第25話 超絶ブラコン姉襲来
未来がどんな本を読んでいるのかが気になり、大量のダンボール箱を全て開封し、その中を見た葵。
だが中身の殆どが実家にある葵自身の部屋にあった本だったことが発覚して絶叫する俺。
「この大量のダンボールの中にある本の殆どが葵のだったのね」
俺が絶叫する傍でそう呟く未来。
それに対し俺が口を開こうとした時、玄関の施錠の解除音と共にガチャりとドアが開く音が聞こえた。
「ただいま~!
愛しのお姉様が帰ってきたわよ~♪
って、あれ? いつも玄関で出迎えてくれる葵がいない!?」
何か慌てふためく女性の声が玄関の方から聞こえてきた。
と思ったのもつかの間、ドタドタと廊下を走る音が聞こえ、そして───
「こんな所に居たのね、愛しの葵きゅんは♡」
そう口にする女性が俺の背中にガバッと抱きついてきた。
そうしてきた女性に俺はげんなりとした声で言う。
「何が愛しの葵きゅん♡、だよ…。
姉さん……いい加減に弟に抱きつくその癖は直した方がいいんじゃない?」
「だが断る!」
だが断る!じゃねぇよ、全く。
「つうかさぁ、いい加減に離れてくんない?」
「え、普通に嫌っ!」
「……未来、引き剥がすのを手伝ってくれないか?」
「わ、分かったわ…って、力強すぎないですか!?
葵が、嫌がってるので、離して、下さい、な!」
「絶対に、離さない、わ!」
俺の言うことを素直に聞いて姉を引き剥がそうとしてくれる未来。
それに対抗して更に抱きつく腕に力を込め、いっそう密着してくる姉さん。
「頼むから離れてくれないかな、姉さん。
これじゃあ、いつまで経っても姉さんのことを未来に紹介出来ないからさ」
「……このままの状態で紹介しなさい!」
「……マネージャーさんに電話するか」
俺がそう言っても全く離れようとしない姉さん。
それに業を煮やした俺はズボンのポケットからスマホを取り出し、電話帳から姉さんのマネージャーの電話番号を発信間際の待機画面で表示させ、画面を後ろにいる姉さんに見せる。
「今すぐに離れるからそれだけは止めて!?
生放送の後で叱られたばかりなんだから!」
そう言って即座に離れる姉さん。
若手女優の姉さんはマネージャー……
それを知ってる俺だからこそ出来る脅しである。
というか、アレは叱られて当然だと思うぞ姉さん…。
だって公表してない事を全国放送の場で言ってしまったのだから、尚更だろう。
大人気若手女優に俺という弟がいること自体、姉さんの所属事務所で発表してない事だったのだから。
「それは全て姉さんが悪いだろ。
所属事務所が発表してないことを生放送中に話してしまったんだから」
スマホをズボンのポケットに仕舞ってから後ろに向き直り、姉さんを見てそう言う俺。
「むぅ~!」
「そんな膨れっ面をしても無駄だよ、姉さん。
そんなことよりも早く未来に自分の自己紹介をしたら?」
膨れっ面する姉さんに呆れながら俺は姉さんにそう促した。
「はぁ~、それもそうね。
ってことで私が葵のことが大大大好きで愛してる実姉、牧野 綾香よ!……いったぁぁい!
なんで容赦なくチョップをかましてくんのよ!
馬鹿になったらどう責任取ってくれるのよ!」
すかさず頭にチョップを入れた俺に対して頭を抑えながらそう言った姉さん。
それに対し俺は口を開く。
「そんなアホな自己紹介をすんな!
しかも名前が本名じゃなくて芸名だし…。
既に馬鹿だし責任を取るつもりは一切ないから安心しろ。
だから本当の自己紹介をしなさい」
「むぅ~! 場を和ませようとしただけなのにぃー!」
和んでないから安心しとけ。
寧ろ
「強烈なチョップで頭が割れるくらい痛いけど、改めて名乗るわ。
牧野家長女の牧野
歳は21歳で私立清水ヶ丘高校卒の超絶ブラコンよ!
葵の婚約者で私の将来の義妹になる未来さん、これから宜しくお願いしますね」
最後から1行手前のは絶対にいらねぇ紹介だろ。
自らブラコン……それも超絶をつけてまで言う必要はないでしょうが、全く。
「は、初めまして葵のお義姉様!
この度、葵さんと正式に婚約した水無月 未来と申します!
こちらこそ宜しくお願いします、綾音お義姉様!」
姉さんの珍しく真面目な自己紹介に対して未来もそう自分のことを自己紹介してから姉さんに頭を下げた。
それから直ぐに俺の左腕を抱きしめる未来。
あ~……これは超絶ブラコン姉さんに対する牽制だな、と俺は思った。
その未来を気にした風もなく綾音姉さんは俺に聞いてくる。
「ねぇ葵? 今放送中のラブコメの主人公役をやってみる気はない?」
「「……………は?」」
何を言ってるんだと言わんばかりに俺と未来はハモるのであった。
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