第6話 早くも別れの危機!?

 告白の返事を最後まで言い終える前に未来にキスされてから暫くして、ようやく未来は唇を離す。


「途中で遮っちゃってごめんなさい。

 ……OKの返事を貰えて嬉しくなっちゃって、キスしたいなぁって思ったら、我慢出来なくなっちゃったの…!」


 顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに……それでも決して俺から目を逸らさずにそう言う未来。


「そ、そっか……」


「うん……でもこれで私と葵は、その、恋人同士になれたってことよね?」


「ああ、今日から俺と未来は……恋人同士になったんだ。

 ……俺の太ももの上に座る未来にフライングでキスされたから、最後はグダグダだったけどなw」


「…っ! もうっ!」


 俺にフライングでキスしたことを突っ込まれた未来は、俺の肩をポコポコ叩いてくる。

 きっと恥ずかしさを誤魔化す為なんだろうけどw

 そんな可愛い未来に俺は聞く。


「もう一度キス……するか?」


「うん……しよ?」


 その問に肩を叩くのを止めた未来が頷き、目を閉じた。

 それを見た俺も目を閉じて顔を近づけていき、あと数ミリで唇同士が触れる───と言うタイミングで着信を知らせる音が部屋に響き渡る。

 その音にビックリしてしまい、顔を離してしまった。

 あまりのタイミングの悪さに、未来もぷくぅっと頬を膨らませる。


「なんてタイミングの悪さだよ……」


 なんて呟きながらテーブルの上に置いてた《俺》のスマホを手に取る。


「父さんからだ」


「えっ? 葵のお父様?」


「うん。 なんの用かは知らないけど、タイミングが悪過ぎるよ父さん……」


「確かにそうだけど……出た方がいいと思うわ」


「……だよな」


 そんなやり取りを未来とした後、画面に表示された【応答】をタップして左耳に当てた。


「もしもし父さん? なしたんだ、こんな珍しい時間に電話なんて」

『久しぶりに息子の声が聞きたくなってなぁ……なんかお前、怒ってないか?』


 そりゃ怒るだろうよ……後ちょっとで未来とキス出来たタイミングで邪魔されたんだから、な。


「いや? 別に怒ってないが?」

『そ、そうか……怒ってないんならいいんだ』

「それよりも俺の声を聞きたかったから掛けてきた……ってだけじゃないんだろ?」

『確かにその通りだ。

 では単刀直入に言う───お前の婚約者が決まった』


 はい? 俺に婚約者が決まった?

 …………俺に婚約者だとおぉぉぉぉ!?


「俺に婚約者が出来たって……どういうことだよ父さん!?」

『まぁまぁ我が息子よ、少しは落ち着け』

「これが落ち着いていられるわけないだろうがっ!?」


 俺に婚約者が出来た……そう聞いてから未来の顔は青ざめていた。

 それを見たから尚更に俺は落ち着くことなんて出来なかった。

 ほんの数十分前に付き合い始めたばかりの恋人未来と別れなければならないのだから……。


『そこまで怒鳴るってことは……もしかしてお前、付き合ってる彼女さんがいるのか!?』

「ああ、いるよ父さん。

 それも結婚を誓い合った最愛の彼女がね。

 ……だから余計に落ち着くことは出来ないんだよ!」

『…っ…!? まさかお前に付き合ってる女性が既にいたとは、な。

 これは少々、タイミングが悪かったようだな』

「タイミングが悪いどころじゃないよ、父さん。

 決まった……ってことは、既に先方とも話はついてるんだろ?」

『お前の言う通り、既に先方とは話がついてる。

 それも相手はお前と同じ清水ヶ丘高校に通っていて、同い歳でもある』


 俺と同じ清水ヶ丘高校に通ってる上、同い歳だぁ?

 おいおいおい……それって同じクラスメイトの可能性もあるじゃねぇか!?


「マジかよ……。

 ……俺と同じ清水ヶ丘高校で同年齢ってことは分かったよ。

 なら当然父さんは相手の名前も分かってるんだろ?」

『それは当たり前のことだろう。

 でなければ婚約が成立するはずはないのだからな。

 まぁ、先方の娘さんは不在でご両親にしか会っていないんだけどな。

 写真ででしか顔を見ていないしな』

「それって、つい今しがた決まったように聞こえるんだけど?」

『そうだが?』

「そうか………なぁ父さん?」

『ん? なんだ?』

「それって、俺に断ることは出来ないんだよな?」

『……それはお前が一番理解していることだろ?』

「……ああ、分かってるよ。 俺に断ることが出来ないことはな。

 だから相手の名前を教えてくれ」


 俺の立場上、この婚約話を断ることは出来ないのは事実だ。

 だけど……それでも俺は未来と添い遂げたい。

 その思いで一抹の望みをかけながら父さんに相手の名前を聞く。

 その父さんから伝えられる相手の名前次第で───俺と未来の今後が全て決まるのだから。


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