第54話 クラス女子達の怒り・前編

 リアル多忙により全く執筆する時間が取れずじまいで、ご愛読の皆様には申し訳なく思っています。

 ようやくリアルも落ち着いてきて執筆する時間が再び取れてきましたので、執筆が終わる度に投稿していきます。

 また更新されなくなった時は作者が再びリアル多忙になったんだな……とでも思っていただければと思います。

 では本編へどうぞm(._.)m


───────────────────────


 正門前で新太郎と合流して俺と未来が付き合い始めたことを報告した後、玄関で上靴に履き替えてから1階にある教室へと向かった。


 教室前に辿り着くとさきに新太郎が教室内に入っていき、その後に続くように密着した俺と未来も教室内に入った。


「おう、おはよう新太郎!

 今日はやけに遅かったな!」


 先に入った新太郎にそう声を掛けたクラスメイトの男子生徒。

 新太郎と同じく陸上部に所属してる奴だ。

 名前は真田さなだ 海斗かいとといい、新太郎と仲の良い男子生徒の1人だったはず。

 そんな真田に対して新太郎も返答する。


「おはよう海斗!

 俺の幼馴染の葵と正門前で話し込んじまってたからだな!」


 そう言ってから後ろにいる俺を見る新太郎。

 それに釣られるように俺を見た真田が声を掛けてくるのだが…。


「だから何時もよりも遅かったのか。

 牧野もおは………っえぇぇぇぇ!?」


 朝の挨拶の言葉を言いかけたとこで中断して俺の今の状態を見て目をパチクリさせたり目を擦ってからまた見た後、真田は驚きの声を上げた。

 当然ながら真田の大きな驚きの声を聞いたクラスメイト達も何事だと俺達の方を見てくる。

 そして見てきた誰もが真田と全く同じことをした後に驚きの声を上げる。


「「「「「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」」」」」


 クラスメイト達が真田と同じ反応するのは当たり前のことである。

 大の男嫌い宣言で有名な未来が男である俺の腕をギュッと抱きしめて密着してる光景をの当たりにしてるのだから。

 尚、そんなクラスメイト達の反応を見た新太郎はゲラゲラと笑っていたりする。

 クラスメイト達の反応を見つつ俺は未来と話し始める。


「あ~やっぱりこの反応になったか」


「そんなに驚くようなことなのかしらね」


「そりゃそうだろ。

 男嫌いを宣言してる未来が男である俺となかむつましく腕を組みながら教室に入ってきたんだから。

 だからこれは当然の反応だよ」


「そう言われたらそうかもしれないわね」


 そんな俺と未来にゲラゲラと笑っていたはずの新太郎が言う。


「ま、こうなるのは必然だろうよお2人さん。

 ましてや男嫌いだと公言してる水無月さんが葵の腕を組みながら教室に入ってきたんだからな…」


 そこまで言ってから間を置いた後、再び新太郎は言う。


「だが葵に水無月さん。

 水無月さんが葵にベッタリなのを良く思ってない感じの男子の何人かがこっちを見てるぜ?」


 そう言われて周りを見る。

 確かに新太郎の言う通り、数名の男子達から嫉妬や怒りの感情が乗った視線で俺を見ていた。

 よく見れば何れの男子も未来に告白して玉砕した連中だった。

 未来もそれに気付いたようでゲンナリとした表情をする。


「はぁ…何でそんな視線を葵に向けくるのよ。

 私は嫌で振ったのに……それを逆恨みして葵に矛先を向けるのは違うでしょ」


 嫌悪感丸出しでそう呟いた未来。

 婚約者である俺を見てる男子達に対して怒っているようだ。

 誰だって人の婚約者にそんな視線を向けられてると知って怒るのは当たり前の話だろう。

 だがその未来の怒りの視線に気付きもしない男子達。

 ただ奴らは未来の外見ででしか判断せずに告白したのだろう、と俺は思った。

 その人の中身ではなく容姿だけを見て、である。

 だからそれに気付いたからこそ未来は奴らの告白を断ったに過ぎない。

 それに気付きもせずに逆恨みし俺に嫉妬や怒りの矛先を向けるのはお門違いだ。

 とはいえコイツらは未来が俺と付き合っていることまでは理解? 出来てるかまではその表情からは伺いしれることは出来ないが……まさか既に俺と未来が婚約までしてるとは思わないだろうなぁ、と思った。


 そんなことを俺が心の中で思っていると、俺を睨んでいた数名の男子の内の1人が側まで近付いてきて言う。


「おい牧野! 今すぐ水無月から離れやがれ!

 水無月は俺の…俺の彼女だぞ!!」


(? コイツは一体何を言ってんだ?)


