第13話
イエローギフト??
「ミーニャ!!ミーニャっ!!」
私がミーニャに黄色い果物を食べさせたところミーニャが急にピクピクと身体を痙攣させてその場に倒れこんでしまった。
倒れる前に懐に手をいれていたのはなぜだろうか。
私は倒れてしまったミーニャの側に駆け寄り、何度も名前を呼ぶ。
だけれども、ミーニャからは返事がなく浅い呼吸音だけが聞こえてきた。
酸素を求めるようにハクハクと動く小さな口。
ちろりと覗く白い八重歯。
なぜだろう、緊急事態なのに、ミーニャに触れたくて仕方なくなる。
私は「いけない。いけない。」と首を横に振って邪な考えを捨て去る。
ミーニャが死んじゃうかもしれないのに、私はなんてことを考えているの……。
「ミーニャ。ミーニャ。どうしたら……。」
なぜミーニャは急に倒れてしまったのだろうか。
もしかして、この果物がいけなかったのだろうか。
でも、私が食べた時はなんともなかったのに……。
そういえば、ミーニャがこの果物は猛毒なイエローギフト?とかいう果実に似ているっていったっけ。
じゃあ、もしかして私はミーニャに猛毒を食べさせてしまったってことっ!?
私はそう思って震えた。
「どうしよう。どうしたら……。えっと、解毒薬……。解毒薬でなんとかなるのかしら。それとも、ニルヴァーナさんを呼ぶべき?」
混乱する頭で私は精一杯考える。
食べたばっかりなのだから果物を吐き出させて解毒薬を飲ませれば大丈夫かもしれない。
えっと、吐かせるには確かみぞおちを思いっきり殴りつければよかったはず……。
「ミーニャ。今助けるからねっ!ごめんねっ!!」
私はそう言ってミーニャのみぞおちを思いっきり殴りつけた。
「……ぐふっ。」
ミーニャの口から黄色い果実の欠片が転がり落ちてきた。
あとは、解毒薬があれば……。
「ちょっと待ってって、ニルヴァーナさんを呼んでくるからっ!!」
ミーニャを引きずってニルヴァーナさんのところに行けば早いかもしれない。だけど、私はミーニャより身体が小さい。ミーニャをニルヴァーナさんのところに運んでいくのは私には難しい。
だから、私は走り出す。ニルヴァーナさんの薬屋に向かって。
☆☆☆☆☆
「うっ……うぅ……。」
まだ痺れているけれど、意識が少しずつ浮上してくる。
自分が床に倒れていることに気が付いた。そして指先に硬い小瓶の感触がすることにも気づく。
私は解毒薬を飲もうとして、飲む前に意識が飛んでしまったのだろう。
どれくらい意識を失っていたのだろうか。
サーシャはどうしたんだろうか。
まだ痺れがぬけない身体を起こして解毒薬を一口、口に含んだ。
「うっ……。」
なんとも言えない生臭い味が口の中に広がる。
それでも一口しか口にいれていないのでまだ耐えられる。
解毒薬を飲んでしばらく安静にしていると徐々に身体が動くようになってきた。
自由になった身体で辺りを見回す。
「……サーシャ?」
サーシャの姿は見える範囲にはなかった。
「……サーシャ……どこにいったの?」
毒に倒れた私を置いてサーシャがどこかに行くはずがない。
きっと心配して私の側でわたふたとしていると思ったんだけど……。
辺りを見回すと小さくなった黄色い果実の欠片があった。
「……これは?」
サーシャが吐き出させてくれたのだろうか。
そう言えば、先ほどからみぞおちが重い気がする。てっきりイエローギフトの所為かと思ってたけど、もしかするとサーシャが?
でも、肝心のサーシャがいない。
どこにいったのだろうか。
私はふらつく身体で立ち上がる。
「……それにしても、イエローギフトって随分毒のまわりが早いわね。」
もしかして、サーシャ私に猛毒のイエローギフトを食べさせたことがショックで自殺したりしないよねっ!
思わずそんな不安が私の頭の中を駆け巡る。
「サーシャっ!!」
一度思ってしまったことは簡単には消せない。
私は不安で頭がいっぱいになってくる。
いても経ってもいられなくて、ガマ爺さんの家から飛び出した。
「サーシャ!!どこっ!!どこにいるのっ!?」
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