺を指さす。


「でも下着ぃ」

「その位見せるわよ」

 そう言って、まどかは上着とスカートを持ち上げる。

 ピンクの花柄セット。


「あっ。セットずるい。私は黒とベージュ」

 そう宣言をして、伶菜も服とスカートを捲り上げる。


 するとだね、部屋にノックが響く。


「申し訳ありません、当店そのような行為を禁じております。おとなしく歌うのと帰るの選択をお願いいたします。あと、大盛りポテトのサービス期間中です。ご注文は?」

「歌います。ポテトください」

 そう言うと、笑顔で答える店員。


「承知いたしました。お客様。三股は不毛ですよ」

 そう言って店員が出ていった。



「はあ。そうよね。昔っから、私たち竜ちゃんが好きって、集まっているんだもん」

 彩がブチブチ言い始める。


 そこからは、もうラブソングのオンパレード。

 大盛りポテトは、値段そのまま量が倍になっていた。


 どんぶりに山盛り。


 まあ、三人とも喜んでいたから良いけれど。


 生活はどうも、不安定になったようだ。

 その週末、鈴木家で話し合いがあったようだが、状態が変わるまではこのままとなったようだ。

「もうみんなに言っちゃったし。堂元家と黒木家では、納得をしていないよね」


「あーはい」

 そんな感じと言うことで、婚約は継続。


 堂元家は、「まだ若いんだし、そこまでもしなくても」という感じ。

 将来的には、同棲でもしてプレ結婚で決めろというタイプのようだ。


 そして、黒木家。

 本来なら、「婚約ぅ。おう伶菜。相手連れてこいやあ」と言う感じのお義父さんで、あれは中三の時。騙されて伶菜に家へ連れて行かれて、すでにバトル済みだったりする。テレフォンパンチで殴りかかられて、つい反射的に左の脇腹にボディを入れて、顎が下がったときに下からのストレートを打ち上げた。


 確かあれで、お義父さん。何本か歯が逝ったはず。

「ごめんなさい」

「中三でそれか。結構見所はあるなあ。だぁがしかぁーし、まだガキはつくるなよ」

 そう言って、釘を刺されている。


「あれっ、あれって婚約か?」

「何が? なになに」

 今日は日曜日。ここは俺の部屋、何故かみんな下着。


「きっちり横並びになるための儀式」

 だそうだ。


「あっいや、中三の時に伶菜に騙されて、家に行ったとき、俺お義父さんと戦って、まだ子供は作るなって言われたけれど、あれって婚約か?」

「うーん? どうだろう。お父さんに確認しようか?」

「いや、しなくていい」

「どうしてよ。そうなら、うちの方が先じゃない」

「だからだよ、あのお父さん。ごねて殴り込みにくるぞ?」

「絶対くるわね」

 娘である伶菜は、その姿が見えるそうだ。


「まあ、鈴木のお父さん。悠馬さんも強いからなぁ」

 俺がそう言うと、三人とも驚く。


「えっ。ふだん会っても、彩をよろしくねぇ。という感じだよ」

「ああ娘に嫌われることを、もっとも嫌悪しているからな。覚えていないか? 昔の花火大会。俺達が、ガラの悪そうな兄ちゃんにぶつかったとき」

「ああ。竜ちゃんが武道を始める切っ掛けになった件ね」

「あれ、やばいって、警察を呼びに行くとき。一瞬で三人を倒したんだぜ。その後さあ、気持ちがまだ静まってなくて、お父さんの顔を見た瞬間に彩と葉月が泣いたんだよ」


「えっ。そうだっけ?」

「そうだよ。二人が泣いたときにオロオロしてさ、俺にしがみついてきたんで、お父さん呆然としていたし」

「そうだったけ?」

 そう言って首をひねる彩。


 だが、それでは、ごまかせなかったようだ。

「それで、誰が一番?」

 体型が完璧なのは、まどかなんだよ。次が伶菜。

 彩。君の脇腹、ウエストの所にぽよんがいるのだよ。

 他の二人は、きゅっと締まっている。


 だが、そんなことは言え無い。

「三人ともお美しく、まるで美ら場と表現をしたい」

「美ら場? なんで沖縄の言葉?」


 その後なんとか謝って、服を着て貰う。

 だってさぁ、顔は穏やかだけど、みんな背後に修羅が立っているんだもの。

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