第5話 影響色々
「昨夜、日本列島。特に関東を中心に、原因不明の波動が観測をされました。これによる津波の心配はありません。さて、微弱な震度一から二という揺れが日本列島全域で発生したそうですが、原因は何が考えられますでしょうか?」
アナウンサーがコメンテーターに無茶振りをする。
「いや不明です。地下ではなく、何かが、地表で起こったとしか考えられません」
無難にそう答える、コメンテーター。
「これは、昨今発生をしている、能力の取得というか解放。それが何か影響をしていると、考えられると思いますでしょうか?」
食い下がるアナウンサー。
不明だと言っただろうがと、一瞬睨むが、ことばを続けるコメンテーター。
「本当に、何もわかりません。不明です。その上で理由をつけるなら、神のいたずらか、ミスでもあったか、その辺りじゃないでしょうか? クリスマスも近いですしね。はっはっは」
「それでは、次のニュースです」
言わせておいて、全無視。
テーブルの下で、コメンテーターは、拳を握る。
「おはよう、まどか。ご飯とパンどっち? うん? どうしたの。顔がひどいわよ」
「あーうん。ちょっと眠れなくて」
余剰エネルギーを貰って、まどかは昨夜ずっと、微笑みかける竜司と甘い夜を過ごした。夢の中で、彼は許してくれず、朝までひたすら絶頂を…… いやいや。天にも昇る気分を味あわせてくれた。
むろん。こんなことは初めて。
お漏らしをしたようなシーツ。
朝起きて、ふやけた自分の指に驚き、速攻でシャワーを浴びた。
これは、まどかだけではなく、日本で一〇月一〇日後。出生率が少し上がった。
エンジェル効果恐るべし。
教室へ入ると、男も女も疲れた顔が散見される。
彩と竜司が少し後に来たが、昨日と様子が違い、妙に彩がもじもじして距離を取っている。
皆が、彩と竜司。一線を越えたかと思ったが、それにしてはおかしい。
キスで鼻血事件から復活した後、彩も波動を受けた。
たかだかキスで、失神する彼女。
昨夜は、ずっと失神と復活を繰り返した。
竜司は張本人なので普通。
今朝は、自分の腕を心配しくて良かったので、ありがたかったくらい。
ただ学校へ来てから、異様な雰囲気が漂っている。
高校生。性旬真っ盛り。
色々皆思っている。昨夜は皆眠れなかったようだ。
ホームルームは何故か、細矢先生ではなく、副担任の津森先生。
たしか、三二歳?
「では、ホームルームを始めます。担任の細矢先生は、校長先生からの命令で一週間のお休みになりました。羨ましいですねぇ。おかげで私は随分忙しくて」
先生は波動の影響を受けなかったようだ。お肌が心なしか、つやつやだが。
「朝から皆さん疲れているようですが、来週からの試験について注意をしておきます。試験は、午前中のみ。期間中部活は禁止以上です。赤点は全教科四〇点以下です。本来は補習ですが、諸事情によりホームワーク。マシマシ全部乗せで対応。年明けに提出をお願いします。それじゃあねぇ」
そう言って、フリフリとご機嫌で出ていった。
先生は波動の影響を受けなかった訳ではなく。波動の影響を受けて、相手からエネルギーを吸い取ったタイプだったようだ。
どよんとした教室で、どよんとした先生から授業を受け、その日は、全体的に冬らしい灰色の世界で授業が終わった。
授業が終わり。
教室でぼーっとー俺は彩達の会話が終わるのを持っていた。
中学校の時からの彩と友人達。
堂元まどかと、黒木 伶菜(くろき れな)。
身長は黒木が一番高く一六五センチくらい?
言ったら殺されるだろうが、体重も。多分。彩が一番背が低くて重い。
メリハリは、堂元まどかが一番だろう。
まあ、伶菜とは、わずかな差だが。
その時、俺は昨夜思い出した記憶を反芻していた。
アンドロメダ星系。
その時には、俺達はいくつかの星系に生活の場を広げていた。
農業系、工業系、そして、世界中の頭脳が学びにくる自然豊かな星。ディスエンディ。そこで彼女マイリと出会った。
彼女は、あの時何か、画期的な発明に携わっていた。
だがそのせいで教授に疎まれ、准教授にかばって貰っていた。
多分教室としては、画期的評価を受けるものだが、教授はその理論には反対をしていて、そのものが現実となった時、完全に教授達の派閥はメンツを潰される。
「おかげで、ギスギスしちゃってね。私のせいだけど」
そう言って笑っていた。
俺は元々軍人だが、勉強するために予備役の身分で、学生の集うディスエンディへとやって来た。戦史研究という表向き。実際は単に歴史を勉強するためだと言って現実から逃げた。あの頃、辺境で発生していた反乱への対応で、少し疲れていた。
俺達の種族は、羽の枚数によって、寿命も強さも違う。
俺はこの時、すでに数千年の時を兵として努めて、かなり偉い身分だった。
かの女は羽が一対。教授に疎まれるのはそれも原因の一つかもしれない。
彼女達は、一千年と少しくらいしか寿命がない。
「出会ったのは奇跡にも近い」
なんとなく、そう言ってぼやく。
言葉に出すつもりはなかったが、口をついて出たようだ。
そして、唇に触れる、柔らかな感触。
目は開けていたが、ぼーっとしていて、はっきり見なかった。
だが触れている感触が、離れていくときに、彩ではなかったことを理解する。
人の良さそうな、少したれた目。
俺は頭の後ろで腕を組んだ状態。
少し天井を見上げて、固まったまま、目だけが彼女の顔を追いかける。
「えへっ。しちゃった。昔から好きだったの。あっ、いま彩は伶菜と一緒にトイレだから大丈夫。言わないで…… その、告白しないでおこうと思ったんだけど。どうしても我慢が出来なくって。ごめんね」
いう事だけ言って、彼女は自分の席へと向かう。
後ろからでも、赤くなった耳が良く分かる。
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