48 姉さんの暴走!
翌日、最近定期的に通っている焼肉屋に俺、姉さん、サムエルの3人が集合した。
「さて……昨日は始めましてと言ったが、正確には2度目ましてだったな」
「私も驚いた。まさかこんな所で再会して、しかも志月と知り合いだったなんてね」
以前会ったのは、言わずもがな神社に行った時の事である。あの時、姉さんは神主としてのサムエル……神部と一度対面している。それにしても……
「姉さん、こんなに見た目違うのによく一発で同じ人って見抜いたよな」
「これでも研究者としては中々観察眼が優秀って言われてるからね。このくらいお茶の子さいさいよ」
そう言ってウインクした。優秀ならもう少しポンコツな部分をなんとかして欲しい。
「それで。一応サムエルには俺の事情は全部説明してある。その上で、今の俺の状態をなんとかする為にわざわざギルドに入ってもらった」
「おいおい、それは違うぞ。元々ギルドに入ろうとは思ってたんだ、ついでで都合が良かっただけだよ」
横からサムエルの訂正が飛んできた。素直に気持ちを受け取る。
「そうだったな。まあ、そんな感じで協力してもらってる訳だ。そこに何故か飛び入りでギルドに入って来たのが姉さん」
釘を差すように睨む。正直今も若干納得していない。
「良いじゃねえか。みんなも納得してるし、何が嫌なんだよ?」
「それはその……」
何が嫌か。確かに他のメンバーが納得しているから大丈夫というサムエルの意見は正しい。けど……
「……なんというか、恥ずかしいじゃん。姉さんと一緒とか」
だって考えてもみて欲しい。普通姉と一緒のギルドに入るとか色々と気まずいし恥ずかしいだろう。
「へぇー? 意外と初心な所あるんだな」
「サムエル、兄弟とか居る?」
「いや、一人っ子だが」
「だから気持ちが分からないんだよ……」
特に姉さんの場合、割とスキンシップが激しい。今の状況だからか自重してるが、またいつ始まるか分からない。別に嫌いな訳じゃないが、みんなの前では勘弁して欲しい。
「あっ、今私に絡まれるのが恥ずかしいとか考えてたでしょ」
「人の心を読むな。そして分かってるなら自重してくれ」
「やだ!」
そう言って思いっきり抱きついてきた。ほらちょっと油断するとこれだよ!
「つーかまーえた!」
「ちょっ……! 離して……」
「ふふふ、可愛いね」
思いっきり抱きつかれて離せない。前は力で引き剥がせたのに。
「……なんというか、分かったわ。大変だな、お前も」
サムエルが哀れな物を見る目でこちらを見る。
「哀れむなら見てないで助けてくれ」
「いや、無理だろ。あと正直見ててちょっと面白いし」
「裏切り者!」
四面楚歌とはこの事か。いやこの場は3人しか居ないけど。結局、その後はされるがままとなってしまった。
◇
翌日、ギルドハウスにて。
「ねえムーン、機嫌直してよ。私が悪かったから」
「……やだ」
昨日の件で俺は姉さんに対して大変ご立腹だった。あの後サムエルはちょいちょい弄ってくるし。
「どうしたら良いかなあ、ヤマトくん」
「何したの、織姫姉」
「ちょっと抱きついたりしただけだよ?」
「それは織姫姉が悪いな」
和希からもすげない返事をされている。暴走癖を知っているので、当然と言えば当然だ。逆に、それを知らないカリンが若干あわあわしている。
「ねえヤマト、あの2人、別に仲が悪い訳じゃないんだよね……?」
「ああ。ちょっと織姫姉が暴走するとああなるだけだ。いつもの事だし、しばらくしたら元に戻るから安心して良いぞ。ほら、ムーンもみんなが心配してるからその辺にしとけ」
「むう……」
みんなを心配させるのは本望じゃない。仕方ない、ここらで終わりにしておこう。
「……後でコンビニでシュークリーム買ってきて。それで手を打つ」
「分かった! ありがとうムーン!」
落とし所としてはこんな所だろう。こうして、タダでシュークリームを手に入れた。
「そういえば、あの件はどうしたの?」
「あの件って?」
「ギルドバッジの事。だいぶ経ったよね?」
「あー、忙しくて忘れてました」
色んな出来事が積み重なり、すっかりタイミングを逃していた。メンバーも増えた今なら丁度良いかもしれない。
「よし、バッジ作りますか!」
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