49 ギルドバッジ!
「ギルドバッジ?」
そういえば、ルースさんやパメーラにはギルドバッジの件を話すのを忘れていたのを思い出した。
「せっかくだから、お揃いのギルドバッジを作ろうかなって思ってて。みんなで付けたらチーム感が出ると思うんです」
「お、それは確かに良いね」
ルースさんが賛成してくれる。
「ムーンちゃんの作ったバッジ……!」
……バカは放っとこう。
「という訳で、何かアイデアはありますか?」
「うーん……ムーンちゃん、どんな形までなら作れる?」
「どんなのでも絶対作ってみせます」
「心強いな……」
クラフトなら絶対の自信がある。むしろ複雑な造形の方が力を誇れて良いかもしれないとすら思う。
「つっても、俺はそんな難しい形思いつかねえぞ」
「職業的にそれで良いんですか?」
「お前は俺の職業に夢を見すぎてないか?」
こう、神主なら色々知ってそうなもんだけど。どんどんイメージが崩れていく。次に姉さんからの提案……なのだが。
「ねえムーン、ギルド名から取るのは?」
「ああ、確かに良いかも」
「で、ギルド名は?」
「知らなかったの!?」
なんでギルド名を知らないまま入ったのか。こういう所、本当に適当なのによく研究者をやってられるなと驚く。すかさずルースさんから補足が入る。いつも申し訳ない。
「フォーゲルだよ。意味は……なんだったっけ?」
「確か、かっこいいドイツ語から適当に取ったんだっけ……」
ギルドハウスを購入し、ギルド設立手続きを行った時の事を思い出す。
◇
「そういえば、ギルドの名前を決めてなかったね。どうする?」
「かっこいい名前が良いですね。出来れば男っぽい奴」
ただでさえ女の子になっているんだからギルドくらい男心をくすぐられるような名前の所に所属していたい。
「へぇー。そういうのに憧れてるんだ、ムーンちゃん可愛いねー」
「うるさいです」
横から弄ってくるパメーラを適当にスルーして名前を考える。しかしかっこいい名前か、改めて言われるとあまり思いつかない。
ルースさんには何か案があるんだろうか。
「ルースさんは何か思いついたりしました?」
「一応は考えたよ。ギルド『頑張り亭』」
「却下です」
「却下だねー」
「却下ですね」
「却下だな」
「だよね……」
速攻で全員から却下された。これは酷い。ルースさんには申し訳ないけど、致命的にネーミングセンスが無いと言わざるを得ない。
みんなで悩んでいると、和希から提案があった。
「ドイツ語から取ってみるとかどうだ? 結構かっこよくなりやすいし。適当に調べてるけど……お、これとかどうだ? フォーゲルって単語」
「ギルド『フォーゲル』か……良いなあ」
気取りすぎずに丁度良くかっこいい。個人的にかなり好みだ。
「私は良いと思います。みんなは?」
「フォーゲル……けっこう響きは良いかな?」
「頑張り亭よりは全然良いかなー?」
「うん、良いと思うな。僕はネーミングセンス無いし……」
露骨にルースさんが落ち込む。なんとか励ます。
「誰にでも得意不得意はあります。ルースさんのネーミングセンスが致命的に終わってても、みんな失望したりしないから大丈夫ですよ」
「ああ、うん……ありがとう……」
「ムーン、それフォローになってないぞ……」
更に落ち込ませてしまった。言い方をもう少し考えた方が良かったかもしれない。
「それじゃあ、反対意見も無いしギルド『フォーゲル』で行こうか」
こうして何とも締まらない形でギルド名が決まった。
◇
「あ、思い出した。『頑張り亭』が却下された勢いで決めたから意味とか聞いてなかったですね……」
「ムーンちゃん、出来ればその名前は出さないで欲しいかな」
苦笑するルースさんの横でパメーラが笑いを堪えている。……ごめんなさい。
「ムーン、頑張り亭って?」
「いや、何でもない。忘れて。それで! フォーゲルってどんな意味か調べますね!」
無理矢理話題を逸らす。ネット調べ始めるが、その前に姉さんから割り込みが入った。
「フォーゲルは鳥って意味だね。良い名前なんじゃないかな?」
「流石、頭は良いなあ……頭は」
「頭はってどういう意味よ。頭はって」
そういえばドイツ語が出来るのを忘れていた。こういう時、頭は良いんだよなと実感する。
「それにしても、鳥ですか。そのまま作ったらちょっと直球すぎますかね?」
「じゃあ、1番早い鳥とかはどうかなー? かっこいいと思うし」
「パメーラにしてはまともなアイデア出しますね」
「ムーンちゃんに褒められた! やった!」
それで良いのかというツッコミは置いておくとして、1番早い鳥というのは良いアイデアだと思う。かっこいい。
「1番早い鳥っつーと、ハヤブサか。良いんじゃねえか?」
「ああ。ベタっちゃベタだけど、変に捻りすぎるよりは良いと思う」
「私もハヤブサ、良いと思うな」
ルースさんにも聞いてみる。
「ルースさんはどうですか?」
「……一応思いついたけど、どう考えても却下される内容だからやめておくよ」
一体何を思いついたんだ。非常に気になるが、頑張り亭の事を思い出して聞くのはやめておいた。
「それじゃ、今度材料を用意してハヤブサのバッジを全員分作ってきますね!」
こうしてギルドバッジの題材が決まった。その後、どんな角度からのシルエットにしようかなと脳内で考えつつ、ご機嫌で材料を買いに出かけるのだった。
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