50 新章突入!
「これがギルドバッジです。どうぞ!」
全員にハヤブサのシルエットを象ったバッジを渡す。小さくても細かい所まで作り込んだ自信作だ。ちなみに、効果は無いファッションアクセサリー枠だ。
「おお、ちゃんと出来てる。ありがとうムーンちゃん」
「流石。早速付けさせてもらうね」
「お前、本当に器用だよなあ」
「ああ。天使のクラフターの面目躍如だな」
皆が思い思いの感想を口にしていく。何か聞き逃せない単語があった件については後で詳細を聞いておこう。
「はー……ムーンちゃんのバッジ……」
「流石ムーン! 立派なバッジだね。姉として誇らしいよ!」
何をしても喜ぶ
それにしても、この才能は惜しいと思う。とにかく楽しいけど、体由来である以上元に戻ったら技術は消えてしまうだろう。なんて勿体ない。背に腹は代えられないから仕方ないが。
まあ、バッジはここら辺にしておく。何故なら今日、本題はバッジでは無いのだ。少なくとも自分にとっては。
「さて……告知まで後数分ですね!」
「今日、ムーンちゃんずっとそわそわしてるもんね」
「そりゃ、待ちに待った新章の告知ですから!」
そう、今日はPPO新章情報の解禁日なのだ。1章最後に出現した明らかに異質なゲートは未だに閉ざされたままだ。その先が遂に開くと言われれば楽しみになるのは仕方無いだろう。
「ま、気になるのは分かる。俺もテンション上がってるし」
「だよな、ヤマト!」
流石和希、良く分かってる。大体思考回路同じだけど。
「リロードリロードリロードリロード……」
「……ムーンちゃん、それはあんまり良くないと思うなー」
やんわりとパメーラから指摘が入る。でも、分かってても気になってやっちゃうのだ。
「……来た! 新情報! まとめて読み上げますね」
リロードの結果速攻で表示された新情報をまとめる。
まず、新都市の開放。今の拠点地、グラン城下街とは比較にならない程大きいらしい。そして、現在とは全く違う文明圏。情報はそれくらいで都市名などは不明。
また、この都市はPPOの中心となる場所になるとか。
「一律して街じゃなくて都市って呼ばれてるのが気になるね」
「ああ。今とは違う文明圏って話だし、ゲートの雰囲気を考えれば少なくとも今居る時代より未来になるのはほぼ確定だろうな」
「ここでも十分広いのに、更に広いってどうなっちゃうんだろう……」
「PPOの中心になるらしいからね、規模が大きくなるのも納得かなー」
更に細かい部分も読み上げる。
「期間限定のイベントとかもここの街で開催されるらしいですよ」
「あー、意外とそういうの無かったな。参加してみるのも楽しそうだな」
「後は、新しい武器やアイテムも大量に登場するらしいです。これはクラフトのしがいがありそう……」
今までとは全く違う傾向のアイテムになるだろうし、更にクラフトの選択肢が広がりそうでとても楽しみだ。
「それから……ハウジング機能がプレイヤー個人にも開放されるみたいですね。同時にハウス拠点へのワープ機能も実装されるらしいです。きっと向こうからのアクセス用でしょう」
「向こうの世界からのアクセスがしやすいのは助かるね」
「ストーリーのあらすじも読み上げましょうか」
新章のあらすじを読み上げる。
『扉の先へ進んだ冒険者達を待ち受けていたのは、現在の世界とは別の世界だった。異文化の人間達との交流の中、新たな世界への冒険が始まる。Parallel Portal Online 2nd chapter "Dimension connect"突入。新たな世界への旅立ち、始まる』
「……だそうです」
「Dimension connect……次元接続? やっぱり、新しい世界へ繋がるのがテーマなのかな?」
「まだ情報が少なくて分からない事が多いな……ムーンはどう思う?」
「うーん。まあ、PPO自体色んな世界があるのが特徴として売り出してるし、最初だからそういう章の名前付けてるとか?」
「でも、ちょっと違和感無くはないね。これから色んな世界に行くんだろうし」
「ま、やってみりゃ分かるだろ。ちなみに実装はいつだ?」
そう言えば情報を見るのに必死でリリース日を確認していなかった。
「リリース日は……明日!?」
新情報発表から早すぎる。確かに新章告知自体はちょっと前からされていたが……
「はっや。でもこれなら情報絞るのも分かるな、口コミで広がるのも期待できるし」
「とにかく、明日が楽しみだね。みんな、予定は空いてる?」
偶然だが、全員明日の予定は開いていた。どうやらギルド全員で新章へ挑戦出来るようだ。
「それじゃ、明日は全員で行こうか。開放の時間に集合しよう」
◇
翌日。全員集合して、例のゲートの前に向かった。
「さて……またここまで来た訳だけど」
ゲート前で待機していると、1章クリア時に手に入れたアイテムの《異世界への宝石・蒼》が光り始めた。
「わ、宝石がゲートに!」
パメーラの発言と同時に、俺の宝石もゲートへ向かって飛んでいき、扉が光輝いた。
「これは……入って良いって事なんですかね?」
「そうみたいだな。みんな、行こうぜ」
和希の言葉に頷いて、全員ゲートに入る。視界が真っ白に染まり、数刻の後再び世界が映し出された。それを見て、ミカルフの言葉を思い出した。
「なるほど、確かにこれは『異世界は、到底自然とは言えない』ね……」
そこに映っていたのは――
高層ビルがいくつも立ち並び、空にはリニア新幹線のような物が走っていて、ホログラムのポスターが浮かんでいる、超巨大な未来都市だった。
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