5、対面
3Dモデル依頼から一週間ほど経った頃常夏みかんから連絡が届いた。
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みかん
突然すみません。
最終調整に入るのですが、イメージと合っているか
確認したいのでお声を聞かせていただけませんか?
できればビデオ通話でお顔も拝見させて頂けないで
しょうか。
氷華
分かりました。私はいつでも空いているので、都合の良い時間を指定して下さい。
みかん
ありがとうございます!では今日の午後八時はどうでしょうか。
氷華
問題ありません。ではまた午後の八時に
みかん
はい!無茶を聞いて下さってありがとうございます!
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夜の八時に常夏みかんさんとビデオ通話の予定が入った。普段からお風呂は夕方には入ってるから問題ない。食事は…ちゃんと食べないと毱さんが怒るからちゃんと食べないと。怒ると三井さんよりも怖いんだよね、三井さんは必要最低限食べてたらあまり怒らなかったけれど、毱さんは同い年だからか自分たちがどのくらい栄養を摂らなければいけないかをよく知っているからすごく怒るのかもしれない。
ビデオ通話だから写る部分はちょっと片付けとかないとね。約束の時間まであと四時間そろそろお風呂に入って準備しないと。
「ふぅ〜気持ちよかった〜やっぱりお風呂は最高だよね〜サッパリして目が覚めるし、何より生まれ変わったような気分になる。片付けも出来たし夜ご飯を食べて備えておかないとね」
今日の夜ご飯は作り置きのほうれん草のおひたしと、コロッケ。コロッケの量が少し多い私が白米を食べないことを考慮しているのだろう。噛めば肉汁が溢れ、じゃがいもの甘みがほんのりと感じられてとても美味しい。ほうれん草のおひたしもよく染みていて青臭さが全く無い。
「んん〜!美味しい!三井さんのお袋の味も美味しかったけど、毱さんの丁寧で優しさを感じられる味も最高だな〜」
そうこうしているうちに約束の八時が迫ってきた。
「こんばんは〜常夏みかんです」
「こんばんは。白神氷華です」
「今日は私の我儘でお時間を取らせてしまい申し訳ありません」
「いえ。私もモデルが声と合っているか確認しなければと思っていたところなので」
「それにしてもとてもいい声ですね〜聞いているとふわふわして引き込まれるというかなにか頼まれたらおもわず了承してしまいそうになります」
「ありがとうございます。そう言って頂けて少し自信がつきます。ビデオもオンにしますか?」
「はいそうしましょう!」
そしてビデオ機能をオンにする。
「うわ〜めちゃくちゃ可愛いですね!声から綺麗系の方かと思っていたんですけど、どちらかといえば可愛い系ですね!でも声が合わさると溢れ出るオーラというかカリスマ?が可愛いを神秘的に昇華させていて、こんなにも美しい人がいるんですね!」
「常夏さんこそ真っ直ぐな黒髪ロングに切れ長の目、長身も相まって頼り甲斐のある美人のお姉さんという感じでとてもお綺麗だと思います」
「えへへ〜こんなにも可愛い子に美人なんて言われちゃった〜はっ!取り乱してすみません。おかげさまでイメージは固まったのですがこのまま繋いで作業してもいいですか?見ながらの方がよりイメージしやすいので」
「私は問題ありません。ですが普通に生活を送りながらでもいいですか?色々と準備があるので」
「もちろんです!自分のことを優先して下さい!じゃあミュートして描きますねもう声はしっかりと覚えましたので。
いや〜こんなに可愛い子のママになれるなんて最高です!」
「すこしお聞きしたいのですが、ママ?ママとはなんですか?」
「あれ?知りませんでしたか?Vtuberのモデルを描いた人のことをママと呼ぶんですよ〜」
「そうなんですね。最近Vtuberを知ったばかりなのであまり詳しくないもので勉強になりました。ではこれからはみかんママと呼べばよろしいですか?」
「グハッ…破壊力がすごいです…なんでもあげちゃいそうになる…いや落ち着け私深呼吸しろスーハーよし、うんそう呼んでくれたらすっごく嬉しい!初めての子だしね!」
「みかんママは有名な絵師だと思うのですがこれまでに依頼は無かったのですか?」
「あぁ〜それね〜居たには居たんだけど最初に依頼してきた人の態度がすごく悪くてね〜その人の依頼を断ってからはVtuberのモデル制作はずっと断ってたんだ」
「ならどうして私の依頼を受けて下さったんですか?」
「ん〜礼儀正しかったとか色々と理由があるんだけど、一番の理由は直感かな。この人なら依頼を受けてもいいかなっていう…まぁ何一つ根拠なんてないんだけどね。でも今日こうやって電話越しで対面して自分の選択は間違っていなかったんだと確信したよ。めちゃくちゃ応援するからなんでも相談してね!」
「はい、その時は是非頼らせていただきます。飲み物を買いに外に出てもいいですか?喉が乾いてしまって」
「もちろんいいよ!携帯は持って行くの?」
「そのつもりですが…夜に外に出ているとよく職務質問をされるのでその時に保護者のフリをしてくれませんか?」
「保護者……ママっぽい…全力で頑張るから!ママに任せて!」
結果としては何事もなく終わり…
「うぅ…恥ずかしい…あんなにも張り切って…」
「そんなに落ち込まないでください。とても…心強かったですよ」
「えへへ〜ありがと〜それよりもモデルできたよ!今送るから問題なかったらこのまま進めようと思うんだけど、どうかな?」
送られてきたファイルを見るとそこにはほんの少し青みがかった白い髪が腰あたりまで伸び、サファイアのような深い青色の眼が嵌め込まれた水色のドレスを纏った女性が表示されていた。
「これは…素晴らしい出来です。私の要望通りの、想像していた姿そのものです」
特にレース部分の細かな描き込みは誰にも真似出来そうにない。
「ほんと!よかったー!私の持てる全てを注ぎ込んだ自信作だからね。いや〜デビューが待ち遠しいなぁ〜
今日は我儘に付き合ってくれてありがとう!また今度お詫びにどっか遊びに行こうね〜」
「ええ…そのときは是非。ではまた」
通話を終えた私はもう一度自分のもう一つの姿をよくよく見直す。
「うん。やっぱりよく出来てる。興味本位でやろうと思ったことだけど、どうせやるなら最高のものにしないとね。…よし、明日は中学校の卒業式だし顔くらい出さないとまずいよね。寝坊しないようにさっさと寝なきゃ」
私は早々にベッドに入りデビューする時を夢見ながら眠りに着いた。
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