 そう思ったのは俺だけでなく腕に抱きつく未来もだった。

 その証拠に未来は怒りと軽蔑が入り混じったかのような視線を男子に向けていた。

 そしてその視線は周りを氷漬けしてしまいそうな程だった。


 いきなり訳の分からんことを言い始めた男子に対して新太郎が冷めた目で見ながら言う。


「おいおい、山田やまだ。 いきなり何を訳の分からないことを言ってんだ?

 お前は入学式後のホームルーム終了後に水無月さんに公開告白し、彼女にこっ酷く振られただろ?

 なのに何をどうしたら水無月さんがお前の彼女、という話になるんだよ」


 俺と未来が思っていたことを山田に対して言ってくれた新太郎。

 流石は俺の幼馴染! と俺は新太郎の言葉を聞いてそう思った。

 しかしそれを聞いた山田が新太郎に喰ってかかる。


「確かにお前の言う通りにあの時は水無月に振られたのは皆が知ってる通りさ。

 だがその後になんやかんやがあり俺と水無月は晴れて付き合う事になったんだよ!

 だからもう水無月は俺の女なんだよ!

 分かったならそこを退けよ、宮前」


「そんな事実はないわ。

 勝手に貴方の女にしないでくれない?

 私、貴方と付き合った覚えなんてないのだけど?」


 流石に山田の言ったことは看過出来なかったらしく、未来が即座にそう言って否定した。


「なっ…?!」


 速攻で否定されるとは思ってなかったようで山田は悔しげな表情と声を上げた。

 その山田に俺は言う。


「未来が否定してる以上、お前と付き合っている事実はないようだが?

 つうか一度自分が振った相手と直ぐに付き合うことはないんじゃないのか?

 それ以前に彼女は過去の出来事のせいで男に対して嫌悪感と警戒心を抱いてるんだ。

 多分だが女子達は彼女の過去の出来事に関しては本人から聞いてるんじゃないのかな?」


 前半部分は勘違い妄想野郎に対して言い、後半部分は教室内にいる女子生徒達に向けて聞いた感じだ。

 すると俺の問い掛けに対して女子生徒達は頷いてから口々に言う。


「牧野君の言う通り、水無月さんの過去に起こった出来事の内容は本人から聞いてました」

「そゆこと~!」

「水無月さんの手間、聞いた内容は言えませんが牧野君が言った通りに私達女子全員が知ってる」

「それを聞いていたから水無月さんが男子から告白される度にガードしてたしね」

「特に水無月さんが男子に人気のない場所に呼び出された際には必ず付き添っていたから」

「あんな内容を聞かされたんじゃ、水無月さんを1人で男子に接触させる訳にもいきませんからね」

「牧野君の言う通り、内容は全て知っていますわ。

 けどそんな水無月さんが牧野君の腕に抱きつきながら教室内に入ってきた時はビックリしましたわ。

 即座に引き離して差し上げようかとも思いましたが……水無月さんの幸せそうな表情を見て、それはしないことにしましたわ!

 寧ろ牧野君になら安心して水無月さんのことをお任せ出来ますわ♪」

「だから山田君。 私達女子一同は水無月さんの味方であり、貴方の言ったことを信じることはないのですよ?」

「自分が水無月さんと付き合えなかったからと怒りを牧野君に向けるのは愚かですわね!」

「寧ろ女の敵よね!」

「(私も牧野君とお付き合いしたかったです)山田君には失望しました」

「女性をアクセサリーかなんかと勘違いしてるとしか思えない発言に嫌悪感しかない」

「水無月さんの容姿でしか見てないよね、山田君。

 今まで水無月さんに告白してきた男子達もだったけど」

「山田君と同じように牧野君に嫉妬心丸出しな視線を向けてる男子達は何様なの?」


 俺が思っていた通り未来の過去に関しての内容はクラスの女子全員が既に知っていたようだった。

 男嫌い宣言をした理由を知りたい一心で未来に聞き、そこで未来本人の口から過去の話を聞いたって感じだろう。


(それにしても山田以下男子数名、女子達から物凄い怒りを買ってるじゃん…。

 あ~あ…俺に嫉妬心丸出しで山田と同じように睨みつけていた男子達なんてガタガタ震えてるし…。

 俺もこれからの言動と発言には気を付けねば…。

 ……この地獄耳はどうにか出来ないものだろうか)


 心の中でそう思いながら女子達の容赦ない怒りの発言の数々に俺は戦慄してしまった。

 それは俺だけに限らず新太郎を始めとした男子達も同様だった。

 因みに女子の1人が言った発言の一部は聞かなかったことにしておいた。


 だが現時点での俺や新太郎、男子達は知らない……クラス女子達の怒りがこんな程度ではなかったことに…。


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