第53話 幼馴染からの祝福

 本文内容の一部を修正しました。


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「はぁ…はぁ…はぁ……ようやく、追いついたぜ…」


 俺&未来と追跡者?との逃亡劇は清水ヶ丘高校正門前にて終焉を迎えた。

 俺らを追いかけて来たその男子生徒は息も途切れ途切れとなっていた。


「チッ……このまま撒くつもりだったんだが、追いつかれるとは思ってなかったよ。

 やっぱ陸上部に所属してるだけあって足が速いなw」


 後ろを振り返ってから言った俺の言葉に対し、追いかけて来た男子生徒は息を整えながら文句を言ってくる。


「ふぅ……声を掛けた途端に葵が急に走り出すからだろうがw

 何で帰宅部なはずの葵がそんなに足が速いんだよ」


「何でって言われても……普段から体を鍛えてるからとしか言いようがない。

 ま、鍛えてなくても新太郎しんたろうに負ける気は更々ないけどもな」


 俺がそう言うと新太郎は「はぁ…ったく」と悪態をつく。

 そんな彼の名は宮前みやまえ 新太郎。

 幼稚園の頃から今日に至るまでずっと遊んできた奴であり、幼馴染にして大親友だ。

 整った顔立ちで高身長イケメンにして、成績は常に学年上位を維持する秀才であり運動神経も抜群なハイスペック男子だ。

 なので中学時代からずっと陸上部に所属しており、女子達から常にモテモテ状態なのである。

 だが未だに誰かと付き合った、という噂を一向に耳にしたことがない。

 だから俺としては勿体ないなぁ、と思っていたりする。

 当然ながら俺が牧野グループの御曹司であることを知っている人物の1人でもある。

 と言うよりも新太郎の両親が食品会社を経営し、牧野グループとの重要な取引相手の一つだ。

 言うなれば新太郎はお坊ちゃまに属している……宮前家の長男だしな。


「はいはい、そうかよ」


 新太郎がそう口にしたとこで未来が俺に聞いてくる。


「ねぇ葵。 随分と宮前君と親しそうな感じだけど、結構仲が良かったりするの?」


 それを聞いてまだちゃんと未来に紹介してなかったことを思い出し、俺は改めて新太郎のことを未来に紹介する為に口を開く。


「悪い、すっかり話に夢中になってしまってたな。

 改めて紹介するよ。幼稚園の頃からの腐れ縁にして幼馴染&大親友の宮前 新太郎だ。

 だから俺の正体も当然ながら知っている。

 というよりも取引相手会社の御曹司でもあるな」


 俺の言葉に宮前も未来に向き直り、口を開く。


「同じクラスにいながらこうして口を聞くのは初めてになるな、水無月さん。

 葵から紹介された宮前 新太郎だ。

 何かと話す機会が多くなると思うけど、これから宜しくな!」


 そう口にしてから手を差し出しかけたところで未来が男嫌いであることを思い出したのか、新太郎は差し出した手を引っ込めた。


「水無月 未来よ。こちらこそ宜しくね宮前君」


 新太郎の挨拶に対してそう簡素かんそに返す未来。

 だが新太郎を見るその目は冷たいものを俺は感じた。

 俺の幼馴染だと分かっていても、男嫌いには変わりないから警戒してる感じでもあった。

 その証拠に絡めている腕により力が入ったのが伝わってきたからだ。

 ……と言うよりも若干痛いくらいだ。


「はは…やっぱ警戒されちまってるか。

 まぁその反応は仕方がないのかもしれないな。

 それが男嫌いなら尚更だろうしな」


 流石は新太郎だ。未来が警戒してることにも気付いていたか。

 そりゃ何度もパーティーに出席してる新太郎だから、人の機敏の変化に気付くのも当然か…。


「ごめんなさい宮前君。

 いくら葵の幼馴染であっても、葵と葵のお義父様・私の父親とその親類以外の男は無理みたいなの。

 近付かれるだけで嫌悪感と鳥肌が…ね」


「大丈夫だよ水無月さん。

 これ以上は近付くつもりもないから。

 だから安心して欲しい」


 未来の言葉にも嫌な顔一つせずにそう返した新太郎。

 現に彼は一定距離を保った状態で立ち止まり、俺たちと話をしていたのである。

 入学式後のホームルームにて未来が宣言した”男嫌い”という言葉を、新太郎は疑いもせずに信じていたのだろう。

 でもそれは新太郎を含めた極小数の男子だけだ。

 未来の宣言を信じなかった男子達がホームルーム終了直後から競い合うように告白していたのを覚えている。


