第3話 あれ? 俺もおかしい

 それから後。

 背後から体をまさぐり始める彩。


「やっぱり、竜ちゃん。体が変わってる」

「こら。変なことをするな」

 そう言うと、一応、手は止まる。


「だって、まじまじと触ったのって、小学校の時以来だもの」

「そう言われれば、そうだな。どうしてだ?」

 そう聞くと、彩の動きが止まる。


「えっ。えっとね。気がついて恥ずかしくなったの」

「恥ずかしい? 気がついた?」

 背中に抱きついている、彩の体温が急激に上昇するのが分かる。


「あーうん。ちょっと待って、こっちを見ないで。恥ずかしいから」

 どうも照れているらしい。


「中学校ちょっと前に、生理とか来てさ、友達にこんなの面倒って言ったのよ。するとね、大人なビデオを見せられて。あっ、その子のお兄さんのパソコンに入っていた奴で、その、エッチなことをするもの。その子って、あっという間にパスワードも解除してさ、一〇層くらい深いところへあっという間に潜って、ファイルを見つけたの。それでね、こんな事をすると赤ちゃんがつくれるって見せられて。このために体の変化は必要なんだよってまあ。学校でも習ったけれど、そのビデオを見て、竜ちゃんの顔を想像しちゃって、それでその、すっ。す。まあ。気持ちに気がついて、恥ずかしくなっちゃって」

 一気に告白する彩。衝撃の事実。


 そう言えば、俺から逃げ回っていたときがあったな。


「そんなに前から?」

「認識というか、はっきりわかったのはそうだけど、その前からずっと。あーうん。すっすきだったのぉ」

 そう言うと、背中にボフッと顔があたるのがわかった。

 いや、吐息がすんごく熱いんですが。

 火を噴いていないよな。


「この写真。バッテンは何?」

 怖いが、聞いてみる。


「あーその子達ってさ、竜ちゃんがきっと好きなの。目がね、それを物語っているから塗ったの」

「そうなのか?」

 俺自身に、そんなにモテた記憶も無いのだが。


「モテた記憶は無いぞ」

「でも女の子同士だと、以外とクラスの男の子。誰がいいとか、エッチしてみたいとか色々言うのよ」

「へー女の子でも、そんな話をするんだ」

「するよ。興味もあるし」

「へぇー。この俺のプールの奴。写真の色が変わっているのは?」

 あっまた、吐息が熱くなった。


「それはその、竜ちゃんの体。今どんな感じかなって想像をして、触っていたら色が落ちたの」


 プリンターの色、紫外線とか汗で変色をするからなぁ。

 一番触っていたのか。それも体つきを想像って。

 女の子もそんな事をするんだ。


 四つん這い状態で、いい加減疲れたし、力を抜いて、潰れてみる。

「ひゃ。うぎゅ」

 妙な声を出して、一緒に潰れてきた。


 その時、竜司の腹側へ回していた彩の手は、予想外なところへ行ってしまう。

 今までの記憶に無い、ふにょっとした感触。

 彩は頭の中で、今どこに手があって、そこには何があるのかを、理解をしてしまう。血流が上半身に集まり、顔が真っ赤になる。


「うきゃ」

 手の平に、力がつい集まり、発火が始まろうとしていた。


 その時、竜司には妙な感覚が感じられる。

 未曾有の身体に対する危険。

 それがわかった。

 バッと体を起こし、退避をする。


 そのまま、壁に後頭部をぶつけるが、気にしない。


 彩は、頭に血が上った瞬間、力が暴走をして発動をするのがわかった。

「ごめん。お願い竜ちゃん逃げて」

 そう言った時には、目の前から竜司の姿は消えていた。


 普通の人間には、反応が出来ない超スピード。

 そんなスピードで、竜司は動いていた。


 当然、彩は驚いたが、また力が発動して、自身の服を燃やす羽目になる。

 今度は制服。少しお高い。


「あっ。熱い」

「ちょっと待て」

 また毛布が、犠牲になる。


「もう、おねえちゃん何をドタバタしてるの?」

 妹、葉月(はづき)が、入ってきたときには、火は消えていた。

 手前、ベッドの上で毛布を持つ竜司。

 向こう側で、股間と胸に丸く焼け焦げた穴が開いた制服を着た姉の姿。


 何が起こったのかはよくわからないが、姉の能力は聞いていた。

「おねえちゃん。竜兄へのサービスにはなるけれど、着替えたら? 上はともかく下は完全に丸出しだよ。焦げて完全につんつるてんだし」

 ばっと、手で隠すと、部屋を出て行く彩。


 此方に背を向けている、竜司の肩に手を置き、聞いてみる。

 肩に手を置いても、全く反応が無いのはおかしいが。

「竜兄ちゃん。何があったの?」


 だが返事はない。

 回り込んでみると、竜司の目は見開き、虹彩部分が金色に輝いていた。

 その目には、何かが映っている様子はなく、目が見開かれているのみ。


 ついそっと、キスをしてみる。

 反応が無い。この前より、自身のドキドキが強い。


「うん? どうしたんだろう。この前にしたときには、大騒ぎして逃げたのに」


 鈴木 葉月一五歳。多感で、色々なことに興味が出るお年頃。

 前回、竜司のお誕生日に遊びに行き、ゲーム中寝ていた竜司に興味を抱き、キスをした。


 クラスで、他の子が色々騒いでいて、興味はあったが、クラスの男どもとキスをする気など、全くもって起こらず。想像すら出来なかった。

 恋愛感情はないが、子供の頃から見知っている、竜司なら良いかと軽い気持ちでしてみた。

 だが、その時竜司は目を覚まし、目の前に葉月の顔があることで驚き、キスを否定をする。

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