41 姉バレ!

 姉さんがついうっかり正体を口走ったせいで、和希を除いた3人がフリーズ状態になっている。一応姉の事を聞かされていた星奈が多少マシなくらい。


「あ、えーっと、これはほら、違うの! 可愛くてついい妹にしたくなっちゃったというか」

「その言い訳は無理があるって」


 なんで明らかにヤバい人と思われるような苦しい嘘で取り繕おうとするのか。墓穴掘ってるぞそれ。


「もう、今更取り繕っても無駄だよ。という訳で、改めて。織姫は私の姉です。皆さんよろしくお願いします」


「なるほど、ムーンちゃんのお姉さんだったんですね。始めまして、織姫さん。ギルドマスターのルースです。よろしくお願いします」


 おお、流石。紳士だ。いや、これが普通なんだけど。


「えっと、パメーラです。よろしくお願いします。」


 一方でパメーラの反応が怪しい。普段なら暴走してもおかしくなさそうなんだけど……


「どうしたんですか?」

「いや、失礼なんだけど姉妹なのに全然似てないなあって……」


 痛い所を突かれた。というか真っ先に気づくのはそこか? 適当に誤魔化そう。


「「まあ性格とかも似てないからね」」


 ……ハモった。なんで同時に同じ言い訳を思い付くんだ。


「うん、私の勘違いだったみたい。しっかり似てるね」

「ああいや……うん……性格は似てないと思うんですけどね……」


 実際、元の頃は顔は似ていると言われていた。が、性格は絶対似てない。俺はこんなに変人じゃない。姉さんの事は嫌いじゃないけど、一家のまともポジションの自分とそこは一緒にしないで欲しい。


「えっと、始めまして。ムーンから話には聞いてました。カリンです」

「ムーンから話は聞いてるよ。色々ありがとうね」


 もちろん色々とは女になってから手伝ってもらった件である。


「それにしても、センスが良いね。着てる服、可愛いかったよ?」

「ありがとうございます。結構気合い入れたので!」


 一見星奈の服を褒めているように聞こえるが、もちろん星奈の服が可愛い訳ではなく星奈が俺に選んだ服の話である。

 2人がこちらを見てニヤニヤしてくるのが腹立つ。微妙に伝わる人にしか伝わらない言い方しやがって。


「織姫姉、久しぶり」

「ヤマトくんも元気そうで良かった! いつもありがとうね」


 この2人は小さい頃からの家族ぐるみの付き合いをしていた事もあって、和希も志織姉と呼んで慕っている。


「さあ、そろそろ一通り紹介も済んだし、工房で用事済ませてくるよ」

「あ、せっかくだから見せてくれない?」

「良いよ。結構な自信作なんだよ」


 そのまま姉さんを庭へ案内する。


「わあ! これムーンが作ったの?」

「建てるのはヤマトにも手伝ってもらったけどね。設計とかは1人でやったよ」

「流石我が妹!」


 頭を掴んでくしゃくしゃにされる。気分は悪くない。


「今度私も頼んでみようかなー」

「作業代は取るよ?」

「えぇ!? 姉割引とか無し!?」

「タダで仕事はしない主義なので」


 無料で作業する場合もその前に手伝ってもらったとかである。今はむしろ貸しを作ってる段階である。


「じゃあ、ムーンが喜ぶとっておきがあるよ」

「え、俺が喜ぶとっておき?」


 ……なんだそれは。

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