第22話 未来の荷物到着と搬入2
未来の荷物を取りに向かった業者を見送った後、秋山さんを玄関先で待たせ続けるのも悪いと思い、家の中に招き入れてから紅茶を用意して渡した。
「ありがとうございます、葵様。
とても美味しい紅茶ですね」
俺が淹れた紅茶を一口飲んでホッと息を吐いてからそう口にした秋山さん。
「そう言ってもらえると淹れた側としては嬉しいですね」
「葵が淹れる紅茶はどんな茶葉を使った物でも美味しいんです!」
秋山さんに俺がそう言うと、未来が自慢げにそう秋山さんに言ってのける。
まだ1日も一緒に居ないのに何言ってんだか、と思ったがそれは言わないでおくことにした。
「これを毎日飲める未来様が羨ましいですね」
そう未来に返答する秋山さん。
ま、これも母さんが俺に徹底的に淹れ方を指導してくれたおかげなんだけどね。
だから俺はこうして未来や秋山さんに美味い紅茶を振る舞うことが出来てるんだ。
「俺なんて母さんの足元にも及びませんよ。
母さんが淹れる紅茶を飲んだら、俺が淹れる紅茶程度では物足りなくなるかと。
茶葉の目利きから淹れ方の全てが完璧ですからね」
そう秋山さんに苦笑いしながら言った俺。
「確かに
何杯でも飲みたくなる程に」
秋山さんも飲んだことがあったのか。
ちなみに秋山さんが口にした沙耶香というのは、俺と姉の母の名である。
次いでに姉が名乗っている”綾香”はあくまでも女優として活動してる時の芸名である。
「お義母様が淹れる紅茶って、そんなに美味しいのね。
いつか私も飲んでみたいわ」
若干羨ましげにそう言った未来。
「近い内に実家に行こうと思ってるから、その時に飲めると思うぞ?
母さんは来客に自ら淹れた紅茶を振る舞ってるからね」
「そうなのね!
ふふっ、今から楽しみで仕方がないわ♪」
秋山さんと俺が絶賛する紅茶を近い内に飲めると知り、テンションを上げる未来。
そうして3人で雑談に興じていると、再び玄関のチャイムが鳴った。
なので雑談を中断して3人揃って玄関へと向かい、ドアを開ける。
そして荷物を抱えてるお兄さんに声を掛ける。
「お待たせしてしまい、すいません」
「いえいえ、こちらこそお待たせしてしまったようで申し訳ないです」
「先ずは置く部屋に案内しますので、一旦荷物を置いてから私の後に着いてきて下さい」
「分かりました!」
重たそうに両腕で抱えている2段重ねのダンボールを一旦置いてもらい、搬入予定の空き部屋へと業者のお兄さんを案内する俺。
「この部屋の中に搬入をお願いします」
搬入予定の部屋に着いてからそう言いながらお兄さんの方を見ると、何故か苦笑いしていた。
何故に苦笑いを?なんて思いながら見ていると、それに気付いたお兄さんが口を開く。
「言いにくいのですが……恐らくこの部屋だけでは収まりきらないかと」
「収まりきらない?」
申し訳なさげな顔でそう言ったお兄さん。
それに対し俺も思わずそう聞いてしまっていた。
そもそもこの部屋は12畳もの広さがある。
なのに収まらないとはどういう事だと思った。
「はい。 《本棚と本》を除く家具や衣類等だけなら余裕で収まる広さの部屋かと思います」
”本棚と本”の部分を特に強調して言ったお兄さん。
それを聞いた俺は戦慄する───
この部屋に収まりきらない程の本の量があることに。
「えっ……それって、それ専用の別室が必要な感じですか?」
顔を引きつらせながらそうお兄さんに問う。
「ええ……出来ればこの広さと同等の空き部屋が望ましいです」
「……マジかよ」
思わず素でそう口にしてしまう俺。
ここと同等の広さの部屋は確かにある。
けどその部屋は……ある人物が泊まりに来た時用に確保してる部屋だ。
書斎もあるにはあるが、俺の本でほぼ空きは無い状態…。
だからどうしたもんかと少し考える。
そして答えが出たので俺はお兄さんに言う。
「少し待っていてもらってもいいですか?
部屋を確保する為にある人に電話を掛けたいので、その時間を下さい」
「あ、分かりました!
今日は水無月様の荷物の運搬作業しか予定が入っていませんので、時間などは気にしなくても大丈夫です!」
「ありがとうございます」
お兄さんに電話する時間を貰ってもいいかと確認し、快く許してもらえた俺はズボンのポケットからスマホを取りす。
そして通話履歴をスクロールし、お目当ての番号を見付けてタップして電話を掛ける。
割と頻繁に泊まりに来る女優の姉に。
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