 ある奴は教室内で皆が見てる中で告白。

 ある奴は人気の無い場所に呼び出しての告白。

 ある奴は屋上に呼び出しての告白。


 といったのをクラス男子達が話してるのを俺は机に伏せながら聞いていた。

 中には身体目当てで告白した、といった内容も。

 何れも全て玉砕で終わったみたいだが…。

 身体目当てで告白した奴はその後、クラス女子達の手により痛い目に遭ったらしいがな…。

 それを見たり聞いた時は”ざまぁみろw”って思ったな!


「ええ、ありがとう。

 学校の中で男子らとの接触は避けようもないから我慢してるけど、毎回毎回嫌いな男からの告白には本当に嫌悪感しかなかったわ。

 ただクラスメイトの女子達が私の味方をしてくれていたから、強引な告白は防がれていたの。

 それに関しては深く感謝しているわ」


「なるほど、な。水無月さんが苦労してるのが話を聞いていてよく分かったよ。

 けどそんな水無月さんが葵に密着してることに関しては、こうして会話してる今でも驚いているけどな。

 だから聞くまでもないんだろうけど……葵、いつ水無月さんと付き合い始めた?」


 まぁ、こんだけ未来と密着してれば誰でも恋人同士だと分かってしまうのも当然のことか。

 その質問にはどう答えようかと思っていると、未来が俺よりも先に口を開く。


「葵と私が恋人同士となったのは、先週の金曜日からよ。

 きっかけは私が柴犬公広場で男に絡まれてた所に葵が間に入って助けてくれたのよ。

 たったそれだけの事で男嫌いなはずの私は葵に恋してしまったの。

 自分でもなんて単純な女なのって思いもしたけど、一度好きになった感情を私は抑えることが出来なかった。

 だから私は強引に葵の家に着いていき、部屋に入ったところで私から葵に告白したの。

 そして私の告白に対して葵は受け入れてくれて、晴れて私達2人は恋人同士になったのよ。

(実際はその日の夜にエッチまでしちゃったのだけどね……私が強引に葵の初めてを奪う、という形で♪)」


 俺との馴れ初めのを伏せながら新太郎にそう話した未来。

 ……最後の部分だけは俺にしか聞こえない声量でだったけれども。

 誰かに聞かれでもしたら小っ恥ずかしいったらありゃしないわ!! と俺は声を大にして言いたかったが我慢したよ、うん!


「ほうほう、そんな馴れ初めが…。

 幼馴染として素直に2人を祝福させてもらうよ。

 おめでとう! 末永く仲良くしろよ!

 それと葵…絶対に水無月さんを泣かせるなよ?」


「ありがとう宮前君。

 そう祝福してもらえて嬉しいわ」


「おう、ありがとな!

 絶対に未来を泣かせることはしないし幸せにすると誓うよ」


 新太郎からの祝福に対し、俺と未来はそれぞれの感謝の気持ちを伝えた。


「おっと……そろそろ教室に向かわないと遅刻になりそうだな」


「それはマズいな……行くか、教室に」


「ええ、行きましょう」


 正門前で色々な話で盛り上がってしまった俺たち3人は、時間を見て慌てて玄関へと走って向かった。

 3人が居なくなった正門前では未来を狙っていた男子生徒達が葵と付き合ったことを知ってしまい、膝から崩れ落ちる…といった異様な光景が広がっていくのであった…。




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 ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

 近況ノートを見た読者の皆様は既に知っているかと思いますが、当作品がカクヨムWeb小説コンテスト9にて中間選考を通過し最終選考に残りました!

 ダメ元で応募した作品が中間選考を突破するとは思っておらず、執筆者としても未だに夢を見ているのではないかという思いと、中間選考を通過しただけでも充分だという思いでいっぱいです。

 これも全ては読者様からの評価と応援の賜物だと思っています!

 改めて評価・応援して下さった読者の皆様に感謝申し上げます!

 本当にありがとうございます!


  尚、コンテストの最終結果がどのような結果になろうとも完結目指して執筆・更新を続けていきます!

 ですので引き続きのご愛読と☆評価・応援を宜しくお願い致しますm(*_ _)m


               刹那の紫苑より

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