第24話 未来の荷物到着と搬入・終

 本類以外の未来の荷物を業者に運び入れてもらってる間、俺と未来は大量の本を置ける部屋を確保する為、姉さんが泊まる時に使ってた部屋へとやってきていた。

 だがドアを開けて部屋の中を見た瞬間、2人揃って絶句する。

 何せ部屋の中は《汚部屋》と化していたからである。


「「………………」」


「……これは酷い有様ですね」


「うおっ?!」「きゃっ?!」


 この場に居なかった筈の声がした為、俺と未来は揃って吃驚した声を上げてしまう。


「驚かせてしまい、申し訳ありませんでした。

 業者が荷物を搬入してる最中の部屋からお2人方が出てきたことが気になってしまいまして」


 そう言って俺と未来を驚かせてしまったことを謝ってくる秋山さん。


「確かに驚きましたが、怒ってるわけではないので謝る必要はありませんよ」


「私も気にしてませんので、どうか謝らないで下さい」


 俺と未来がこう言ったことで、秋山さんがホットした表情をする。


「本当に申し訳ありませんでした。


 ……それで葵様、コレを2人だけで片付けるつもりだったのですか?」


 再度謝罪してから俺にそう聞いてくる秋山さん。

 それに対し頭を抱えながら俺は口を開く。


「……流石に俺と未来だけでは無理ですね。

 この足の踏み場もない惨状を片付けるのはキツイです」


「……でしょうね」


 部屋の悲惨な惨状を見てそう言い合う俺と秋山さん。

 そこへ未来が俺に聞いてくる。

 ……非常に申し訳なさそうな表情をしながら。


「ねぇ葵? こんなことは聞きくのは申し訳ないのだけど……お義姉様って片付けが全く出来ない人なの?」


 そうド直球なことを俺に聞いてきた未来。

 まぁ、そう聞いてくるのも無理は無い話だよね。

 まさか大人気若手女優で俺の姉が生活力皆無だとは思いもしないだろうからね、普通は。


「……うん、姉さんは昔からこんな感じだったよ。

 まさか更に悪化してるとは思ってなかったけど。

 こんなことなら遠慮せずに部屋の状況をチェックしとくべきだった…」


「……心中お察し致します」


 その同情は要らないよ秋山さん、と俺は思ってしまった。

 だけど何時までも見ていても何も始まらない。

 早く片付けてしまわないと、業者さんを待たせてしまうことになるから。

 だから俺は2人に言う。


「見てるだけでは片付くわけではないから、片付けを始めましょうか」


「……そうね」


「……ですね」


 それを皮切りに俺たち3人は汚部屋の片付けに取り掛かるのだった。




 ───1時間後。


 大量の私物をダンボールに詰めて廊下に置き、最後にゴミを分別して袋に入れて縛り、片付けは無事に終了した。

 そして綺麗になった部屋を見渡し、それぞれが額の汗を拭いながら言う。


「はぁ、ようやく片付いたな…」


「うん。 よく1時間で片付けを終えれたわねって思うわ」


「私もそう思います。

 あの惨状を見た時は絶望しかありませんでしたから…」


 そう俺たちが愚痴るのも仕方がない話である。


 足の踏み場もない程にぶっ散らかった大量の衣類に分別されてないゴミの数々。

 極めつけは女性が異性に見られたくない筈の下着が部屋中に脱ぎ散らかされていたのだから。

 こんな状態では姉さんに彼氏が出来るのか?と不安にもなる。

 まぁ、姉さんの恋愛がどうなってるかについては、弟の俺は把握してないしする気もないけどね。


「ま、綺麗に片付けられただけでも良かったってことで。

 未来、秋山さん、手伝ってくれてありがとう」


「それはそうね。


 お礼は不要よ、葵。

 女性の私からしてもアレは到底看過できないわ

 ……特に下着が目に見える状態で散乱してることに、よ」


「そうですよ葵様。

 同じ女性としてあの状態は流石に看過できませんでしたから。

 ……特に下着をそこら辺に無造作に脱ぎ散らかしてあったことに、ですが」


 そうこの場にいない姉さんにボロクソに言う2人。

 やっぱり女性の観点からしても、下着を仕舞わずにそこら辺に放置していたことが2人にとって特に許せなかったみたいだ。

 何せ片付けをし始めて最初に下着類からダンボールに放り込んでいってたからね、2人揃って。

 ちなみに俺は下着には一切触れてないからご安心を。


 そんな感じだったりしながらも一息ついてると、引越し業者のお兄さんが俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

 なので未来と秋山さんを伴って呼び声がした廊下へと向かった。


「あ、牧野様! 本以外の家具及び荷物の搬入作業は完了致しました!」


 廊下に着いて早々に俺は業者のお兄さんにそう声を掛けられた。


「ご苦労さまです。

 では残りの荷物は、本のみってことですか?」


「はい、そうなりますね。

 それでですが、何処に運び入れれば宜しいのでしょうか?」


 そう聞いてきたので搬入する部屋へと案内した。


「では、この部屋の中へ運び入れて下さい」


「了解しました。

 お~い! こっちの部屋に運び入れてくれ」


「「「了解ですっ!!」」」


 お兄さんが部屋から出て指示を出し、それを聞いた部下3人が返事をした後、次々と本が入った複数のダンボールと本棚を6個程、キビキビとした動きで運び入れていく。

 そして30分足らずで全て運び入れ終わり、それを見届けたお兄さんが俺に言う。


「これにて全ての荷物の搬入は完了となります。

 ですので此処に受け取り完了のサインをお願い致します」


 そう言って差し出された紙の受領印欄に俺の名前を記入し、それをお兄さんに差し出す。


「はい、確かに。

 本日は当社をご利用頂き、ありがとうございました!

 またのご利用をお待ちしております!

 では我々はこれで失礼致します!」


 俺から受け取ったサイン入りの紙を見てから懐に入れた後、お兄さんは俺にそう言って一例してから玄関から出ていった。


「では彼等をお見送りした後に仕事に戻りますので、私もこれで失礼致します」


 そう言って俺に一礼した秋山さんも玄関から出ていった。

 そしてそれを見届けた俺は玄関の鍵を閉めた後、未来を伴って本が入ったダンボール箱と本棚が運び込まれた部屋へと向かった。

 未来がどんな本を集めていたのかが気になったからである。



 だが部屋に入って直ぐに未来が首を傾げながら呟く。


「あれ? そう言えば私、こんなに大量のダンボール箱に詰める程の本なんて持ってたかしら?」


「えっ? それって、どゆこと?」


 その俺の問いには答えずに未来は近くにあったダンボール箱の1つを開封し、中から本を1冊取り出してまじまじと見る。

 そして再び首を傾げながら言う。


「これ、私のじゃないわね」


「じゃあ一体、誰のだ?」


 自分のじゃない、と言った未来が持つ本を見た俺は気付く。


「あれ? この本、俺のだわ」


「えっ? この【底辺キャバ嬢に貢ぎまくったら記入済み婚姻届を渡された件】というタイトルのラノベが葵のだったの?」


「うん、間違いなく俺のだよ。

 しかし何故だ?」


 そんな疑問をいだきつつ、俺は次のダンボール箱を開封して中を見て絶句する。

 それからまさかと思って次々と開封しては中を見ていき、全て開封し終えてから俺は、こう叫んでいた。


「ほぼ全てが実家の俺の部屋にあった本じゃねぇかよぉぉぉぉっ!!!」


 その俺の絶叫が部屋の中に木霊するのだった。



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