第2話 そして未来へ
しかしここで起きたことを見て知っても、嬉しいのは己だけであり、誰にも伝えられないのは残念であるが仕方がない。暫くは思案に
魂がどうとかいう話を思い出した。まぁ、そちらは専門外なのでどうでも良いか、とばっさり切り捨てた。もし生命が誕生するとしても、かなりの年月が必要であろう。それまで話相手も無しで独り、意識を保ち続けられるのだろうか?
結局、いろいろ考えたり観察しているうちに、あっという間に時は流れて行った。考えることや興味を惹かれるものが有るうちはともかく、無くなってしまったらどうなるか。その考えを頭から、頭? まいいか、頭から払った。己の存在すら謎だらけであるが、生命と言って良いのか未だ判断出来ずにいる。
最近苔のようなものを目にするようになった、いつの間に発生したのだろうか。視認でしか確認出来ないのが残念であるが、これは恐らく植物である。やっと入口に辿りつけたようだ、ここまでどのくらいの刻が経ったのであろうか。
ここからまた、かなり長い年月を必要とするだろう。その間正気を保てるか、自信が無くなってきた。会話する相手が居ない事が、思ったより堪えていると感じる。
更に月日は経ち、思考が怪しくなってきた。未だに認識出来るのは、植物のみである。いったいいつになったら動物が出てくるのか、さっぱり分からない。そもそもこの地で、本当に動物は出てくるのか? 雷も関連しているとの説もあったが、ここでは雷は観測されていない。
そういえば今更ではあるが、ここから移動出来ないのも都合がよろしくない。あと何年耐えねばならぬのか、いつまで存在できるのかが想像出来ない。これも焦りに繋がっているのであろうことは明白である。
意識を保つのが厳しくなって来た、思考するにももう考える事も無くなって、ただ観ているだけである。そろそろ限界が近い、恐らく思考停止がそのまま死と同義なのであろう。
ああ、またか。ここでも独り、死を待つのみ。水溜まりのようなものは出来ているが、動物のような気配は無い。認識できていないだけの可能性も無きにしもあらず、だが可能性は低いだろう。
もう限界だ、最後まで動物は見られなかったし、生命の誕生も見られなかった。意識が薄れて行く中、何かが動いたのが見えた気がしたが、それが最後であった。
その者にはもう分からない事であるが、魚類らしきものが地上に這い出した瞬間であった。
ー了ー
彼方にて 葵 碧 - Aoi Midori - @Bleuvert
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
独り言ノート/葵 碧 - Aoi Midori -
★142 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1,322話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます