第27話 何故かカミングアウトさせられる葵・終
綾音姉さんの策略?によりラノベ作家であることをカミングアウトさせられた俺。
だがしかし綾音姉さんはこれ幸いと未来にはまだ話してないことまで俺に話すよう強要してきた。
自分で話すのが面倒だからって……ったく。
「次のカミングアウトって言っても、何を言えばいいんだ?」
「そうねぇ……なら牧野家の秘密に関する話をしたらどうかしら?」
牧野家の秘密、ねぇ…。
それこそどっから話せばいいんだって話だと俺は思った。
「あ~……例えば牧野家と日本政府が密接に繋がってることに関してとかか?」
そう口にする俺に目を丸くして見てくる未来。
その表情は”えっ?どういうことなの?”と俺に問いかけている感じだ。
「それに関して本来であれば機密情報に該当するのだけど、義妹になる未来さんになら話しても問題はないわ。
言ったでしょ? お父様とお母様の了承は既に得ている、と」
確かに綾音姉さんはそう言っていたな。
はぁ……要するに包み隠さずに全てを未来には話しとけってことか。
「このことを含めて話す了解は得てるってことだったのか」
「そゆこと~」
「なら話すよ、牧野家に関する全てを。
だが未来、今から話すことは絶対に他言無用だ。
例え家族や親戚、親しい間柄にある人間にも漏らすことは禁ずる。
誰にも話さない、漏らさない、墓場まで持っていく、ということを誓えるなら話す。
でなければ話さないし話せないし聞かせられない。
それでも聞く覚悟はあるか?」
俺のこの問いに対し未来は俺を見据え、毅然とした口調で言う。
「何れのことも私は誓うわ。
助けられた日から私は葵と生涯を共にすると誓った。
葵と共に生き共に死ぬ覚悟は既に出来てる。
死が二人を分かつその時まで。
だから葵──私を見くびるな!!」
俺の問は愚問だったようだ。
そう思ったのは俺だけじゃないようで、綾音姉さんの表情に現れていた。
ならばもう試す意味はない。
「試す真似をしてすまなかった。
だがそれだけ今から話すことは重要な事だと理解して欲しかったんだ」
「謝る必要はないわ。
だから聞かせて欲しい──牧野家の一員になる私に」
「分かった」
そう返答してから牧野家に関する全てを未来に話た。
以下は未来に語ったことのほんの一部を簡単にまとめたものである。
〖牧野家の興り〗
1768年4月21日(現在は2034年4月15日)、東京都内某所にて
1789年5月、若干21歳という若さで難病と言われた”黒斑病※”の治療薬を開発した功績を讃え、当時の日本政府が丸山 敦史に国民栄誉賞を授与し、1回だけ苗字を変更出来る権利を与えられる。
なぜ敦史に苗字変更権を与えたのかについての記録についてだが、残念ながらのこっていない。
その権利を行使し、苗字を丸山から牧野に変更する。
苗字を牧野にした理由に関してだが、当時の敦史は”何となく頭に浮かんできたから”と言った記録が残っている。
同年同月、敦史の幼馴染だった
ここまでが牧野家の興りだとされている。
※.黒斑病とは身体中に黒い斑点が出来、発症から数年以内に50%の確率で亡くなるとされた難病だとされていた。
特に若い世代に発症する傾向にあったようである。
〖牧野家と日本政府が密接関係となるきっかけ〗
1810年4月某日、敦史と幸恵の間に生まれた2人の子供が成人したのを機に、医療分野で研究し続けた知識と経験を生かし、敦史は牧野製薬(牧野ホールディングスの前身となる企業)を設立。
それを知った日本政府が上級国民のみに販売したいが為、開発した新薬を専売しろ!と敦史に命令する。
だが敦史は”この新薬を上級国民の為だけに専売することはしない。黒斑病に苦しむ全ての人達に等しく販売すべし”といって固辞する。
すると日本政府は”家族がどうなってもいいのか?”と敦史を脅迫し、更には会社の財産を凍結するという暴挙に出る。
