第6話
「……うぅぅ。まだ臭いです。気持ち悪いです。めまいがしますぅ。」
「うぅ。強烈じゃったのぉ。まるでサーシャちゃんのお菓子を食べた時のようだった。」
ニルヴァーナさんの消臭剤を使うことでなんとかサーシャさんとガマ爺さんが起き上がって会話できるまで回復した。
みんながガマ爺と呼んでいるので私もガマ爺と呼ぶことにした。だって、ガマチョルフさんって名前長いし、噛みそうなんだもん。
「し、失礼なっ!私のお菓子はこんなに殺人的な臭いではないですっ!」
「いやいや。サーシャちゃんのお菓子もたいがいじゃよ。だから、こうしてニルヴァーナさんの薬を買いにくることになったんだからね。」
「うっ……。」
「……殺人的な臭い。」
サーシャちゃんとガマ爺さんの言い合いだったはずなのに、なぜだか私まで間接的に巻き込まれてしまった。
殺人的な臭いだなんてひどい。
サーシャさんもガマ爺さんも死んでないんだから、殺人的な臭いではないはずだ。ちょっと耐え難いほど臭いだけだ。
「あの……サーシャさんのお菓子って?」
「また誰かサーシャちゃんのお菓子の犠牲になったのかい?」
私とニルヴァーナさんの声が重なる。
っていうか、ニルヴァーナさん意外とひどいな。サーシャさんに会ったばかりだというのに。
「いやいや。なんとか、サーシャちゃんにサーシャちゃんが作った見た目が問題なく作れた完成品のお菓子を食べてもらったんだよ。そしたらサーシャちゃんがお菓子を作るのを諦めてくれるかなっと思ってね。」
「そうかい。じゃあ、サーシャちゃん用の薬が必要ってことかい?」
「まあ、似たようなものだの。サーシャちゃんがお菓子作りを諦めてくれるかと思ったら逆でな。完成品を食べて人が具合が悪くならないようなお菓子を作ると意気込んでしまってのぉ。サーシャちゃんが具合が悪くなった時にすぐに飲めるように薬を用意しておこうと思ってな。だが、いつまで続くかわからないから、サーシャちゃんにニルヴァーナさんを紹介したかったんだよ。」
なんだかサーシャさんって私と似てるかもしれないと、ガマ爺とニルヴァーナさんの会話を聞いて不覚にも思ってしまった。
サーシャさんはお菓子作りが好きだけど、食べた相手の具合を悪くしてしまう。対して私は薬師になりたいけど、効果の高い薬は作れるけど臭いや味がきつすぎて逆に体調を悪くさせてしまう。というそれぞれの欠点がなんだか似ているような気がして、サーシャさんのことを身近に感じた。
「ぐっ……。でも、ミーニャの美容液も酷い出来だと思うわっ!」
「わわっ!サーシャさん酷いっ!でも、効果は高いんですよっ!ちゃんとお肌つるつるのすべすべになってるでしょ?ほら!触ってみて!!」
「まあ。本当だわ。確かにお肌つるつるですべすべだわ。」
サーシャさんは素直に自分の顔を触った。そして、その感触にため息をついた。
どうやら満足してくれたようだ。
「私の作った美容液は高品質で効果も高いんです!」
私は胸を張ってサーシャさんに告げる。
「でもなぁ。あの臭いは公害だと思うんじゃよ。」
「あの臭いはいただけないねぇ。効果は高くても売り物になりゃしないよ。」
「ガマ爺さんもニルヴァーナさんも酷い。」
「……確かに。効果は高いみたいだけど、買おうとは思わないわねぇ。タダでもう一度試したいかって言われてもあの臭いはもう嗅ぎたくはないわ。」
「ああっ!サーシャさんまでっ!!」
ニルヴァーナさんにもガマ爺さんにもサーシャさんにも美容液は不評だった。効果は認めてくれているみたいだけど、いかせん臭いが酷すぎるらしい。
なんとか臭いを改善できればそれなりに売れるようになると思うのだけど、どう改善したらいいかわからない。
「ふむ。サーシャちゃんは味や見た目は問題ないんだったよね?」
「ええ。味は成功してもしなくてもとっても美味しいと思うわ。見た目は失敗したときは最悪ね。成功すればどんなお菓子よりも美しい出来になるわ。」
「……味も臭いも見た目も悪いミーニャの師匠としてはサーシャちゃんはちょうどいいんじゃないかい?年頃も一緒だし、二人で足りないところを勉強したらどうだろう?」
突然いいことを思いついたとばかりにニルヴァーナさんが提案してきた。
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