46 神主、参加!
PPOにインして、グラン城下街の焼肉屋へ向かう。最近出来た店で、ゲーム内で美味い焼肉が食べられると評判なので食べに来た。ただ、目的はそれだけじゃない。
「すまん、待たせたか?」
「ちょっとだけな」
「そこは女の子相手なんだから待ってたとしても今来た所って言っとけよ」
「お前は男だろ。ほら、さっさと入るぞ」
待たせていたのはサムエルである。向こうから調査してるから待ってくれという連絡があった事もあるが、姉さんの方に掛かりっきりだったからギルドの件などを全く伝えられて居なかったのだ。
個室に入り、適当に注文してからさっさと本題に入る。
「で、何か分かったか?」
「すまん、収穫無しだ。過去の文献とかも漁ったりしてみたんだがさっぱりだ」
「ま、事が事だから仕方ないさ」
元からそう簡単に戻る方法が見つかるとも思っていない。それに、何か見つかったらすぐに連絡が来るだろうから、連絡が無いという事は何も情報が見つからなかったのは想像出来ていた。
「こっちは収穫があったぞ」
「本当か?」
「ああ。DNA鑑定で親子鑑定したんだよ」
「マジか。で、結果は?」
「間違いなく遺伝子上は2人の子供だってさ」
「そうか……」
サムエルが考え込む。まあ、当然と言えば当然の反応だ。
「お前の両親さんとは全く特徴が違うから、そんな事は普通あり得ないよな。それとも、髪染めてたりカラコン入れてたりするのか?」
「そんな事する訳無いだろ」
「だよなあ」
黒髪黒目という、日本人の見た目の父さんと母さん。その2人とブロンドの髪と青目の姿の自分が遺伝子上は子供というのは普通に考えてあり得ない。この矛盾をどう考えるかが謎だ。
「理屈で説明出来ないって事は、やっぱり霊的な何かが絡んでるんだろうな。体と一体になってるって考えも概ね合ってるって所か」
「そこ、詳しく説明して欲しいんだけど……」
あの日は時間がそこまで無かったので、詳しい説明を求める。
「そうだな、ちゃんと説明しよう。まず、お前が最初にPPOに入った時の事を覚えてるか?」
「ああ。このキャラが出てきた時の事だろ?」
「そうだ。俺はこの時に何らかの原因でその女の子の霊が紛れ込んでしまった結果、キャラメイクに姿が出てきたんじゃないかと思ってる」
「そんな事……あり得るのか?」
「分からん。が、とりあえずそういう前提で進める。ここくらいしかタイミングが無いんでな。それで、お前さんがOKした結果、そのキャラの中に入り込んで一体となっちまった訳だ」
なるほど。つまりこのキャラの中に入ってしまった事が原因なのか……待てよ?
「えっと、つまりキャラメイク画面で止めて、俺の姿に反映される前に一度ログアウトしていればこうはならなかった?」
「俺はそう考えてる」
「……マジか」
なんて愚かな真似をしてしまったんだ、俺は。あの時点でもバグと思って一度離脱する事は出来たはずなのに。後悔先に立たずとはこの事か……
「……まあ、なったもんは仕方ない。で、そこで一体になったせいで変に引っ剥がせ無くなった訳だ。ある意味、今のお前さんは自分の体が存在しない訳だからな」
「それってさ、どれくらい定着したかとかって分かる?」
「分からん。最初がどれくらいだったかも分からないし、PPO上では霊気は感じ取れないんだよ。こればっかは実際に会ってみるしか無いな」
「そうか……」
サムエルのおっさんが神主をしている神社は結構遠いので、そう簡単には行けない。もっと近ければ定期的に会いに行く事も出来るんだけど……まあ、会えない物は仕方ない。
「じゃあ、そっちはまだ保留だなあ」
「すまんな、力になれなくて」
「十分頑張ってるのは伝わってるからあんま気にするなよ」
何も分からない中、数少ない手掛かりをくれた上にここまで尽くしてくれて感謝しかない。好意に甘えてもう少しお世話になろう。
「ああ、そうだ。忘れる所だった」
「ん? 何をだ」
「ギルド参加の件。OK出たぞ」
「お、そうか。それじゃ、今度改めて挨拶に行くかな」
これで正式にサムエルがギルドのメンバーになる見込みが立った。俺の問題を解決するという意味でも、ギルドのパーティバランスという意味でもありがたい。
◇
翌日。ギルドハウスに集まり、サムエルの正式加入手続きをする。
「という訳で、改めて自己紹介。サムエルだ。このメンバーの中では年齢高めだが、気にせずにやってくれ」
「僕も自分以外の成人メンバーが増えて心強いよ。よろしく」
そういえばルースさんも成人組だった。なのになんだろう、この2人の雰囲気の差は。ルースさんの方がめちゃくちゃ爽やか好青年に見える。
「サムエルさん、よろしくねー」
「よろしくお願いします!」
「これからよろしく」
そういえばここのメンバーで実際に会ってるのは俺だけか。今日は居ないけど、姉さんは現実の方でも会ってるしPPOで会う機会もあるだろうから後で説明しとくか。
「それじゃ、サムエル。これからは同じギルドのメンバーとしてよろしく」
「ああ。よろしく」
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