それに激怒した敦史は逆に”新薬と調合レシピの全てを灰にするけど構わないんだな?”と言って日本政府を脅し返した。
それから2年にも渡る交渉の末、日本政府側が当時の総理を筆頭に敦史に頭を下げ、牧野製薬との相互協定(お互いに対等な立場であることを認め合い、互いに国民の為に協力し合うこと)を結び、和解に至る。
このことがきっかけで牧野製薬は日本政府とは切っても切れない強固な信頼関係を結び、密接な関係を築き上げていくことになる。
そして現在、牧野ホールディングスは日本政府だけでなく世界各国の政府とも強固な信頼関係を築き上げるグローバル企業にまで成長したのである。
そのせいで歴代の牧野家の直系達は、牧野家が持つ権力に固執しない者を探すのに多大な苦労をする羽目に…。
〖牧野ホールディングスが展開する事業に関して〗
製薬・医療分野の事業が約5割。
運送・貿易事業が約2割。
不動産・建設事業が約1割。
アパレル・インテリア系事業が約1割。
IT関連事業が約1割。
上記5つが牧野ホールディングスが現在展開している主要事業のシェア割合である。
この他にも食品関連事業を含めた事業を幅広く展開している。
尚、シェア割合は日本と世界を含めての総合である。
「───これで全部になるかな」
そう最後に締めくくったとこでチラッと腕時計を見ると、1時間以上も話していた。
どうりで喉が渇くと思ったよ。
「……そういう秘密があったのね。
だから日本政府としても牧野家と牧野ホールディングスを敵に回したくないってことなわけね。
そして副産物として権力を狙う魑魅魍魎の対処に苦労し続けている、と」
未来のその言葉に続けるように綾音姉さんが続く。
「そういうこと。
だから今回の葵と未来さんの婚約には日本政府がガッツリと関与してる。
それも年単位で徹底的に調べ上げ、精査した上で未来さんが葵の婚約者に選ばれたってわけ。
……私は未だに決まってないけど」
「……それを聞くと、私は幸運に恵まれたんですね。
こうして今、好きになった葵と婚約することが出来たのですから」
うん、それは俺も思ってるよ未来。
本来なら好き合った者同士が結ばれることなんてないから。
ましてや未来のように権力に固執しない、野心を全く持たない人と好き合えたこと自体が幸運である。
だからこれは神がもたらした奇跡なのだと、そう俺は思う。
ま、綾音姉さんの嘆きに関することだけど……今は明かすときではないから言わないでおく。
「ふふっ、そうね。
さてと……私はそろそろ荷物を持ってお暇するわね。
これ以上、カップルの邪魔をするのも気が引けるしね!」
そう言って綾音姉さんは廊下へと向かったので、俺と未来も自然とその後に続く。
それから廊下に出した複数のダンボール箱を玄関へと運び始めた綾音姉さん。
なので俺と未来もそれを手伝った。
そして額の汗を拭った綾音姉さんは俺と未来を見て言う。
「2人共、ここまで運ぶのを手伝ってくれてありがとね。
それでね2人共、物の次いでで悪いのだけど……このダンボール箱を隣の部屋に運ぶのを手伝ってくれない?
1人で何往復もしなきゃならないし、腕が疲れちゃうから」
「……ん?」
「……え?」
「どうしたの? 2人揃って首を傾げちゃって」
「今、何て言ったんだ?」
「だから運ぶのを……」
「違う、その後に言ったことだよ」
「だからこのダンボール箱を隣の部屋に……」
「そう、それだよ!
隣の部屋って、一体どういうことだよ!?」
「……うんうん」
「あれ? 言ってなかったっけ?
私、先週くらいに隣の部屋を購入したのよねぇ~♪」
「「………………」」
そう言う綾音姉さんに対し、俺と未来はあんぐりと口を開けるのであった。
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