44 激レア素材!
「いやー、熊って怖いね」
「強さとかは全然違うけど、厄介な相手という点では現実と変わらないな」
「PPO運営ってそういう所あるよな。バーチャルだからこそ現実の脅威を間近で体験させるというか……」
各々感想を口にする。一呼吸置いて出てきた討伐ログに、入手アイテムなどが出てくる。
「ふーん、報酬は悪くないな。熊皮とか何か作る時に使えそう。みんなは?」
「俺は特にレアドロとかは無し。素材自体は珍しいっぽいから、必要無かったらそこそこの値段で売れそう」
「私も特には無いね。織姫さんはどうかな?」
カリンの言葉を聞いて姉さんの方を見ると、何故かは分からないが何やら震えていた。
「ねえ、これ、すっごいレアアイテムだよね……?」
見せてきたウインドウを覗き込むと、そこには《ユニークな結晶》と表示されていた。全員が目を見合わせる。
「……姉さん、なんつー豪運だよ」
この《ユニークな結晶》というアイテム、飾り気の無い名前に反してとても貴重なアイテムである。具体的に言うと確率が0.5%くらい、しかも適正レベルより下のレベルの敵になるほどそこからドロップ率が下がる。
どのユニークモンスターからもドロップするのが救いと言えなくも無いが、そもそもユニークは倒すのが大変なので入手が難しい事には変わりない。これの為に延々ユニークを倒しているプレイヤーも居るほどである。それをたった一発で引き当てるとは……
「なあ、これクラフト素材に使えるんだろ? どれくらいの強化になるんだ?」
少し震えながら聞いてくる和希に答える。
「大幅な強化が期待出来る……とは聞いた。ただ、自分ではクラフトした事が無いから実際どうなるかは分からない」
「ムーンがクラフトした事無いくらい貴重なんだね……」
3人で戦慄している中、姉さんは使い道を決めたようだ。
「よし、これを使ってムーンにクラフトしてもらおうかな!」
◇
その後、ギルドに帰って来た俺達は作業小屋へ集まっていた。奥のタンスから取っておいた高性能の片手剣を姉さんに渡す。
「はい、これ。姉さんにあげる」
「良いの? こんな良い武器タダで貰っちゃって」
「タダじゃない。激レア素材見せてくれたのと使わせてくれる感謝代みたいなもん」
実際、俺はめちゃくちゃ興奮している。こんな素材に触れるのは初めてだ。
「なるほど、そういう事なら遠慮なく」
「それに、それだけの素材を普通の武器に使うのは勿体無いしな」
良い素材は良い武器に使うべきだ。すぐ型落ちになるのもなんか癪だし。
「それじゃ、素材出して」
「はーい」
出てきた《ユニークな結晶》は、名前の通り前衛芸術のような何とも言えない形をしていた。正直ぐにょんぐにょんに曲がった埴輪みたいな造形なので、透き通るような結晶じゃなければ全くレア素材に見えない。どんなセンスだ。
「よし、集中するから少し静かにしててくれ」
自分の世界に入り、目の前の武器と素材を見つめる。表示される工程を出来るだけ正確に再現するよう、慎重に作業を進めていく。
そうして普段の数倍の時間を掛けて全ての作業を終え、クラフト完了のウインドウが表示される。素材となった結晶のような透き通る透明さを得た剣を前に、ドキドキしながら性能を確認する。
『クラフト成功!《オリハルコンソード》は《クリスタルソード+40》になりました』
「……よっしゃあ! 会心の出来だ!」
気合を入れた甲斐があり、+40という過去最高のバフ数値が出た。興奮が抑えられない。
「すっげえ……+40とか見た事無いぞ」
「初心者だから分からないんだけど、これはそんなに凄いの?」
「少なくとも、今現存する武器の中では最高級だと思います」
3人がざわついている。この出来ならざわついて貰わないと困るが。
「ムーン凄い! 流石私の弟!」
「そうだそうだ。もっと褒めてくれて良いよ」
別に姉さんの弟だからという訳じゃないと思うが、この際褒めてくれたらそれで良い。
こうしてクラフトへ対する自信がまた1つ付いたのであった。
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