第47話 あの男に相応しい末路だったわね
「それじゃ食べようか。
いただきます」
「いただきます!」
出来たてのチキンカレーと付け合せのサラダをテーブルへと運んでから葵と未来は並んで座り、そう言って手を合わせてから食べ始める。
「ん~!!美味しい~♪
丁度いい辛さで口の中に入れた瞬間に崩れる鶏肉の食感がたまらないわね♪」
何処ぞのグルメリポーターみたいな感想を言いつつ口いっぱいにチキンカレーを頬張る未来。
その様子を微笑みながら見つつ、葵も食べ進めていく。
「あ、テレビをつけてもいい?」
食事時にはテレビでニュースを見るのが習慣づいていた葵は、隣にいる未来にそう聞く。
いつだか見たニュースで”教育の一環で食事中はテレビをつけない”家庭が一定数いる、というのが紹介されていたのを思い出した為である。
「ふぁふにふぁいふぁよ」
「いや、口の中の物を飲み込んでから返事してくれ。
何を言ってるか全く分からないから…」
苦笑いをしながら俺がそう言うと、ゴクンッと口の中の物を飲み込んだ未来は再度言う。
「ん……別に構わないわよ」
「ありがとう」
了解を得た俺はリモコンを手に取り、テレビをつけた。
するとこの時間帯に俺が何時も見ているニュース番組が画面に映し出された。
つけたタイミングが良かったのか、男性キャスターが次のニュースを読み上げるところだった。
『では次のニュースです。
本日午後3時過ぎ、アイミスワンダーランドの園内にある飲食店内にて都内在住の自称無職…山崎
警察の取り調べによりますと、この山崎容疑者は飲食店内にいた若い男性客とその連れの女性を巡って口論となり、その腹いせとして隠し持っていたナイフで男性客を殺害しようとしたことが判明した為、殺人未遂罪での緊急逮捕となった模様です。
このような凶行に及んだことの他にも複数の余罪があるとのことで、現在も捜査が続けられている模様です。
また詳しい情報が入り次第、お伝えしたいと思います』
このニュースを見た俺は安堵の溜め息を吐く。
人間、悪いことをすればそれ相応の報いを受けることになる。
それを改めて実感した俺。
行動一つ間違えただけで山崎のように逮捕され、人生を棒に振ってしまうことになってしまうのだから。
「ま、逮捕されて当然っちゃ当然なんだろうけれど……」
「……この報を知った被害女性達の心の傷が癒えることはないでしょうね。
それも生涯に渡って、ね。
同じ女性として山崎がやったことは絶対に許すことは出来ないわ。
だから……あの男に相応しい末路だったわね、と私はそう思ったわ」
「……………」
俺の言葉を引き継いだ未来はそう口にし、なんとも言えない表情をしていた。
その未来に何て言って声を掛けたらいいのかが分からず、俺は口を閉ざす他なかった。
俺の様子が変に感じようで、俺の肩に自分の頭を乗せてきながら未来は言う。
「私に何て声を掛ければいいんだろうって思ってない?」
「……うん」
「……だと思ったわ。
でもそれで葵までもがそんな悲しげな顔をする必要はないのよ?」
そう言った未来は俺の頬を優しく撫でるように触ってくる。
それから俺の目を見ながら続けて言う。
「葵のそんな悲しげな表情を見ていると、私まで悲しくなってきちゃうじゃない…。
貴方には笑顔で笑っていて欲しいって思ってるわ。
そしたら私も葵の隣で笑っていられるから
だって私たちに悲しい顔なんて似合わないんだもの!」
晴れやかな笑顔でそう言った未来。
「……未来の言う通りだな!」
「でしょ? だからもうこの話はお終い!
ん~~♪ 冷めても美味しいわね~♪」
パンッと手を叩いてからすっかり冷めてしまったチキンカレーを頬が膨らむ程に頬張る未来。
リスみたいな顔をする未来を笑いつつ、俺もチキンカレーを口に運ぶ。
食べ進めつつも再びテレビに目を向けたちょうどその時、男性キャスターが何かを見て驚いた表情をしながら次のように言った。
『たった今入った速報です!
衆議院議員の山崎
逮捕された理由等については今のところ何も分かっていません。
ですので詳しい情報が入り次第、また皆様にお伝えしたいと思います。
繰り返しお伝え致します!
たった今入った───』
その速報を聞いた葵と未来はそれぞれ呟く。
「えっ…山崎?」
「山崎……?」
「もしかして…」
「まさか……」
「「あの屑男の父親じゃないよな(よね)?」」
同時にそうハモった2人は食事する手を止め、顔を見合わせるのであった。
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